ヤンデレ女子と剣豪男子 二人の帰り道も修羅の道☆
軽見 歩
夕刻
この惨状を見て、この男に何が有ったのか予測できる者は居ないであろう
「どうしてこんな事に・・・」
木々は薙ぎ倒されて怪しげな模様を描き、その木々はところどころ漕げており、その中心には怪しげな乗り物の様な物が墜落していた。その現場をたまたま目撃したブロガーは立ちすくむ
「これ、ブログに書いても誰も信じないよな・・・」
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時は3分前にさかのぼる
「ありがとうございました。またのおこしを」
馴染みの喫茶店を出て帰る途中、御剣・勝人はもう少し稽古しようと再び山の中に入っていた
「ふん!」
薄暗い林の中とは対照体に、木々の隙間から見える空は夕焼けで血の様に赤く輝いていた。そのあの世とこの世の狭間にある様な雰囲気に中、勝人は1人刀を振るう
「・・・・太刀筋が狂ったか」
舞い落ちる木の葉を刀の切先だけを当て斬る修練をしていたが、どうも木の葉に刃を当て過ぎ斬る事がかなわず、また逆に足りず中途半端に斬ってしまう事が多々あった
「修行不足…」
そう、これは明らかに修行不足。明るい昼間と違い暗い夕方では目の使う神経が変わり間合いを見誤り易い。日頃から如何に目に頼った修練をしていたかが木の葉を通じて見て取れる
「いかんな・・・」
例え暗い夜間であろうと関係は無い、殺しの技を日常の生活に溶け込ませ、いかなる標的または賊や暴漢に”居合わせようと”それを羽虫をはたくが如く斬り伏せる、それが彼の目指す”居合”の技
「歯がゆいが、あまり時間はかけられん」
まだ学生の身である勝人はテストを控えていた。彼の武に対する
『残り2分30秒』
「帰るか」
そう思い帰ろうとする勝人の耳にエンジン音が耳に入る
「このような時間に山師か?」
「グイィィィィィィン!」
その音は明らかに乗り物とは異質、チェーンソウなる機械仕掛けの鋸によるものだった
「近づいて来るな・・・」
「バキバキバキ!」
周りの木々が薙ぎ倒され、勝人は倒木の壁に囲まれてしまう
『残り2分15秒』
「御剣さん、どうして私のお弁当を召し上がらずに、こんな山奥の喫茶店でお茶なんてしていますのぉ?」
そして倒木の隙間から同級生の女が現れる。弥美という勝人を病的に付け回している女だ
「黙れ、マドンナ! 貴様の飯など怪しくて食えるものか!」
弥美はその容姿から学園のマドンナと言われていたが、御剣はまだマドンナを毒草のベラドンナと勘違いしており毒を警戒していた
「やっぱり、あの喫茶店の娘が目当てですのね!」
「娘? そんな者など居たか?」
「しらばっくれて! あの女!私が何度襲っても攻撃がすり抜ける様に躱して・・・忌々しい!!」
先ほど勝人が訪れていた喫茶店には女の幽霊がバイトをしていたのだが、霊感がない勝人には見えていないし、弥美の攻撃が当たるはずもない
『残り1分52秒』
「私というものがありながらぁああ!!」
「たとえチェーンソウを持ち出されようと! 当たらなければどうと言う事は無いわ!」
勝人と闇の戦闘が始まり、林の木々が次々と薙ぎ倒されていく。場所は変わり山の上空
『残り1分42秒』
「やはりボスをあのフクロウに任せる訳にはいかん!」
「この消音ステルス輸送ヘリなら奴も気づくまい!」
「プラズマランチャーも用意した!これであの喫茶店も消し炭よ!」
「おい、なんか下の方が騒がしくないか?」
自分達が勝手にボスと呼んでいる幽霊を救う為、喋るフクロウが営む例の喫茶店にヘリで向かう途中の殺し屋4人組は勝人達が戦っている林の上空まで来ていた
『残り1分34秒』
「なんか林の木が倒れて模様になっていくぞ!」
「ミステリーサークルか!?」
「宇宙人!宇宙人はどこだ!!」
「ミステリーサークルって、ふつう畑とかにできる物じゃ?」
殺し屋達は喫茶店の事など忘れ、下の戦いに注目した
「見ろ!下で宇宙人2人が戦ってる!」
「格闘戦とは、宇宙人にしちゃえらく原始的だな」
「SF映画は見ないのか? わりとやってるぞ」
「で、どうするよ奴ら」
殺し屋達は目を合わせて銃を構えた
「捕獲しよう」
「それがいい」
「了解した」
「身体に当てんなよ、武器だけ打ち落とせ」
殺し屋達は勝人と弥美を狙いプラズマランチャーを撃つ。その攻撃を察して下の勝人達は攻撃を避けた
『残り1分17秒』
「きゃ!」
「むっ!」
銃撃を躱した勝人は空を見上げて、動揺した
「アレはまさか光線銃!? え、UFO!?」
「噂に聞く、りとる・ぐれいなる者達か・・・。飛び道具は分が悪い」
勝人は木々に身を隠すように一目散に逃げ、弥美も勝人の後に続いた
『残り1分』
「御剣さんお待ちになってぇん♡」
「構うな! 宇宙人に捕まっても良いのか!」
「味方を変えればロマンチックじゃありませんの。ほら、降り注ぐ光線がまるで私達を祝福する花火の様・・・」
「このような浪漫などいらん! あ!」
光線が勝人の持っていた学生カバンをかすり、教科書の一つが焼けてしまう。一方上空では
『残り46秒』
「ちっ!すばしっこい連中だ!」
「プラズマの熱でサーマル・ビジョンがボケて狙いづれえ」
「夜間に使うには向かないな、色々と」
「光で凄く目立つしな。・・・ん?」
「トン」
物音がして横を見ると、フクロウが粘土の様な物をヘリに張り付けていた。C4爆薬である
「店の周りであまり騒がないでいただきたい」
そういってフクロウは飛び去り、爆薬が爆発した
「ドオオオオオオン!」
『残り28秒』
「くそう! 宇宙人よりヤバいヤツに見つかっちまった!」
「墜落するぞ!」
「開けた場所はないか!?」
「さっきのミステリーサークルだ! そこにつっこめ!」
『残り17秒』
殺し屋達を乗せた少々特殊なステルスヘリコプターは、火を噴きながらミステリーサークルに突っ込んでいく
『残り10秒』
「いや~、つい長居しちゃったな。あの喫茶店落ち着くんだよね」
店の主人であるフクロウが急用と言って出ていき、頃合いかと思い喫茶店を後にした店の客のブロガーは山道を歩いていた
『残り7秒』
「暗いな…、お化け出そう。まあ、店に居たんだけどね幽霊」
『残り5秒』
「後ろについて来てないよな? さっきの幽霊・・・」
『残り3秒』
「ん・・・、空が明るくなって・・・」
『残り2秒』
「あれはッ!?」
『残り1秒』
「ドオオオオオオオン!」
こうしてヘリは墜落し、その現場をブロガーは目撃したのであった
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一方、翌日学校に登校した勝人は
「テスト前だと言うのに・・・・、困った」
前日の騒ぎで教科書を紛失し、テスト勉強をどうしようかと悩んでいた。UFO騒ぎなどどうでもよいほどに
「・・・・弥美」
「はい?」
勝人は隣の席で宿敵である弥美に問いかける
「言いにくいのだか・・・、教科書を貸してくれないか?」
「はい♡ もちろんですわ」
それからいつも争っている二人は、テストが終わるまで奇跡的に平和な時間を過ごしてたと言う
END
ヤンデレ女子と剣豪男子 二人の帰り道も修羅の道☆ 軽見 歩 @karumi
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