この風船を3分間で膨らませて割るワン!?~風船を割りたくて割りたくてたまらない犬

アほリ

この風船を3分間で膨らませて割るワン!?~風船を割りたくて割りたくてたまらない犬

 ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!・・・・・・



 とあるドッグショーのイベントステージには、1匹のパピヨン犬がステージに足の踏み場の無い程に敷き詰められた、パンパンに膨らまされたカラフルな風船の山を、開場中にパンク音を轟かせて一心不乱に割りまくっていた。


 一時期ギネス指定される程の『世紀の天才風船割り犬』と目され有名なパピヨン犬のバブリンちゃん。雌である。


 風船割り犬のバブリンは、徹夜してスタッフがポンプで1万個も膨らまして、まるで綺麗な花畑のような風船の『花壇』の中を、牙を剥き出して噛み、鋭い爪で踏みつけて、



 ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!・・・・・・



 「よおし!!いいぞ!!もっとやれ!もっと派手に割りまくれバブリンちゃん!!」


 バブリンのドッグトレーナーの裕司は、ステージの側で、バブリンの割りまくって吹っ飛んでくる風船の破片を身体中にまとわりつかせて、一心不乱に割りまくるバブリンを興奮気味でけしかけていた。



  ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!ぱぁーーーーん!!・・・・・・



 「風船はあと1個です!!」


 ステージの司会も興奮気味だ。



 ぱぁーーーーーーん!!



 ネックの部分も膨らみ洋梨状にパンパンに膨らんだ赤い風船が宙に舞い、ジャンプしたパピヨン犬のバブリンの牙が触れて、豪快なパンク音を轟かせて派手に四散した。



 「ワァーーーーーーーー!!」


 ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち!!



 1万個の割れた風船の破片が散乱するステージの上でキョトンと座っている、『世紀の風船割り犬』パピヨンの姿に、観客は割れんばかりの大きな拍手が巻き起こった。


 「ブラボー!バブリン!よくやった!偉いぞ!俺の風船の女王バブリン!」


 ステージに挙がったトレーナーの裕司は、バブリンを労いを込めてなで回し、ご褒美のビーフジャーキーを与えて抱き抱えた。


 「『世紀の超風船割り犬』パピヨンちゃんのステージでしたー!!

 ・・・あれ?」


 司会者は、ステージの向かい側のスタッフのカンペを見て驚いた。


 「バブリンちゃんの風船割りが、予定より早く終わっちゃったみたいで、残り時間はまだ3分ありますねぇ。

 トレーナーさん、バブリンちゃんにまた風船を割って・・・あれ?風船はもう無い?」


 すると、裕司はポケットの中を探った。


 「確か・・・ここに・・・あった!」


 裕司は、ジャケットのポケットの中から、まだ膨らませて無い萎んだ風船を見つけて取り出した。


 「あれ?まだ風船が・・・ありますねぇ? 」


 その風船は、ステージの下見の時にスタッフが膨らまし忘れて放置された萎んだ風船だった。


 ・・・ちょっと待て・・・


 ・・・この風船を俺が膨らませたとする・・・


 ・・・パピヨンちゃんは俺の口臭が逃避するする程苦手で、その風船を割らないで逃げちゃう可能性もあるなあ・・・


 ・・・そしたら、このステージの観客はドッチラケになって最悪のシュチュエーションになりかねない・・・


 ・・・ポンプは・・・ないや・・・


 「あっ!そうだ!!」


 突然、裕司は閃いた。


 バブリンは、体温調節の為にはっ!はっ!口を開けてはっ!はっ!はっ!と舌を垂らして呼吸をしていた。


 「これだ!!」


 裕司は、早速バブリンの口元に萎んだ風船の吹き口を宛がった。


 

 ぷぅーーーーーっ!!



 パピヨン犬のバブリンの吐息が、風船のゴムの一部分を膨張させた。


 ・・・びくっ・・・!!


 口元の風船が膨らんだとたん、バブリンはビクッとした。


 「よしよし落ち着け、バブリン。この萎んだ風船に息を入れるんだ。

 君が割ってた風船の膨らむ前がこの姿だ。

 ここに息を入れると、君の大好きな風船の出来上りだ。

 それ、吹け!!ぷーーーーー!!」


 パピヨン犬のバブリンは訳が解らず、ステージのライトで淡く黒光りする鼻から息を深く吸い込むと、する兎に角トレーナーの裕司の言う通り、口元で膨らんでいく緑色の風船に無我夢中で息を吹き込んだ。



 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!



 「さあ、バブリンちゃんは今度は自らの息で風船を膨らませて割っちゃおうとするのでしょうか?

 ステージの時間は、残り3分を切りました。

 時間内に果たしてこのバブリンちゃんが小型犬の肺活量で、膨らませてる風船は割れますか?!」



 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!



 パピヨンのバブリンの頬は限界まで孕み、鼻の孔は息を吸い込みパンパンになり、パワフルに段々大きくなる風船に息を吹き込んだ。



 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!


 ぷぅーーーーーっ!!



 「ステージ時間後10秒!!まだ、風船はパンパンになってません!!」


 ・・・ああ!間に合うか・・・?!


 ・・・時間内に無我夢中割れるまで間に合わなかったら・・・ブーイングが起きたら・・・


 焦る裕司は、とっさに行動を起こした。


 さっ!!


 裕司は、風船をくわえて膨らませているバブリンの鼻の穴に、大好物のビーフジャーキーを宛がったのだ。


 「!!!!!!」


 突然、バブリンの心のボルテージが一気に挙がった。


 バブリンの肺に力が籠り、大量の吐息が口から吐き出された。



 「ステージ終了まで !3・2・1!!」




 ぷぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!



 「ゼローーーーっ!!」



 ぱぁーーーーーーん!!



 バブリンの膨らませた風船は、一気にネックじゅうが膨張すると派手なパンク音を場内中どころか外まで轟かせて、四散して破裂した。



 「う・・・う・・・おーーーーーーー!!!!!」


 ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち!!



 全部の身体中の空気を絞りきり、まるで空気が抜けた犬の空気ビニール風船のようにヘトヘトになった風船割り犬のバブリンに、場内から労いと歓声と拍手が一気に巻き起こった。


 「これぞ!!『世紀の風船割り犬』いや『風船の女王』バブリンちゃん!!

 いやはや!!これは凄いわんこだ!!

 このステージ時間はとっくに終わって、次のステージの準備が始まりますので、今しばらくお待ちください。」


 ステージや床に散らばった割れた風船を、スタッフが急ピッチで掃除するのを見ながらトレーナーの裕司から貰ったビーフジャーキー3本の『空気』が入って元気になった『風船の女王』バブリンは、トレーナーの裕司の顔をペロペロと舐めた。


 「くぅ~ん・・・」


 「よし、バブリンちゃん。今度から風船割りのステージは、バブリンちゃんに割る風船を膨らませて貰おうか?」


 ・・・ドキッ・・・!!


 「冗談だよ、バブリンちゃん!!はっはっは!!」






 ~この風船を3分間で膨らませて割るワン!?~風船を割りたくて割りたくてたまらない犬~


 ~fin~


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