『身体目当て』こそ真理である!
881374
俺がルールだ!【その3】『身体目当て』こそ、『多重人格SF』における真理なのだ!
「はーい、『
「はーい、『なろうの女神』でーす」
「──さあ、やって参りました、『KAC5』参加短編連作シリーズ、『俺がルールだ!』の第3話目でございますよ! さて、早速ですが、今回の『テーマ』は、一体何でしょうか?」
「──ズバリ、【これぞ決定版】多重人格SFにおける絶対のルールとしての、『身体目当て』よ!」
「へ? 身体目当てって……」
「実はこれこそが、『二重人格』とか『三重人格』とか『人格の入れ替わり』とか『前世返り』とか『記憶喪失中の仮人格』とか『人格の入れ替わり』とかいった、いわゆるラノベやSF小説でお馴染みの、『別人格化』と呼ばれる超常現象における、『真理』であり、『滅びの言葉』なの」
「ほ、滅びの、言葉?」
「つまり、こういった類いの作品の主人公になりがちな、中高生のオスガキって、結局のところ女性に対しては、『身体目当て』以外の何物でもないわけでしょう? だったらその女性の中身がどうであろうが何も関係ないんだから、たとえ『二重人格』であろうが『記憶喪失中』であろうが、誰か別の男と『人格が入れ替わり中』であろうが、別に構わないってことなのよ。──そう、男なんてしょせん、ヤレればいいのよ、ヤレれば♡」
「そ、そんな? ヤレればいいって、そんなことはありません! 中高生の男子の方の恋愛感情は、もっと純粋なものです!」
「そう、純粋にヤリたいのよ♡」
「ちがーう!!!」
「……あのね、あなたがそんなふうに思ってしまうのも、ラノベやSF小説が文字媒体だからなのよ。するとどうしても『人間』というものを、中身──すなわち、『人格』で捉えようとするでしょう? それゆえに『人格の入れ替わり』なんてけしえあり得ないことが起こって、人物の内面描写がまったくの別人のようになったとたん、読者の皆さんも何ら疑いなく、肉体的には微塵も変化は無いというのに、まったく別人になったかのように捉えてしまうわけ」
「そんなことありません! 読者の方だって、ちゃんと小説全体を読み込み完全に理解された上で、個々の人物を捉えられているはずです!」
「あら、そうかしら、『なろうの女神』さん?
「──ちょっ、いきなり何を⁉」
「え? どうかなされましたか、『なろうの女神』さん?」
「だから、やめてくださいってば、『なろうの女神』はあなたなのであり、
「そうよね、おそらくほとんどの読者の方が、混乱なさったでしょうね。場合によっては、冒頭部から読み直された方も、いるかも知れないわよね? ──もしもこれが漫画とかアニメとかのように、常に私たちの『絵』が付いていたら、けしてあり得ないことなのにね♡」
「──‼」
「まさにこれこそが、『別人格化SF』のからくりなの。内面描写主体の小説だから効果的なのであって、他の媒体においては、それほどの効果は見込めないの」
「で、でも、漫画やアニメや実写映画等にも、ちゃんと『人格の入れ替わり』作品はあるではないですか?」
「そういうタイプの作品て、小説じゃないんだから本当は必要の無いはずの、『内面描写』や『いかにも説明口調の独り言や会話』が、やけに多いと思わない?」
「……あ。た、確かに」
「現実問題、誰か知り合いの男性がいきなり、『実は今の私には、女の子の精神が宿っているのよ?』なんて言ってきても、本気にする人なんていないでしょう? それはそんな馬鹿げた現象なんて起こり得るはずがないと信じ込んでいるからでもあるけど、もっと学術的に理由付けすれば、元々物理学においては、『人格至上主義』の文字媒体の小説とは違って、量子論等を中心とする現代物理学は言うに及ばず、遙か昔の古典物理学の時代から、『人格』とか『精神』とか『意識』などといったものは、あくまでも脳みそによって生み出された、人間という物体を動かしていくための『OS』のようなものに過ぎず、言ってみれば肉体の『付属物』でしかなく、けして人間の本質を表すようなものじゃないのよ」
「ええっ、人格や精神が、肉体の付属物でしかないですって?」
「つまり逆に言えば、肉体こそが人間にとっての本質と見なすべきなのであり、中身なんてどうだっていいのよ。──だって、別に二重人格や記憶喪失でなかろうとも、人の『性格』なんて、その場その場でコロコロ変わっていくのですからね、あたかも『別人』であるかのようにね? それに普段から、学校や職場において『公的な自分』をつくりあげている人なんて、普通にいっぱいいるんじゃないの? 果たしてクラスメイトや職場の同僚が、その人物のプライベートの場面を垣間見た時に、その別人ぶりに驚かずにおられるでしょうかねえ?」
「た、確かに、人がTPOに合わせて『自分』を使い分けることなんて、『処世術』における基本中の基本ですよね!」
「その場合、どちらが『本物』になるわけ? 『公的な自分』? それとも『私的な自分』?」
「い、いや、『どちらが本物』とか、言われても…………あえて言うなら、『どちらも本物』とでも、言うべきじゃないですか?」
「その通り! この例からもわかるように、『性格』などといった、その人の『中身』によって、その人を決定づけることなぞできず、結局は『肉体』や『顔』といった『外見』こそが、その人物の『アイデンティティ』となり得るのよ!」
「……うわあ、何という、夢の無い結論なの? つまり、『僕はあなたの外見に惹かれたわけではない! あくまでも中身に惚れたんだ!』というのは、真っ赤な嘘ってわけですね?」
「当たり前よ! 何せ男は、女に対しては、『ヤル』ことだけしか、考えていないのですからね!」
「もしそうなら、最近流行りの、多重人格や記憶喪失となることで、一人の女性の中にいくつも人格が生まれて、元々恋人だった男性が、それぞれの人格を相手に『浮気』をして、罪の意識に苛まれるなんて類いの作品は、まったく意味が無いということですね?」
「──うっ、いつになく攻めてくるわね、あんた? でもまあ、そりゃそうでしょう、たとえ二重人格であろうと、いざ事に及んだ時、何か違いがあるわけ?」
「……ええと、そりゃあ、女性のほうに、『反応』の違いがあるとか…………ちょっと、いたいけな十歳児に、何を言わせているのですか⁉」
「ほうら、まさに今、読者のロリコンお兄ちゃんたち、大興奮よ! たぶんほとんどの人が、あなたが十歳児であることを知らなかったでしょうから、突然の『幼女宣言』に、今頃色めき立っているわよ…………立っているわよ⁉」
「何で、二度も言ったし⁉ まあ、確かに、ちゃんと挿絵が無いことによる、こういった『叙述トリック』めいたことも、今回のテーマに合致していますよね」
「さっきの『反応』の違いに話を戻すけど、あなたって、『AV女優さん』を──じゃなかった、『女』というものを舐めているの? そんなの『演技』によって、いくらでも使い分けられるわよ?」
「ちょっ、そんな言い方をすると、『同一人物浮気型多重人格作品』って、まるで性悪ヒロインが、主人公をもてあそんでいるだけみたいじゃないですか⁉」
「え、違うの?」
「そりゃあ、違います…………よね?」
「私は結構、似たようなものだと思うけどね。そもそもこういった作品が流行りだしたのも、『アンチハーレム』作品が、予想以上に女性読者を中心にして支持が広がってきたものだから、同一人物に対して『浮気』をさせるという、もはや狂気の沙汰としか思えないトリッキーな仕掛けを施すことによって、女性読者の好感度を上げようっていう浅ましい考えでしか無いんだから、別に同情の余地なんか無いわよ?」
「……ああ、なるほど、一見浮気をしているようで、本質的には、『たった一人の女性に純愛を貫いている』わけですからね」
「『肉体こそが、人間の本質である』という、視点に立てばね」
「それでいて、多重人格状態や記憶喪失状態が解消することで、これまで慣れ親しんできた『人格』が消失することに対する、『切ない路線』も展開できますからね」
「ほんと、あざといわよねえ。究極的には、『同一人物』でしかないのにねえ」
「しかも男性読者に対しても、まさしく文字媒体である小説ならではに、内面描写が違ったら『別人物』扱いされるのだから、実際は女性キャラは一人しかいないのに、多重人格の数が増えるほどにハーレムが拡大していくという、いいことづくめなわけですよね」
「うんうん、まさしくあらゆる意味で、読者を馬鹿にしているわよね」
「……うう、確かに、否定できませんわね」
「ということで、読者の皆様におかれましては、『身体目当て』こそすべてと思し召されて、悪質な『多重人格SF』詐欺には、十分お気をつけられることを、切に願っておりますわ♡」
【補足説明・各『別人格化』の実現方法】
「ユング心理学で言うところの、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってきているとされる、いわゆる『集合的無意識』に何らかの形でアクセスして、『パラレルワールドの自分の記憶と知識』を脳みそに刷り込めば『多重人格化』や『記憶喪失時の仮人格化』を、『意中のクラスメイト等の知り合いの記憶や知識』を脳みそに刷り込めば『人格の入れ替わり』を、『戦国武将や異世界の勇者等の記憶や知識』を脳みそに刷り込めば『前世返り』を、実現できるってわけなの」
「ちなみに、上記の『前世返り』の実現方法を、異世界人に応用すれば、『現代日本人の記憶を有した』異世界転生のできあがりってわけ♡」
『身体目当て』こそ真理である! 881374 @881374
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます