『読書しない感想文 その2』

桝屋千夏

『高校二年生の五年間は無駄じゃない』

 竹内緋色様の自主企画『読書しない感想文』


 野々露ミノリ様の「決戦はカオスでした。」への読者感想文です。


 もちろん一切読んでいません。


 野々露ミノリ様

 この場を借りて、失礼をお詫び申し上げます。


 ******


『高校二年生の五年間は無駄じゃない──桝屋千夏』



 主人公は五年間ずっと、とある人物との出会いを待ち続けます。

 そして高校二年生の時に見つけるのです。


 といっても、その探し人と出会ったのは、高校二年生から数えて五年前の中学一年生ではありません。


 この物語の主人公『亜紀』は、とあるくだらない理由で留年を繰り返しています。

 つまり、高校二年生で出会い、その後五年間、留年続きで高校二年生だったのです。


 私はこの事実を知ったとき、鳥肌が立ちました。

 実は、私も同じように高校を留年した経験があるからです。


 あれは今思えば、残酷な日々でした。

 後輩がいつの間にか先輩になり、OBOGになり、そして結婚する友人もいました。

 私が特に恥ずかしかったのは『成人式』です。

 私は高校二年生で成人式を迎え、極度のストレスで『し』を覚悟しました。

 そして、下痢がひどくなり式を欠席しました。

 でも、今は元気で生きています。


 そして、この物語のヒロインも同じように『成人式』を迎えるのですが、まさにここが見せ場となるのです。

 亜紀も成人式には行きにくくて欠席したのですが、未練があり、毎年会場付近をふらついていました。

 そして、五年目の高校二年生でたまたま通りかかった成人式会場で奴を見つけます。


 ここが亜紀の戦いの最終決戦の地。


 そしてついに五年間探し続けたライバルである学校司書に戦いを申し込み、会場はみるも無惨なカオスとなるのです。


 亜紀の五年間の留年はこの日のためにあったと言っても問題ありません。


 亜紀の前に現れた『し』。

 そして『し』を司る学校司書。


 お互い『し』から始まる言葉を連呼していきます。

 古今東西『し』から始まるものバトルです。


『獅子唐』や『新幹線』等のありふれた単語から、仏教用語『瞋恚』や医学用語『シャント』など、全く意味がわからない単語がどんどん飛び出してきます。


 さすがに『し』を司る学校司書はめちゃくちゃ強いです。

 でも、亜紀も負けてはいません。

 必死に頭をフル回転させて食い下がります。

 私は手に汗を握りながら、単語だらけのページを何度もめくりました。

 そして、敗けを悟った亜紀の目の前に大きな『し』が現れます。

 喪失感と絶望感が伝わってきて、涙が私の頬を伝っていきました。


 だって五年間も人生を高校二年生に捧げたのに。

 恋も遊びもせず、ただひたすら来る日も来る日も広辞苑とジーニアスを暗記したのに。

 そのあと、亜紀を支えてくれた皆との回想に、私は声を出して号泣せずにはいられませんでした。


 最終的に、亜紀は高校を中退するのですが、彼女に後悔はないと思います。

 あれほど、学校司書を追い込んだのですから。


 今まで、私の歩んできた五年間はなんと実りのないものなのでしょうか。

 この作品を読んで、私は何気ない毎日を、しっかりと踏みしめて生活しようと思いました。

 明日から、そして、これからの五年間を無駄にしないために。




 ***


 野々露ミノリ様

 再度この場を借りて、失礼をお詫び申し上げます。

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『読書しない感想文 その2』 桝屋千夏 @anakawakana

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