20代からはじめる終活
深青藍
就活の次は終活?
しゅうかつ、最近よく耳にするこの言葉は聞き手の年代によって意味合いが変わってくる響きでもある。若者が聞くと就職活動であるが、落ち着いた年頃になると終わる活動、人生を終えるための活動を意識するのではないだろうか。
私は大学四年生になった時、周囲と合わせて就活をはじめた。あてもなく適当に合同説明会やセミナーに参加し、自分の興味のある業界や職業もわからぬまま次から次へと会社を訪問し、面接を受け、エントリーシートを書きまくった。実に100社以上の会社に興味を示した。
しかし頭も悪く、愛想もない私は面接でことごとく落とされた。そんな中、私を見捨てずに最終面接まで受けさせていただいた会社が二つある。今の葬儀社か、育毛ケアの会社だった。なぜその二つになったのかは私にも謎だった。
好きなことは本を読むこと、絵や音楽を聴くこと、お芝居をみること、そんな私が暗くてよくわからない葬儀の会社、テレビでよく見る毛生えの会社の最終面接にまで残るなんて。
窮地に立たされた私はそれぞれの会社で働いた時のイメージを思い浮かべてみた。葬儀社、祖父母の葬儀の印象では男性がメインとなって動いていた。女性は事務所にこもっているイメージ。楽そう。
次に育毛ケア。エステティシャンのような制服に華々しいお化粧を施していた、面接先の女性社員の皆さんの輝く笑顔が思い浮かぶ。ただお客様は髪の毛が生えないというデリケートな悩みを抱える落ち着いた年齢のおじさま達…。怪しい。
そして私は今の葬儀社の道へと足を進めたのである。
正直、葬儀の仕事に携わらなければ、終活のしの字も知らなかったと思う。
適当に年をとり、縁側でお茶でも飲みながらぴんぴんころり。私もそうなれたらいいなとしか考えていなかった。
しかし現実は違う。早くして病に伏せる方や突然の事件事故、中には自らその命を絶つ方もいらっしゃる。そんな世の中で、私は果たしてぴんぴんころりであちらの世界にいくことができるのだろうか?
就活の次は、終活だ。私はそう思い、立ち上がった。
立ち上がったはいいものの、まずは何をどうすればいいのかがわからない。ひとまず考えよう。「よし。」そして私は再び椅子に腰を下ろした。
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