剣と魔法のファンタジー小説が好きな人ならハマるはずです。ランキング上位に入ってないのが不思議でならない。
私はユーザー登録をめんどくさがって、今までしてませんでしたが、この作品の応援コメントを書くために登録した程です。
今までたくさんの小説を読んできましたが、エンターテインメント性も有り、メッセージ性も有り、良作、名作、傑作、何と表現すればいいか、とにかくもっと多くの人に読んでもらいたい作品だと思います。
設定がしっかりと作りこまれており、戦闘描写に緊迫感がある。キャラクターに個性があり、感情移入できる。完成度の高い、読ませる文章です。
この作品の更新を毎回楽しみにしています。
なろう完結版・読了。
カクヨム加筆修正版・読書中。
胸が熱くなり、心揺さぶられるダークファンタジー作品。
近年読んだネット小説のなかでダントツに大好きな物語です。
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1作目の「ゲル状生物」は文庫本1冊ほどの長さで読みやすいです。
人外転生ものとして、魔物としての姿勢を序盤にしっかりと描かれています。
ここで大事なのは『終始一貫して魔物の姿』であり『人化は一切しない』ということです。
もちろん動きは遅く、発声もできません。ゲル状なのだから当然です。
魔物のままの主人公はなかなか珍しく、個人的にとても好きな作風でした。
ゲル状生物に生まれ変わった男の地道な努力が実を結んでいく過程。
自らの特性を理解し、無謀なことはせず着実に力を蓄えていく堅実さ。
そして少女と出逢い、少しずつ愛情を覚え注いでいく様子。
甲斐甲斐しく世話をする魔物の姿には和やかな気持ちになりました。
丁寧にしっかりと描かれていく魔物と少女の関係性に、とても愛おしい気持ちを覚えて胸が締め付けられました。
種族の垣根を超えた『愛』の物語を、いろんな人に知ってほしいです。
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2作目の「戦禍の大地」は、150万字を超える大作です。
こちらは前作よりも残酷な描写が多くありますし、人々の生々しい関係性も描かれます。
百合(ガールズラブ)があるのはこちらの作品からです。
自然や魔物たちと共生していた長命な種族である『清廊族』は、あるとき別大陸からやってきた人間たちによって『絶対服従の首輪』を嵌められます。
それから100年以上にわたり奴隷として扱われ、尊厳を傷つけられてきた彼ら彼女らに、明日への希望はありませんでした。
しかし一人の少女が『特異な力』をその身に宿したことで、細く険しい道を拓けました。
元奴隷の少女たちは立ち上がり、人間へと反旗を翻しますが、この物語に容易な救いの道はありません。
彼女らにあるのは強固な意志。たゆまぬ鍛錬。諦めない心。
薄氷を踏む思いで困難な道を歩み続け、からくも勝利をもぎ取っていく。
少女たちはそうして懸命に生きて、前へ前へと突き進んでいきます。
清廊族、人間、魔物。
誰もが譲れない信念や矜持や誇りを持って生きています。
親愛、友愛、敬愛、偏愛、狂愛。
さまざまな愛情のゆくえにも目が離せません。
生きとし生きるものすべての物語を読んでほしいです。
一人ひとりが求め、願った未来を手にするその日まで。
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最初は『百合目当て』の軽い気持ちでしたが、チラ見した途端に興味を惹かれました。
これは「まずゲル状生物から入るべきだな」と読んでみたところ、主人公の生き様にぐっと引き込まれて、あれよあれよという間にどハマリしました。
私は普段ダークファンタジー作品をあまり嗜みません。
なんせ読後に心へのダメージ負いがちなジャンル(※個人的見解)なので、万全の態勢でないとなかなか手が出ないのです。
しかしこの作品には惹かれるものがあり、心にダメージを受ける一方で強い『熱情』を覚えました。
手に汗握り、胸が高鳴り、何度も涙腺が役目を放棄しました。
総じて殺伐とした世界なのにどこか温かく、登場人物はみんな一癖あり魅力的です。
主役脇役関係なく、誰もが生きていると感じられました。
読みすすめるなかでさらりと読み流す程度には、思わぬところに伏線が張られていることもありました。
あとあとどういうものだったのかと気付いたとき、背筋がゾクリとしました。
短期間ですっかりこの物語に惹き込まれ、寝る間も惜しんで読み進めた次第です。
それに群像劇ならではの、さまざまな場面の描写がとても良かったです。
清廊族と共にあるもの、人間に使役されるもの、永き時を生きて強大な力を得たもの。
魔物たちもまた多種多様な生態系に生きているため、一筋縄ではいかないことも多くあります。
人間たちはお互い争い合っているため、その中には当然、同じ人間に矛を向けるものたちがいます。
そんな彼ら彼女らの生き様もまた、心苦しくも眩しいものがありました。
誰もが『主人公』になれるだけの人物像が丁寧に描かれています。
いろんな立場の人の考えや背景を知ることで、より世界観に没入できました。
じっとりまとわりつくような不安感や焦燥感。
同じ清廊族であっても思惑に相違はあり、一枚岩とはいかない。
人間たちの国家間にある確執も、それらに属する人間を知ることで見えてくる。
いったいこの先どのように関係性が変化するのか。
話の『引き』が絶妙で、思わぬ展開には何度も息を呑みました。
先が読めないストーリーや、少女たちがさまざまな困難を打ち破っていくさまは爽快でたまりません。
そしてこの戦記を彩るものの一つとして、魔法の詠唱が挙げられます。
『清廊族』の伝承をもとに紡がれるそれはとても綺麗で幻想的で、一つの種族の長い歴史を感じられました。
長命な種族だからこその背景が、物語により深みを与えています。
丁寧に描かれる世界観。
魅力的な登場人物。
巧妙な伏線。
どれをとっても最高でした。
きっと私以外にも、心奪われる人がたくさんいるはずです。