恋、季節、それら一巡

 若山牧水の和歌に
『白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあおにも 染まずただよふ』とある。作中の彼女の心境に触れるにつけ思い出した。
 主人公とのはかない恋は、彼の胸に毒と痛みと腫れを残した。その甘美なるよすがを抱きながら、彼もまた旅だつのだろう。なににも染まらぬ心の遍歴へ。