第3話
翌日、亮と共にクラスに入った梓を見て優希とコウは口を大きく開けて驚いていた。
「はよ、優希、コウ。これは王子様の亮」
「はじめまして。星名国第三王子、高山亮だ。よろしく」
「は、は、はじめまして!!!私は彩雅の立花優希と申します!王子、お目にかかれて光栄です…!!」
「花街コウです!凰華から来ました!お目にかかれて光栄です!王子!」
冷や汗をかきながら挨拶する二人に亮は苦笑する。
「敬語は使わなくても構わん。というか使うな。俺の事は亮でいい」
「なっ…?!お、王子様がそう仰るなら…」
優希とコウは頷いた。
「うむ。ところで梓」
「何だよ王子様」
「さっき、俺を紹介する時これ、と言わなかったか?」
「あー、言ったな」
「お前…」
亮がため息をつく。
「まぁいい。今度は俺の番だな。おい、翔!」
亮が呼ぶと、翔と呼ばれた男子生徒は振り返って、こちらにトコトコと歩いてきた。
「はい、何ですか?亮のお友達?」
「そうだ。これは同室の寄木梓」
「どーも」
「で、立花優希と花街コウだ」
「お目にかかれて光栄です!王子!!彩雅の立花優希です!」
「凰華の花街コウです!」
二人が頭をペコペコと下げるのを止めて翔は笑った。
「やめて下さい。私は真麗国第四王子、
「じゃあ翔」
「ちょ!梓!!」
優希が慌てて梓を叩くが、翔は構わないですよ、と笑った。
「で、ではお言葉に甘えて」
優希が言うと、翔は頷いた。
「それにしても、もうこんなに友達が出来たんですか?亮」
「梓以外は初対面だ、これの友達らしくてな」
「お前さぁ、根に持ちすぎだろ、これこれ言うな」
「お?これと呼ぶことが失礼だとやっとわかったか愚か者」
「チッ!」
「舌打ちしたな貴様!!」
亮が梓の胸倉を掴んでゆさゆさと揺らすと梓は笑いだした。
「あ!そうだ!私と同室の子も紹介させて!」
突然声をあげた優希は、近くに座っていた女子生徒を引きずってきた。
「あうあう…なに…?ゆうちゃん」
引きずられてき女子生徒は小柄で眠たそうな目をしていた。髪は薄いピンクのボブで、萌え袖を振り回して優希に抗議していた。
「私の友達!と王子様!あいなにも紹介しようと思って!」
「友達…?王子…?」
あいなは亮と翔を見た瞬間ピシッと石のように固まった。
「えぇ…ほんとに王子…」
「星名国第三王子、高山亮だ。敬語はいらん」
「真麗国第四王子の神木翔です。私も敬語
は結構です」
「え、え、わ、わかりました…そのよう
に…」
あいながコクコクと頷くと、亮と翔は満足そうに笑った。
「俺は亮と同室の寄木梓。大陸の外から来た」
「え、そうなんですか?」
翔が目を丸くする。
「花街コウ!凰華から来たよ!」
コウはニコニコと笑いかける。
「はじめまして、
「ええ!本当!!嬉しいなぁ」
コウが嬉しそうに言うと、あいなも少し笑った。
「二日目でこんな大世帯になるとは思わなかったな…」
梓が呟くと、亮がそれに反応する。
「なんだ、不満か?」
「いんや?ただ予想外だっただけ」
「俺も予想外だ」
亮が呆れたように言った。
「だろうな。あー、駒崎はまだ来ねぇのか?」
梓が言うと、それに反応したかのように教室の扉が開いた。
「全員来てっか??出席とるから席つけよ!」
駒崎は欠伸をしながら出席をとりはじめた。それが終わると第一ホールに移動して杖を受け取ると言った。
「他のクラスの奴らもいるから騒ぐなよ?あと列も乱すな、面倒な事になる」
梓達は適当に並ぶと第一ホールへと向かった。
*
「じゃあ順番に係員から杖貰うように。その前に俺に申請書出してから行けよ」
駒崎が言うと、生徒達は動き出した。
「なぁ、この学校てさ、杖は常備しとかないといけねぇんだよな?自分の魔法具は持ってていいのか?」
梓が亮に聞くと、亮は頷いた。
「ああ、構わない。といっても、一年生で自分の魔法具を持ってる者は少ないがな」
「なんで?」
「そもそも、なぜ学生が杖を使うかわかるか?最も簡単に魔法を使う事が出来るからだ」
「初心者用魔法具ってこと?」
「そうだ。上級者は杖を使わず魔法を出せるがな。それに自分に合った魔法具を見つけるのも時間がかかる」
「ふぅん」
梓が納得すると、優希が後ろから声をかけてきた。
「二人とも魔法具持ってるの?!凄い!」
「魔法具何使うの?」
コウも後ろから声をかけてきた。
「梓は日本刀。俺は銃だ。翔は確か、」
「私は魔法呪具を使います。札とか呪いの込められたものですね」
「凄い!かっこいいなぁ」
優希は感動したように言いながら、落胆した。
「私なんか、実家が魔法具屋の癖に上手く魔法具使えなくて…」
「急がなくてもいいよ…ゆうちゃん。うちも見つかってない」
あいなが慰めると、優希は笑顔でありがとう、と言った。
「コウも見つかってない!でも、コウは体に付けるヤツがいいんだよねぇ」
「武闘派なのか?以外だな」
「あ!梓失礼だよ!コウが小さいからって!だからこそ!コウが武闘派なのは意外性があって良いんだよ!」
「はいはい、悪かったよ」
もう!と怒りながらコウはふくれた。
*
杖を受けとると、駒崎の指示で梓達は第一実習室へと向かった。
「今からこの実習室にあるもの、たとえばこのノートとか椅子とか、適当に浮遊魔法で浮かせてみろ。杖が自分に合ってるかどうかの確認だ。一応プロが一人一人に合うように作っているとは思うが、念の為だ」
梓は杖を取り出してクルクルと回す。
「うわ、梓無駄に器用」
「うっせ」
コウは笑うと、杖を取り出して椅子を持ってきた。
「誰から浮かす?」
コウが聞くと優希が手を挙げた。
「いくわよ!…浮遊魔法式構築」
優希が呟くと、杖から空中に魔法式が浮かび上がり、椅子の下に魔法陣が形成された。
「なんで魔法式が出るんだ?相手に今から出す魔法知られんだろ」
「学校用の杖は全部こうなってる。知らないのか?」
「知らん」
「全くお前は…学校のパンフレットを読むとかしろ」
梓に呆れながら亮が言った。
「浮遊魔法式展開!!」
二人が話している間に優希が杖を振った。すると、椅子の下の魔法陣が光り、椅子はふわりと浮き上がった。
「魔法式を杖を媒介にして構築、魔法陣を作り、魔法式を展開して魔法を発動、三段階か」
「これが一番一般的だ。学校では特にな。お前、どうやってSクラスに入ったんだ?」
「頭良いから」
それを聞くと亮はため息をついた。
その後次々と杖の確認を終え、最後は梓のみとなった。
「やべぇ、俺無理かも」
「Sクラスの人間が杖使えないわけないじゃない」
優希が笑いながら梓の肩を叩く。
「いや頑張るけどさぁ」
梓は渋々杖を手に取る。
「浮遊魔法式構築」
そう梓が言った瞬間、
ポキッ
「あっ」
杖が真っ二つに折れた。
「はあああああああ?!」
コウが叫ぶ。
「え、なに、何が起こったのよ今」
優希が混乱しながら折れた杖を観察する。
「全然わからないわ」
優希が杖に魔力を込めてみるが、杖はびくともしない。
「お前ら騒がしいぞー、何してんだ」
すると、駒崎が梓達の方に歩いてきた。
「先生…梓の杖…壊れた…」
あいなが言うと、駒崎はぎょっとした顔をして、優希から杖を取り上げた。
「寄木…だったよな?」
「おう」
「何してんだお前」
「俺は悪くない」
駒崎が梓の頭をスパン!と叩く。
「いってぇ!!何すんだ駒崎!」
「駒崎先生だろ!!ったく、どうすりゃこうなるんだ?」
駒崎は杖を調べ始めた、暫く杖を見ていると、ピタッと動きを止めた。
「寄木、お前、杖使う自信あったか?」
「は?」
梓が頭を傾げる。
「先生、こいつ、杖使うの無理かもしれないと言っていました」
亮が言うと駒崎はうんうんと唸り始めた。
「お前さ、なんで折れたかわかってるだろ」
「…」
「え、なんで折れたんですか?」
翔が聞くと、駒崎は説明し始めた。
「こいつの魔力に耐えきれなかった、それだけだ」
「魔力に耐えきれなかった?杖が?」
コウがポカンとする。
「はぁ…。だから無理って言ったんだよ」
梓は面倒くさそうに頭をかいた。そして、右手を椅子に向けた。それだけで、
「う、浮いた…」
椅子はしっかりと水平を保ったまま、数メートル一気に浮き上がった。
「私の時はふわふわ揺れてたのに、あんなに安定してる…それに、無詠唱で、杖もなしで、そんな事学生に出来るの…?」
優希が酷く驚いて梓を見る。
「三段階使って魔法を使うのも勿論できっけど、無詠唱で出来た方がいいに決まってんだろ」
梓は椅子をクルクルと回したり暫く遊んでから、元に戻した。
「…お前、何者だ?」
駒崎はニヤニヤと笑いながら問いかける。
「ただの生徒だよ、駒崎せんせ」
梓は杖を駒崎から奪って両手で握る。
手を開くと、杖は元通りになっていた。
「え!どうやったの?!」
コウが杖と梓を交互に見る。
「簡単な時間操作魔法、杖の時間を戻しただけ」
「おいおい、時間操作魔法を無詠唱で使うなんて俺でもちょっと厳しいぞ」
駒崎が困ったように笑う。
「まぁ、俺優秀なSクラスなんで」
「はぁ…。まぁいいや。杖折らないように魔力使う練習しとけよ」
「はいはい」
駒崎は梓を一瞥すると、他の生徒達の方へ歩いていった。
「梓、天才だったんだね…」
優希が恨めしそうに言う。
「大袈裟だろ。浮遊魔法の無詠唱なんて、亮とか翔なら簡単だろ」
「まあ、出来るが」
「私もなんとか、でも流石に時間操作は無理ですよ」
「そうか?」
梓が不思議そうに言う。
「無理だよ!!!」
その様子を見てコウが叫ぶ。
「これは…無自覚…」
ふむふむ、とあいなは頷いた。
世界を嘆く者達へ 藍宮 結丹 @aimiya_uni
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