66. 偽りのメラビアンの法則
「メラビアンの法則」とは、ビジネスマナー本でもよく紹介されている、コミュニケーションにまつわる有名な法則。
人同士が会話する時、以下のような割合で相手の人柄を判断します。
・視覚情報(表情とかの見た目)が55%
・聴覚情報(声色)が38%
・言語情報(言葉の意味)が7%
見た目>声色>言葉の意味
この中で聴覚情報と視覚情報はいわゆる「非言語情報」と呼ばれるもの――
つまり、言葉そのものの意味より、見た目とか話のトーンとか――言葉ではない情報が相手の印象に強く影響を与えるのです。
だから相手に好印象を持ってもらうためには、笑顔を作って、身だしなみとかをちゃんと整えましょう。というのがビジネスマナーで取り上げられる、「メラビアンの法則」のあらましでしょうか。
ただね、実はこれ――ウソです。
正確に表現すると、情報や結論が不正確。
「メラビアンの法則」とは本来、矛盾したメッセージが与えられたときに、人間は何を参考にして判断するかを調べた法則なのです。
ここでいう、矛盾したメッセージとは?
・「残念だったね」と言いつつ、笑顔
・「怒ってないよ」と言いつつ、声を荒げている
というように、言語、聴覚、視覚の感情情報が食い違っている場合を指します。(※1)
目の前に「残念だったね」と言いつつ笑顔を浮かべている男がいる。
こいつ、悲しんでるの? 喜んでるの? と疑問がわいた場合、
55%の人は視覚情報を優先して信じます。
この場合は、表情として「笑顔を浮かべているから本音では喜んでいる」のだろうと予測したわけです。
続いて、「残念だったね」という声色で予測したのが全体の38%の人。
最後に言葉そのものの意味、「残念だったね」という発言を信じて、本当に残念がっていると予測したのは、全体のたった7%だけでした。(※2)
このようにメラビアンの法則は本来、
「笑いながら怒ってる」
のようなあべこべな感情が同時に発信された時のみに通用する法則。
なのですがしかし、表情や声色が重要だという意外性、キャッチ―さがウケたのか、あたかもいつでも通用する法則として一般には流布しています。
『メラビアンの法則』を分かりやすく伝えようとした。
単純化したら、重要な部分がすっぽ抜けて、かつそれを他人にも伝えてしまった。その結果、不正確な説が流布してしまったのでしょうか。
かくいう私も、こんな場末コラムを投稿させてもらっていますが。
できるだけ正確な情報を――と、心がけつつも後から、「しまった、あれだと誤解を与える!」と気づいたことも1度ではありません。
記念すべき第1回目のコラム『コロンビア大学のジャムの実験』にも誤表記があったので、最近、こっそり直したなんてことも…(汗
『1.コロンビア大学のジャムの実験』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888998169/episodes/1177354054888998217
インターネット界隈で情報交換や討論するようになって、ソース(情報源)の重要性が叫ばれて久しいですが。
特にゲームとかアニメとかの界隈は、みんなの知見を集合するための学会のようなものはなく、それぞれのプロ個人が思い思いに自説を伝えているのが常です。
特定の人、1人のプロや専門家の意見を鵜呑みにするのではなく、情報の裏を取る。あくまで参考程度にする。最低限、ネットで仕入れた情報については、他の専門家も同じことをいっているか確認するのが安全そうですね。
■ 今日のまとめ ■
・メラビアンの法則は「笑いながら怒っている」など、矛盾した感情が同時に発信された時にだけ、成立する法則だよ。
・でも、今ではいつもコミュニケーションは見た目が重要だと誤った理解がされ、ビジネスシーンとかで流布しているよ。
・流布している説でも、裏を取るのを忘れないようにしよう。
(※1) 感情情報が食い違っている
メラビアンさんが行った実験では、「好意」「中立」「反感」の3つの感情を持った、言語、聴覚、視覚情報をそれぞれミックスして、参加者に見せて反応を調べました。
(※2)
よって本来のメラビアンの法則から導かれる結論は、口先だけで相手を褒めたりしても、表情や声色も伴わないと信じてもらえないよ。といった程度でしょうか。
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