第3話 二枚蹴り

前回のあらすじ!


過激な自然保護団体が乗った飛行機がジャングルに墜落!


そこにいたのはな~んと人食い人種だった~!


うわ~!オイラも食べられちゃうのかしらん~!?!?!?!?


文部省推薦!グリーンインフェルノ!好評公開中!


~ココカラホンペン~


 デスファクター行楽は震えていた。妻にも子どもにも言えぬ悩みを抱えていた。噺家を辞めて声優になろうとしている。数度の破門をくぐり抜け、汗と涙で掴んだ真打ちの座を捨てて声優になろうとしていた。


「あんた?思いつめてどうしたんだい?」


「いや、なんでもねえ。ずいぶんリキ入れて働いたなあって思ってな」


「あんたは良くやってくれているよ。おかげで鯛焼き屋も繁盛してるしさ」


「そうかい?いやあ、昔はひどかった。酒に溺れた毎日だった」


「あんた…ごめん…ごめん…」


「どうしたんでえ藪から棒に」


「実は…あんた…ゼニは…あったの…本当なの」


「ああん!?おめえ、どういうことだ!?」


「本当は…あんた拾ってきたの。何百両のお金…でも、それをそのまま渡したらあんたがダメになると思って……」


「じゃあ…あれは…本当だったのか……」


「あんた!離縁しないでおくれ!私のことはぶってくれて良い!でも離縁だけはしないでおくれ!」


「おまえ!この!……いや、良い。うん。おめえの言う通りだ。あのままゼニ拾ったって思っていたら俺はこうはなっちゃいねえ……ありがとな」


「あんた…あんた…!!……あんた、お酒…飲む?」


「ああん!?おめえ、俺は酒を飲みすぎて苦労かけたんだぜ!?」


「良いじゃない!あんた頑張ったよ!だから飲も?」


「いや、おまえが言うなら…そりゃ…飲んでやらんことないけど…」


「あんた!お酒飲みましょう!頑張ったあんたに飲んで欲しいの!」


「そこまで言うなら…飲むよ?俺は飲んじまうよ?」


「うん!飲んで!ほら、あたしが注いであげる!ほら!」


「おお、おおお、こぼれるこぼれる!よし、飲むぞ?本当に飲むぞ?」


「飲んで、グーッと飲んで…」


「……………………やめた」


「え……?」


「また声優を目指しちまう」


 しかし飲んだ!行楽飲んじゃった!!!!ググググググィーと!飲んじゃったからコリャ大変!

 デスファクター行楽の体からHANATARERU!デスファクター!デスファクターは死の因子!デスウイングは空を飛ぶ!デスクリムゾンはエコール製!!!!!!デスファクターは雑司が谷周辺からロシヤまで届き、全ての生命は口から緑色の汁をぶちまけデスヘブンした!!


 一体何がはじまるんですか!?!?!?!?


 声優養成所一日目がはじまるのだ!!!!!!!!!!!!!!!


 後藤少年は完全武装していた!2本のマチェーテ、4533546148634535本の投げナイフ、ロケットランチャー、153487/63272861734386413618631314発の大陸弾道ミサイル。これらの装備は全て堺を代表するスーパー「万代」で購入した!!!声優のレッスンを受けるだけなのにこれらの装備は必要なのか?必要なのだ!声優道は命(タマ)の取り合い!!勝者はこの世の全てを手にすることができる!!!!しかし敗者は!?!?!?命を取られて生まれ変わりすら拒否され、輪廻のどん詰まりで魂が消え去るまでさまようのだ!!!!!!!相撲と同じだ!!!!相撲だ!!!!人生も声優も全部相撲だ!!!!!!だからこそ武装する。相撲と同じだ。力士だってあのふくよかな体に槍や長巻を隠しているのだ。お相撲さんはすごいなあ!かっこいいなあ!お侍さんみてえだ!!!


「おいデスファクター行楽。この扉を開けるとはじまっちまうぜ」


「良いぜ後藤の旦那。あんたに救われた命だ。いつでもデスファクターを放出できるぜ」


「でも本当に良いのか?あんたにゃ嫁や子どもがいるんだろ?」


「へ!声優目指すにゃそんなの邪魔だ!」


「おめえ…まさか…デスファクターで!?!?!?」


「声優目指すって言ったら捨てられたの……」


「ごめんゅ……」


「良いってことよ!でもよ旦那!デスファクター行楽って呼ぶのはやめてくんねえか!もっとフランクに名前で呼んでくれや!」


「わかった行楽!」


「だから違うって!俺の名字は【デスファクタ】で名前は【ー行楽】って言うんでぃ!」


「【ー】ってどうやって発音するんだよ!!!!!」


「旦那!さすが声優を目指すってだけあるねえ!一発で言えたのは旦那だけさぁ!」


「ー!で良いのか!?割と簡単だな!ー行楽!!でも呼びにくいからデスファクター行楽って呼ぶぜ!」


「旦那にゃ叶わねアツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥイイイ!!!!!!」


 悲鳴こだまするは新大阪の雑居ビル1Fエレベーターロビー!!!!デスファクター行楽から非常に香ばしいパフュームがする!!!油だ!!!!デスファクター行楽の頭、背中、ぷっくりヒップをはじめ少しトガったハートも油でベロンベロンになっていた!!!


「ン、ングゥー!」


 白目を向いてひっくりかえる行楽!エレベーターがチンと鳴り!扉が開くとそこにはいたのだ!!!!声優を目指す人間ならどなたでもご存知だろう声優界の番人とも言える


【声優志望者絶対油責地獄男】


ザ・ヘル!!!!


 説明しよう!今!キミの頭の中に怖いオッサンを思い浮かべよう!それがコイツだ!コイツは超怖い!グリーンインフェルノに出てくる人食い人種の512倍怖いぞ!!!だって……あつ~い油を……声優志望者の全身にBUKKAKEることが仕事だから!

 ザ・ヘルは声優事務所の規模により増えていく。今、目の前にいるザ・ヘルは一人(するってえと、後藤少年が通おうとしている「(獄)ど根性声優養成所」は小規模だ。関西が拠点ということはそういうことなのだ。大抵の声の仕事はお笑い事務所に持っていかれる。しかし、関西拠点の事務所は多くある。みんな大好きなKOFシリーズの声優は関西事務所の方や関西小劇場の方が多い。著者であるポンチャックマスター後藤はKOFや関西ラジオのパーソナリティーをしていた人と仲が良かった。その人も色んなことを教えてくれた。「関西でもやっていけるよ。大切なのは常に自分を磨くこと」と教えてくれた。だから地方の人で地方に根付いた活動をしている声優事務所、養成所に行こうとしている人はまずは門を叩きなさい。その地域、その場所で声優としてやっている。それは仕事が集中する東京で活動している声優よりも凄いのだ。正直仕事は多くはないでしょう。その地方のローカルテレビやCMの声をやって生きている。アニメに出ることも吹替えにでることも少ない。しかし、その人達は確かな技術でその身を立てているのだ。東京で活動することだけが声優か?否!!!!!!!!!!その体!その心!その魂で演じることが声優なのだ!地方や都内は関係ない。激烈なるままにその牙を磨き、一つ一つの仕事を完璧にこなす彼らこそが本当の意味での表現者なのだ!!!

 「ノリで声優やってまんねん~!」そんな人もいて良いだろう。それはそれだ。需要があるならば芸能人やミュージシャンが声優の仕事をしても良い。それは求められた仕事だからだ。だからこそ、プロの声優は彼らが最強に強まった力で演技しているようにしっかりと演技をしようじゃないか。それが、声優だ。主役がやれない、他ジャンルの人間が!そんなことは思っていない。受け持った役に責任を持ち、それぞれが持つ役割を全うするのが声優なのだ。声優は憧れの存在、あなたの夢、誰かの未来の残骸である。しかし、それ以前に【職業】なのだ。社会人としてその責務を全うする。そこにはキラキラした夢の世界は存在しない。プロがプロとして与えられた役割を全うする美しさだけが存在するのだ)だけだ!!!!横目でデスファクター行楽をチラチラ見る。ビクビクと痙攣していてちょっとおもしろい!!!後藤少年は笑いをこらえながら問う!


「てめえ!ザ・ヘルか!?」


「如何にも!オーディションだけが命の取り合いと思っておったか!?」


「へへん!アニメージュで……見て知っていたぜ!!!!お前を倒さないと声優のレッスンは受けられねえ!」


「勉強熱心だな?だが……それもここまでだ~!!!」


ザ・ヘルはアッツアツの油を後藤少年にぶん投げる!後藤少年はただの少年だ!!特殊技能なし!!!性経験なし!!!!だが!!!!アッツアツの油よりアツい心は持っている!!!!後藤少年は全身でその油を受け止めた!!!!!!



「アッツゥゥゥゥゥゥゥゥゥイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!」


「ガハハハハ!声優になりたいか!?ならば俺を倒してみよ!!!」


「アツイ!アツーーーーーーイ!!!グ、グェー!!!!」


「クククク……苦しむのはここまでだ!トドメを刺してやろう!!!!」


「アツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥイイイ!ウワー!床の冷たさがより痛みを増幅する!アツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥイイイ!」


「死ね~!忍法・声優志望者油地獄!!!!」


 後藤少年・デスファクター行楽は死んでしまうのか!?!?志半ばにして!?!?甘えるんじゃない!声優道は甘え知らず!!!!甘えた人間から死んでいく世界なのだ!!!!故に!!!!甘えは!!!!!禁物!!!!!


「うおおおお~!喰らえ~!」


 声優力(チカラ)を拳に集める!後藤少年の拳は金色に輝いている。歩いていく未来は血の色に染まるだろう。しかし!!誇りある黄金色の拳の前では胡乱な未来など完全破壊!!!!!!!!やってやれ!やってやるんだ!やってやれ!人間はなんのために生きるのか!?声優になるためだ!!!!そのユメ!!!!アタイ!!!!!!!そのユメの先がとっても気になるョ!!!!!!


「死ねえ~!究極声優爆熱二枚蹴り!!!!!」


 ドゴォ!!!直撃した!!!足元に転がっていたデスファクター行楽に!!!!!!!!


「ケケケ~!どこを狙っているんだ~!!!!!」


「ヘン!俺は最初から!!!行楽をブチ蹴りあげたいと思っていたさ!!!!!」


「あの世で思いっきり蹴り飛ばしやがれ~!……ングゥ!」


 デスファクター行楽が小便を漏らしている!!!!いや!!!!漏れているのは小便ではない!!!!これぞ!!!!!純真無垢!清廉潔白!!圧倒的感謝!!!!デスファクターがデスファクター行楽のデス陰茎からデス噴出しているのだ!!!!!!


「まさか…!?デスファクター…!?死んだはずでは……」


「ああ!死んでたさ!!でもよお!!!ぽっくんは声優を目指している!!!」


「ど……どういう意味だ……!?」


「声優を目指す人間は……」


「人間は……?」






死 者 を 生 き 返 

          ら

          せ

          る

       でがとこ

       き

       る

       !

       」


「ぎゃああああああああああああ!!!!」


 ザ・ヘルは死んだ!デスファクターにその体を纏い死んだ!死ぬことは悲しい。ザ・デスも言うなれば社会人、会社員だ。嫁や子どももいる。子どもは私立高校への入学したばかりだ!!!マンションのローンも2840万円残っている!!!!しかし!!!その死に顔は!!!!なんともたおやかで!!!!幸せに満ちていた!!!


 責務!!!!!!!


 声優を目指す若者に殺されることが責務!!!!!!そんな悲しい宿命をザ・ヘルは恨んだことがあったでしょうか!?悲しんだことがあったでしょうか!?!?キミに問うておるのだ!!!!想像力を駆け巡らせろ!!!!ザ・ヘルは何を思って微笑み死出の旅に出たのか!?!?わかってくれ!!!!この思いわかってくれや!!!!!!


「グハ!?死んだおばあちゃんが……旦那ぁ!無事でしたか!?」


「ああ……お前が助けてくれた……」


「え!?じゃあ……この死骸は……!?」


「お前がやったんだ!!!この……人殺し!!!!!!」


「ヒエエエエエ!旦那!俺には妻も子もいるんだ!!!!警察には言わねえでくれ!!!」


 しかし!!!そんな願いも虚しく亜空間からポリスが現れる!!手に持っているのは電流が流れるトンファー【声優殺し】だ!!!!


「オー!ヒトガ!シンデルネー!!!???ヤッタノオマエラカ!?!?」


「僕ではありません!!!!!!!」


「デハ!?オマエデスカァー!?」


「あっしじゃねえ!あっしは断じてやってねえ!!!」


「ウソをつくなボケェー!!!!」


 後藤少年はデスファクター行楽を殴り付けた!!!!!!デスファクター行楽は!全身に這い回るアリを感じながら失神即失禁!!!


「オウ!コノオトコ!モラシテヤガル!!!!」


「おまわりさん!僕らは声優を目指しています!!!許してもらえないですか!?!?」


「ウーン!ワカッタ!!ボーイタチ!!セイユウハ!!ヒトヲ!!!4ニンマデキズツケテイイノ!!!マダ!ヒトリメカナ!?」


「はい!!!」


「オッケー!ガンバリナ!!!」


 そう言い残して警官は亜空間に戻っていった!!!静寂、静寂、静寂、このエレベーターホールにはザ・ヘルの死体ともうすぐ死体になるかもしれないデスファクター行楽、そして後藤少年だけが存在していた。


 エレベーターに乗り込み5Fを押す!!!!!この先には……今以上の強敵が待ち受けている!!!!!!でもねえ!!!負けへんねん!!!!!!だって……声優を目指しているから!!!!!!!


~次回予告~

はっけよ~い!!!!放火!!!!相撲と喧嘩は江戸の花!相撲と喧嘩は江戸の華!華*花!!!!毎日ちゃんこじゃ飽きちゃうよ~!ダメダメ!!!ちゃんこたくさんたべなさ~い!あ!キミはしかる力士!!!!!なるほどね!!!!!しかられるのなら食べよう!!!!美味しい!ちゃんこ美味しい!!!!!つっぱりちゃんこうっちゃりちゃんこ!ちゃんこ食べて稽古!!!ちゃんこ食べて稽古!!!!!!!

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声優を目指した時のお話し ポンチャックマスター後藤 @gotoofthedead

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