主人公としてはそれまでと変わらないよう栞のやり取りを続けたかったところだが、そうはいかなかったところに本作のヤマがくる。結末は是非本作を実際に読んで確かめて頂くとして、栞が仲立ちする彼女の心境の描写は実にユニークだ。目立たないが読書に一役買う(近代に入るとカラフルでお洒落な広告も記載される)栞と彼女の教室内でのたち位置が重なっているのも良い。
ワタシ文庫ではなくワタシたち文庫。その意味を考えただけでもう一回泣けます。青春っていうんでしょうか、主人公の小さな勇気に胸打たれました。おススメです!
本を通して話が、感情が描かれていく様子が、読書好きにはたまらない作品です。自分のできる範囲で、自分らしく助ける主人公がいじらしく、また自分の力量を超えられない己の無力を噛みしめる、そんな実寸大の恋愛模様が読者を引き込みます。丁寧な描写で描かれるラスト。ようやくヒロインの表情が登場する展開と、西日の差し込む下駄箱の情景が、懐かしいのに思わずはにかみたくなる瑞々しさに溢れています。初々しい2人の後ろ姿が目に浮かぶ、優しい優しい物語でした。