第27話:東京にて。

真琴に会いに東京へ来た飛鳥たち。

次の日の朝。

飛鳥たちが宿泊しているホテルの部屋。

ここは響香とエリカの部屋。

響香より先に目覚めたエリカが、スマホを持ってバルコニーへ出て、

どこかへ電話をかけていた。


「あ、もしもしお父様?」

「やぁ、エリカ、おはよう。なんだって?昨日から東京へ来てるんだって?」

「うん、飛鳥ちゃんんがいきなり言うもんだから。」

「そうらしいね。で、エリカの方はどうなんだい?大阪での生活はもう慣れたかい?」

「はい。飛鳥ちゃんの家の方も、学校の皆さんもみんな、仲良くしてくださるので。」

「そう、それは良かった。」

「でもお父様?」

「なんだい?」

「私、自分の実家が青島貿易だ、って、まだ学校のみんなには言ってないんです。」

「そうか…。でも、そんなの、

別に言わなきゃ知られないことだろう?別にエリカが気にすることないさ。」

「う、うん。」

「で?こんな朝早くに電話して来た、ってコトは、わたしに何か用事があったんだろう?」

「うん、藤坂さん、こっち来てから私に全然連絡くれないから寂しくて寂しくて。」

「そりゃあまぁ彼も撮影とかいろいろ忙しいからね。」

「分かってるわよ。でも、彼女としては連絡くらいほしいのよ。」

「あぁ、そのことだけどな、今日は浩輝君がお前たちにサプライズを用意してるみたいだから、って言ってたよ。」

「サプライズ?」

「あぁ。ただ、それがなんなのかは私も知らないから、楽しみにしとくんだね。そう言えば聞いたんだけ


ど、何だって?春の文化祭で、エリカの所属するクラスの、ミス・鈴ヶ丘に、お前が選ばれたんだって?」

「い、いやー、その事は言わないでー。」

「これは面白そうだから、文化祭、わたしも見に行っていいかな?」

「やー、お父様は来ないでー!恥ずかしいからっ!!」

「分かったよ。」


と言う、久しぶりの親子の会話を楽しんだあと、エリカは電話を切り、バルコニーから部屋に戻った。


すると、ベッドでは、響香が、「ん・ん~…ふわぁ、良く寝たなぁ~…。」と、大きなあくびをして、バルコニーから入って来たエリカを見て一言。


「あれ?エリカさん。おはようございます。」

「おはよ。」

「何でスマホ持ってバルコニーに居たんですか?」

「電話してたの。」

「電話?藤坂さんにですか?」

「違うわ?お父様に。」

「何を話してたんですか?」

「いろいろと、ね。いろいろ。」

「はぁ。…それより、朝食どうします?ルームサービスでも取ります?」

「それ、良いわね。」

「じゃあ、私が電話しますね。」

「お願いね。」


そして響香は、2人分の朝食のルームサービスを頼み、レストランスタッフに部屋まで食事を持って来てもらい、ゆっくり味わいながら食べた。

食べ終わった2人のうち、響香は、飛鳥に電話しようとした。


「あら?響香さん、どちらかに電話するの?」

「えぇ、ちょい飛鳥に。さすがにもう起きてるやろ、と思いまして。」


そう言って響香は、飛鳥のスマホに電話をかけると、飛鳥とは違う声で、別の女の子が電話に出た。


「やほー。響香、おはー。」

「あれ?まこ?飛鳥は?」

「ウチの横でまだ夢の奥深くやわ。」

「そうやと思たわ。にしても昨日は驚いたで、しかし。」

「何が?」

「何が?って、飛鳥が大好きな五月天の阿信さんが、まさかあんたや藤坂さんたちと競演してたやなんてな。」

「ウチもや。最初対面した時、”あ、この人確か飛鳥の好きな…。”って、思たもん。

「そやろなー。」

「でな、あんたら朝食は?」

「あぁ、ルームサービス取ってもう食べた。」

「早っ!!こっちは飛鳥がまだ眠ってるから朝食はもうちょいあとやな。」

「そか。なぁ、まこ?」

「んー?」

「今日も撮影か?」

「いんや?今日はあんたらが来てるから、って、休みくれたわ。」

「ホンマ?」

「うん。」

「ほな、東京見物したいわっ!」

「あぁー…うん、分かった。浩兄に電話して聞いてみる。」

「よろしく。」

「とりあえず折り返すわ。」

「ほーい。」


そう言って2人は電話を切った。

真琴が電話を切った、飛鳥と真琴の部屋では、真琴が浩輝に電話をし、浩輝の車で東京見物に連れてってくれるか、許可を取っていた。そして、その電話を切ったあと。

真琴横で眠っていた飛鳥が、「ふわぁ~…。」と、ようやく目が覚めたみたいだった。


「お、起きたか?飛鳥。」

「うん、おはよ。」

「おはよー。」

「さっき、誰かと電話してへんかった?」

「あぁ、浩兄と響香や。」

「響香ちゃん、なんて?」

「今日も仕事か?て聞いてきたから、"違うで、休みやで"って言ったら、東京見物したいわー、って言うて来たからな、今から浩兄に電話しようと思ってたトコや。」

「そうなんや。私も東京見物したい。」

「そやな。あ、先輩、もう起きてるんちゃう?」

「そうかな?」

「電話してみたら?」

「うん。」


そう真琴に言われると飛鳥は千春の電話に連絡を入れた。

すると、5コールほどで千春が電話に出た。


「ふあ~い、もしもし?」

「あ、先輩?もしかしてまだ寝てました?」

「あ、飛鳥ちゃん、おはよう。」

「おはようございます。」

「今日、お昼前から浩兄の車使ってみんなで東京見物行くんですが、先輩も行きますか?」

「もちろん行きたいっ!」


そしてみんなはそれぞれの部屋に戻って準備が整ったら再び飛鳥たちの部屋へ集合した。


「ほな、行きましょか?もう浩兄下に着いてるはずやから。」

「はいはい。

「ほいよー。」

そして、飛鳥・響香・真琴・エリカ・千春の4人は、浩輝の待つフロントへとエレベーターを降りた。


「浩兄お待たせ。」

「おはよう、飛鳥、みんな。で、ドコ行く?」

「浩兄?」

「なんや?まこ。」

「この前浩兄、ウチに東京タワー連れてってくれるて言うて、結局行かれへんかったやんか。」

「そうやったな。ほなまずは東京タワーから行こか?」

「わーい!」


と、みんなは喜び、走って外に出て浩輝の車に乗り込んだ。

そして浩輝も自分の高級日本車のエンジンをふかし、ホテルのロータリーを出て、

一般道を東京タワーへと向かい、走って行く。

その車内…。


「なぁなぁ浩兄?」

「なんや?飛鳥。」

「このCD流してぇな。」

「ん。」


と言い、浩輝は真琴から渡されたディスクをトレイにセットした。

すると、アップテンポのナンバーから始まる、五月天の曲が車内に流れた。


「なんや、またメイデイやんか。」と、響香。

「アカン?」

「あかんこと無いけど、まぁ昨日あんなことあったしな、しゃーないわ。」

「あっ!わ、忘れてた…。」

「忘れてたんかいっ!!」


と言う、飛鳥と響香の幼馴染同士のボケツッコミに車内には笑いが出た。

そして車はようやく東京タワーに近付き、浩輝がみんなに声をかけ、

運転しながら片手で指をさして、


「ほら、あれが東京タワーや。」

「どれどれ?」と響香。

「うわー、私、久しぶりですー。」

「僕は初めてだよ。」

と、それぞれ口にする。

「な、浩兄?」

「なんや?飛鳥。」

「い、今からあの展望台に上るんやんな?」

「あ、そうか、お前、高所恐怖症やったな。どうするんや?」

「みんなは上りたいやろ?」

「そらせっかく東京来たんやし上りたいわ。」

「飛鳥だけ下で待ってたらえぇやん。」

「そんなんイヤやわ。」

「ほな僕が付き合うよ。だから、お兄さんとみんなは上って来て下さい。」

「お、千春君、男前やないか?ほな、飛鳥のこと、頼んだからな。」

「はい、お兄様。」

「おう。」


その間にも車は駐車場へ入り、

5人は車を降り、東京タワーの展望台のチケット売り場へと向かった。

そしてチケットを買い、響香が一言。


「ほな飛鳥、先輩。行って来るわな。」

「はいはい、行ってらっしゃい。」


そう言われ、浩輝がエレベーターのドアを閉め、エレベーターは展望台へと上がって行った。


その頃、タワーの下では。


「先輩?」

「ん?」

「先輩もホンマは登りたかったんちゃいますのん?」

「まぁ、でも、飛鳥ちゃんを一人には出来へんからね。」

「うわー、先輩優しー!」


と言って、飛鳥は先輩に抱き付いた。

飛鳥と千春の二人は、東京タワーをバックに二人で写真を撮ったり、タワーのお土産やさんをうろうろしたり、手を繋ぎながらあちこち見て回っていた。

するとそこへ、展望台から降りて来た一同が二人を見つけ、真琴がこう叫んだ。


「あー!ラブラブカップルはっけでーん!」


「え?」


「あ、楠木さん…。」


「ちょ、ま、まこちゃん!」

「あはは、ほんまラブラブやな。」


「みんな、降りて来たん?」

「うん。」

「どうやった?展望台。さすが東京やったわ。」

「そっか。」


「よっしゃ、ほな次の場所向かおか。」

「次の場所って?」


浩輝にそう言われ、みんなは車に乗った。


「なぁ浩兄?」

「なんや??飛鳥。」

「次はドコ連れてってくれるん?」

「こっからはサプライズや。」

「サプライズ?」


そう言って浩輝は、東京タワーから一般道を15分走ったところで、車を路肩に止め、どこかに電話した。

それから15分ほどして、車の窓をトントンとノックする音が聞こえたので、

浩輝が窓を開けると、そこには笑顔の阿信と藤坂が車内に向って手を振っていた。


すると飛鳥は、目を丸めて、「あ・あ・あ・あ・阿信さんっ!」と、叫んだ。


「どや、驚いたやろ。」

「うんっ!」


すると阿信が、窓越しに浩輝に挨拶して来た。


「グッドモーニン、プレジデント。」

「ヤァ、オハヨウ、ミスターアシン。カムイン。藤坂君も。」


と言われ、二人は車の後部座席に座った。


二人が車に乗り込むと、浩輝は、再びゆっくり車を走らせた。


「さてみなさん!」と、浩輝がみんなに言う。


「どこへ行きたい?」


すると、響香が手を挙げた。


「はいはいはーい!浩兄っ!」

「なんや?響香。」

「ウチ、まこと一緒に新宿でショッピングしたいっ!」

「そか、了解。千春君は?」

「ぼ、僕ですか?僕は、アキバに行ってみたいです。」

「アキバか、了解。」

「エリカちゃんは、藤坂君とデートしたいやろ?」

「はいっ!」

「浩兄?」

「なんや飛鳥。」

「私は?」

「あー。…ミスターアシン?」と、阿信と英語で会話を始めた。

「イエス?プレジデント。」

「今日はこいつと一日デートしてやってもらえませんか?

「デートですか?いいですよ?」

「こいつ、英語も北京語も出来るんで、よろしくお願いします。」

「OKOK。」

「よっしゃ決まった。」

「なぁなぁ、浩兄、さっき何話してたん?私の名前も出てたけど。」

「飛鳥。」

「はいっ。」

「お前、今日は一日、阿信さんとデートして来いっ!」


と言う仰天発言に、車内からは、「えーーーーーっ!!!!!」

と、驚きの叫び声が。


「千春君?」

「は、はい。」

「君も、飛鳥が阿信さんの大ファンなの知ってるやろ?」

「はい。」

「そやから、響だけは、飛鳥を阿信さんとデートさせてやってくれんか?」

「は、はい。」

「その代わり、アキバでは君の好きなもん、なんでもうたる。」

「い、いいんですか?」

「あぁ。で、飛鳥?」

「なに?」

「お前は阿信さんとドコでデートしたい?」

「んー、お台場。」

「お台場か。ここから一番近いな。ほなまずはお前と阿信さんをお台場まで送るからな。」

「うん。」


そう言うと浩輝は車をお台場へ向けて走らせた。

そして、人目につかないところで飛鳥と阿信を降ろした。


お台場の観覧車の下で車から降ろされた飛鳥と阿信の2人は、みんなと別れ、とりあえずゆっくり歩いた。

そして、阿信は、一応自分が五月天の阿信だと気付かれないよう、サングラスだけはした。


ここから、飛鳥と阿信の北京語トークだと思って読んで下さい。

↓~。


「あ、阿信さん?」

「なんだい?ミス・飛鳥。」

「私、ここの、ゼップ東京でのライブも来てたんです。」

「おぉ、そうなんだ!ありがとう。」

「い、いえ、そんな…。ファンとして当然です。」

「渋谷の500人プレミアライブもチケットが当たって、行きました。まだ子供だったので母と一緒に。」

「そうだったの?」

「はい。」

「あの時は、メンバーの皆さんが、手に取るような近くで見れて、ホント、感激でした。」

「"離開地球表面"も、当時の新曲としてってくれましたよね?」

「あぁ、そうだったっけね。」

「そうですよ!あのあと、日本のファンの間では、"あの新曲、何てタイトルなんだろうね。"って、

ネットで大騒ぎだったんですから。」

「そうだったんだ。」

「でも、凄いですよね。」

「何が?」

「さすが、天下の五月天です。」

「あの時、渋谷の500人ライブから、あれよあれよと、ゼップライブが決まり、しかも、2回くらい演ってくれましたよね?」

「そうだったね。」

「そして、15年の武道館デビューで、去年2月の2回目の武道館。」

「うん。」

「私、"JRIライブ"の武道館も、"DNAライブ"の武道館も、両方とも行きました。今年の"LIFEライブ"の武道館は行けませんでしたが。」

「ありがとう。」

「あの時に使ってた、同時翻訳機、ファンの間ではすんごく話題になってたんです。」

「そうなんだ。」

「はい。」

「あ、観覧車、着きました。」

「乗るかい?」

「えぇ、乗りたいです。」

「じゃあ、チケットは僕が。」

「えぇ?い、いいんですか?」

「いいよ、それくらい。」

「わーい!!」


そう言うと阿信は、たどたどしい日本語で、観覧車のチケットを2枚、購入し、ゴンドラ乗り場へと2人で手を繋いで向かった。


そして二人は観覧車に乗って、ゴンドラの中で話をしていた。


「ミス飛鳥?」

「はい。」

「今度は台北の僕たちのスタジオへ見学においで?」

「い、いいんですか?!」

「あぁ、いいよ。君の彼氏や友だちと一緒にね。」

「ありがとうございます!」

「にしても、何回来ても日本は素晴らしい国だよ。街や景色も綺麗だし、食事も美味しいし、人も親切だし。」

「そうですか?」

「あぁ。」

「あ、もうすぐゴンドラ終りますね。」


そして、ゴンドラから降りた二人は、海が見える方へ歩いて行った。


「うわー、海を見るとなんだかいろいろ思い出します。」と、飛鳥。

「何をだい?」

「浩兄の車に私の彼氏が乗っていたでしょう?」

「あぁ。」

「その彼に告白した時、神戸の海で、私が日本語に約して歌った恋愛ingを彼にプレゼントしたんです。」

「すごいね、君。そんなことも出来るんだ。」

「はい。」


と、2~3時間海を見ながらいろいろ会話していると、飛鳥のスマホが鳴った。


「はーい。あ、浩兄?」

「おう。お前ら、今どの辺りや?」

「ゼップ近くの海の見えるトコ。」

「そっか。ほなな、フジテレビの前まで戻って来てくれ。」

「なんで?」

「響香がな、明日は学校で大事な授業がある言うんや。そやから買えらなアカンらしいわ。」

「そうなんや。」

「阿信さんにもそれ、伝えてくれ。僕は今、みんなを車に乗せてお台場に向ってるから。」

「分かったほなあとで。」

「おう。」


そう言って二人は電話を切った。

飛鳥は、浩輝からの内容を阿信に伝え、二人でフジテレビ近くまで歩いて行った。

しばらくすると、黒塗りの高級車がクラクションを鳴らして、飛鳥たちの前で止まった。


「おう、飛鳥、早よ乗れ。阿信さんも。」


と言われ、二人は車に乗り込んだ。


「あ、先輩。」

「やぁ。」

「どうでした?アキバ。」

「うん、お兄さんにこんなにたくさんいろんなもの買ってもらったよ。」

「そうでしたか。ひろにぃ~?」

「な、なんやねん?」

「先輩になんも言わんかったやろな?」

「なんも、って、なんや?」

「先輩?浩兄から何も言われませんでしたか?」

「んー、飛鳥ちゃんのこと、よろしくね、とは言われたかな。」

「はぁ。」

「兄としては当たり前やろが。」


そして車は銀座方面へと向っていた。


「さーて諸君。大阪へ戻る前に晩ご飯やな。何かリクエストはあるか?」


と、浩輝が聞くと、真琴がすかさず手を挙げた。


「はいはーい!ほなウチ、あそこ行きたいっ!」

「あそこ?」

「前に浩兄が連れてってくれたお肉やさん。」

「お前なー。あそこむちゃくちゃ高いねんぞ?それをこの人数で…。」


と、浩輝はしばらく考え、「はぁ。」とため息を付いた。


「まぁえぇ。会社の経費で落とすから。」

「やたー!」


「え?まこちゃん、なんなん?」

「浩兄、むっちゃ美味しい神戸牛のお店、知ってんねん。」

「そうなんや。」


浩輝は車を路肩に止め、店に電話をした。


「あ、大将?悠生です。どうも。奥の座敷、これから8名、いけますか?」


と、聞くと、大丈夫、と言う返事が来たので、再び車を走らせ、

銀座の一角にあるコインパーキングに車を止め、ぞろぞろと店に向って歩いて行った。


そして見せに着くと、ドアを開けて、「やぁ、大将、どうも。」と言って中に入って行った。


「わ、若社長、こりゃまた大勢で…。女将っ!置くの座席へご案内さしあげて!」

「かしこまりました!」


と言われ、一向は、座敷へ案内された。


みんなが座敷で談笑していると、最高級の神戸牛のステーキが人数分やって来た。


「さぁ、みなの衆、召し上がれ!」


と、浩輝が言うと、みなそれぞれに神戸牛をゆっくり食べ始めた。

食事中、浩輝が、飛鳥たちにこんなことを言った。


「飛鳥、響香、エリカちゃん、千春君。」

「はい?」

「忘れんうちにこれ渡しとく。」

「なにこれ?」と、飛鳥。

「帰りの航空券や。」

「もう夕方やからな。今から新幹線っで大阪帰ったら夜遅くなるやろ?」

「座席は、飛鳥は千春君と一緒のがえぇやろ?」

「うん、ありがとう、浩兄。」


食事会から2時間ほどが過ぎ、全員食べ終えて少し休憩してから浩輝が飛鳥たちにこう言った。


「よし、お前らっ!このあと、羽田まで載せて行くからな。関空の到着ゲート前には直輝が待ってる。そやから大阪戻ったら直輝の車で言えへ戻れ。」

「分かった、浩兄。」と、飛鳥。


そして、食事会も終わり、飛鳥たちは浩輝の運転する車で東京の夜景を見ながら羽田空港へ向けて走った。


JAL系列の航空会社が離発着する第一ターミナルに着くと、浩輝は車を駐車場に入れた。


「みんな、忘れ物ないようにな。」

「うん。」と、飛鳥。


飛鳥たちは、搭乗手続きをする。


そして飛鳥は、真琴と少しの間ハグをする。


「まこちゃん、大阪で待ってるから。撮影、頑張って。」

「うん、ありがとう。あんたら来てくれて元気出た。」

「良かった。」


そこへ、ターミナル内に、飛鳥たちの乗る便のアナウンスが広がり、飛鳥たちと真琴は、もう一度抱き合い、大きく手を振って、セキュリティゲートへ消えて行った。


飛鳥たちの姿が見えなくなると、真琴の小さな瞳にうっすらと涙が。

それを見た浩輝が真琴にこう聞いた。


「まこ、大丈夫か?」

「大丈夫、ウチは女優やで。早よホテル送って。」

「分かった。藤坂君たちも送るからな。」

「はい。」


そう言って、羽田に残った浩輝たちはそれぞれが滞在しているホテルへ戻って行った。


そしてこちらは、関空へ向っている飛行機の機内。

飛鳥と千春のシート。


「飛鳥ちゃん、東京ではいろいろありがとうね。」

「ううん、私も楽しかったです。」

「夢叶って良かったね。」

「夢?」

「阿信さんとのデート。」

「あぁ、いえ、でも、先輩とまた大阪でデートしたいです。阿信さんは、憧れの方ですから。」

「そっか、ありがとう。」


などと会話している間にも、飛鳥たちを乗せた飛行機は関空への着陸態勢を取り、

少しずつ高度を下げ、関空の滑走路に無事タッチダウンした。

そして、到着ゲートでは、地上クルーが乗客を降ろす準備をしており、

機内では、乗客を降ろす準備が整ったので、キャビンアテンダントが乗客を降ろしていき、飛鳥たちも降りて行った。


そして、荷物を受け取った一行は、到着ゲートを出て行く。

そこには、笑顔で手を振る直輝の姿があった。


「よぉ、飛鳥、みんな、お帰り!」

「ただいま、直兄。」

「お、君が千春君やな?」

「あ、先輩、前に電話で会話した直兄。」

「は、初めまして、鷹梨千春、です。よろしくです。」

「おう、よろしくな!さぁ、みんな、帰ろかっ!千春君は家、どこや?」

「ぼ、僕は、御堂筋線の東三国です。」

「東三国か…ちょい遠いな。」

「大丈夫です、僕、電車で帰りますから。こっからやったらJRで天王寺まで行ってソコから御堂筋線乗りますから。」

「そうか、気ぃつけて帰りや。」

「先輩、また学校で。」

「うん、先輩も気を付けて。」


そう言って千春はJRの駅方面へと走って行った。


「さて、僕らも帰ろか。」


と、直輝が言うと、飛鳥たちも直輝に続いて駐車場方面へ向い、帝塚山の家へと戻って行き、東京旅行は終った。

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とある2人のストーリー 粟生野 汀 @makoto2019

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