第2話 素首落とし

~前回のあらすじ~


キンカジュー


体長40.5~76センチメートル。尾長39.2~57センチメートル。体重1.4~4.6kg。尾は物に巻きつける事ができる。背面の毛衣は暗黄褐色や黄褐色、赤褐色などで、正中線が黒い個体もいる。腹面の毛衣は黄褐色。

★Wikipediaより抜粋★


~ココカラホンペン~


 やってきたぞ!新大阪登場!!片っ端から投げ散らすぞ!!!


後藤少年(後藤・フーベルハイン・ゴッドフェスティバル・篤人。チョッピリセンチな16歳。新聞のテレビ欄に書かれていた「声優募集!」の広告を真に受けて「声優になってこます。わしは声優になって好きなことをして行きていく。ユーチューバーや。え!?今は平成初期、まだDVDも出てねえ時期だ!!ユーチューバーってなんだ!?もしかしたら……徳川埋蔵金?)は新大阪の小汚え雑居ビルに戦いを挑もうとしている!!男の子だから!男の子だから!きっと可愛い男の子だから!!!ヨシ!武器はこの体!心!金属バット!手裏剣苦無ローストビーフのタレ!!!


「た!たのもぉー!拙者声優になるために来た!オーディションを受けるためのゼニ1万リラも所有しておる!声優にならせてく~ださい!」


「ヒヒヒヒヒィー!ポマイさんは命知らずだね~!ここには何があるか知ってるかい~?」


「声優になるための場所や!声優がある!」


「ケケケケケェー!ま~たバカが来やがった!その首を皇帝様に捧げてくれるわ~!」


 声優道は冥府魔道に繋がる獣道。声優を目指す人間は多いのにどうして声優は少ないのか?頭のいい諸兄等はそう考えたことがあるに違いない。その理由を説明しよう。声優になるにはオーディションに受かり事務所に所属せねばならない。しかし、そのオーディションでは、事務所が雇っている【首切り番人】の右目をエグり、事務所の首領たる「皇帝」に捧げねばならないのだ!!!ほとんどの声優志望者はここで首を刎ねられてしまうのだ……悲しいね……ウチも悲しいょ……悲しみの色、一人の色なら味気ないけど……二人の色が合わさったらどうなのかな!?合わせようよ!!!君のお父さんとお母さんが出会った時みたいに!!!合わせようよ!!!



海が……










泣いているょ!!!!!!!!!!!!!!!!!!



「これが下手投げじゃあ!!!!」


「グ、グェー!ヒヒヒ……小僧……やるじゃねえか……ほら、ドアを開けな……これからが本当の地獄だぜ……」


「うるさい!」


 踵一閃!首切り番人の頭は吹き飛び!!そこには割とサイズ感のある肉塊が転がるのみだった!!!


「やっとるけ!?」


 ガラッと音を立てて暖簾をくぐる後藤少年の目には!信じられない光景が広がっている!もう信じられない!何も信じたくない!地球に存在する資源に限りがあるってことも信じたくない!俺は今37歳でろくに働きもせずこんな文章を書いていることも信じられるか!全部ウソ!人生もウソ!君もウソ!明日来る鬼だけが本当!!!!!!


「よくきたきたきたきた(残響音)そこに腰をかけたまえまえまえまえ(残響音)」


「すげー!ヴァンパイアのアナカリスみてえだ!あんたがこの声優事務所の皇帝か!?」


「フフフフフフフフフフフフフ(残響音)まずは貴様のチカラを我に見せてみよみよみよ(残響音)」


「見せてみろって言われてもぽっくんはこれから声優を目指すんでち!声優スキルなんて持ってねえズラ~!」


「声優になるのに一番大切なのはのはのは(残響音)声優を目指す心だぞだぞだぞ(残響音)まあまずはこの男のオーディションだンだンだ(残響音)座ってまっていろいろいろ(残響音)」


「はい!」


 後藤少年は座った!なぜならこれはオーディションだからだ!オーディションとは皆様もご存知の通り「命の取り合い」DA!

 ヤるかヤられるかDO or DIEの世界が待っているのだ!声優志望者はまずはこの難関を突破し、養成所に入る。そこから先にさらなる修羅道が待っているとも知らずに……


「やめてください!これ以上は!死んでしまいます!声優になれなくても良いです!もう勘弁してください」


「ならぬ。貴様は声優を舐めた。本名さらしの刑に処す。ざまみよ」


 オーディションは審査員として君臨する【総統】、そして進行を務める【語り部】が仕切っている。オーディションの歴史を紐解くと寛永5年の10月に「第一回キミが声優オーディション」が開かれたと記録されたモノリスが正倉院にある。


 そこから現代まで年に数回開かれるオーディション。その度に地球の人口が激減している。なぜなら皆、死ぬからだ。この眼の前の男も夢半ばで死ぬるのか?後藤は侍の子ぞ。同じ夢を持つ仲間をみすみす見殺しにしてはならぬ。同じ志を持つ仲間を見捨てて何が侍か。


「語り部よ部よ部よ(残響音)次の課題に進みなさいさいさいさい(残業音)」


「御意。ふふん?ではデビルファクター行楽よ。貴様の最終課題はコレだ」


「か!勘弁してくれー!もう……両手が使い物にならなくなっちまったんだー!」


「ぬるい。声優は通常の1028倍の【声優極限鬼イカせ声】(イケボちから。イケボタグの付いている動画は基本的にヤバい。元声優の観点から言うと、子どもたちが草野球をしている状態で「拙者バリー・ボンズでごわす!グワッハハハハァ!今夜も【【マン】】塁ホームランで【【【マン】】】開でごわす!!!!!!なんて言ってる場合か貴様ー!あなたねえ、よその娘さんをねえ、拐かそうとしてはりまへんか?イケボ?それがか?テメエは鼻濁音や無声化を知っとるんけ?そんな鼻づまりみたいな音声で何がイケボじゃボケェー!並べ!おまんら…おまんらはそこに並びんしゃい!端的に言うが殺す!あのね、自分が大人になってね、自分の精子の成長先(娘)がね、そんなゴミボイスに惹かれたらどう思う?あとね、声優を舐めすぎなんだよ君たちは。良い声なんて機械でも出せるよね?我々声優は芝居をやっているの。わかっていらっしゃられますかねえ!?もうね、辛いよ。良い声=声優?ボケェー!ちがわいちがわい!)を発動できねばならぬ。貴様はせいぜい2.56倍だ」


「勘弁してください!家族に電話させてください!許してください!」


「では課題。声優極限鬼イカせ声を1028倍にせよ。できねば頭皮剥ぎの刑」


「ングゥー!」


 後藤少年は四万十川の澄んだ水面の眼差しでその様子を見ていた。人間の頭皮が剥がれるところを一度は見てみたいと思っていたからだ!!人の痛みはね~!非現実で最強に凄まったエンターテイメントなんだぜ~!


「時間切れだ」


「うわああああああああああああ!!!痛い痛い痛い!ングー!!!!!!」


 そこには頭皮を剥がされ、缶詰ホールトマトと見紛うデスファクター行楽が転がっていた!こんな行楽さんに誰がした!ピンクのおべべが真っ赤に染まる!後藤少年の瞳が真っ赤に燃える!


「ガハハハハハハハ(残響音)次は貴様だだだだだ(残響音)」


「ふむ?後藤・フーベルハイン・ゴッドフェスティバル・篤人?ふざけた名前だ。では貴様の課題もデスファクター行楽と同じだ。やってみせよ」


「やってやらあ!」


 瞬間!後藤少年の拳が光り!そして総統の顔面を撃ち抜いた!!声優志望者の86486634864345354135415341分の1の割合で!!!!!いるのだ!!!!!!このような!!!!!!!!【声優極限鬼イカせ声】を持つ漢が!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「なんだあ!?このチカラ……俺は……ただのボンクラ高校生じゃなかったのか……?」


「ハッハッハ!合格!合格ぅ!!!」


「どういうことだ!!!!」


「すまぬな。貴様のチカラを試しておったのだ。我がど根性声優養成所は生半可な声優志望者は入れぬ。真の【声優極限鬼イカせ声】を持つ人間のみが入所を許されるのだ。ヘボい人間が声優になれると思うか?才能のない人間が声優になれると思うか?成れぬのだ。ならば最初からこんな修羅道は知らずに生きるほうがよい。そのための優しさで厳しい選考基準にしておった」


 ビク!ビクビクビクーン!地面に転がるデスファクター行楽の命はまさに風前の灯!デスファクター行楽ははじめての高座、はじめての独演会、はじめてのたい焼き作りを思い出していた。これは走馬灯だ。彼の命はイマワノキワだ!助けようよ!人の痛みの中身を理解してあげるのが……人間でしょうが!この鬼畜どもが!!!人間のなあー!!!!頭皮をなあー!!!!剥ぐのがそんなに面白いか!ダメだぞ!?わかってくれたら良いんだ。ほら、頭を撫でてあげようか?優しく強くお父さんのように?甘えるんじゃないボンクラがぁー!!!!


「じゃあ……俺は……声優への第一歩を……踏み出したってことかい!?」


「その拳で掴みとったのだのだのだのだ(残響音)」


「拳が熱い……そして……感じる……何かを!!!」


「えらい!その【何か】が!」


「大切なのだのだのだ(残響音)」


「ングー」


「へへへ……ぽっくん……やっとわかったぜ。これは運命なんだ。新聞のテレビ欄で見つけた声優養成所に入るのは運命だったんだ。俺は……これで……やっと……何者かになれる!」


「甘い!貴様はグラブジャムン(インドのスイーツ(笑)ドーナツをシロップ漬けにした世界で一番甘いと言われるお菓子。では世界で一番甘いとされる瞬間を述べよ。制限時間は4秒!4、3,2,1……正解は!?「長崎屋?」せいかーい!!!!!!!)より甘い!声優という修羅道はここからはじまるのだ」


「俺……やってやるぜ……やってやる!でも条件がある!!」


「ほほう?なんだ?」


「そこに転がっている、デスファクター行楽も一緒に入所させろ!」


 後藤少年はデスファクター行楽がもっと大変なことになるのを見たかった!安全な場所で!安心しながら!人間が苦しむところを見たいのだ!この気持ちは誰もが持っている。しかし、出すのは憚られる。チンポや肛門と同じだ。いや、チンポは出して良いか。30代も後半に差し掛かると雑に出すよね。チンポ。


「良い良い良い良い(残響音)」


「むう……総統がそうおっしゃられるなら良い」


「ングー」


「へへ……デスファクター行楽……これから俺たちは……「なまか」だ!!!!!!」


 人は一人では行きていけない。サウンドホライズンはめっちゃ演奏隊がいる。それはこの証左である。仲間と手を取り合い、そして助け合う。そうすることで既に持っているポテンシャルを4167844186348586736倍に凄まらすことができるのだ。助け合い宇宙。


「では来週よりレッスン開始だ。気を抜くとあらゆる刑罰が待っておるから覚悟せよ」


「楽しみにしているいるいるいる(残響音)」


 こうして後藤少年は声優への道を歩み始めたのだ。これが地獄への一歩だと知らずに。しかし、彼ならやっていくだろう。おうさ、やってやるぜ。幾数億もの困難や涙がその道を塞ごうとも、正しき者には進める道がある。それが


お相撲道なのだ!!!!!!!!!


~次回予告~

ちゃんこ!どすこい!ちゃんこ!どすこい!ちゃんこ!どすこい!相撲じゃ相撲じゃ相撲じゃ~!ちゃんこは塩!ちゃんこは塩!塩分とって稽古稽古!ほらどすこいどすこい!ほらどすこい!どすこい!次回!第3話!「第41513345次世界大戦勃発!声優として俺は……人を撃つことができるのか!?撃ちたい!人間撃ちたい!バ、バラバラにシテェヨォー!」ちゃんこ食って稽古!ちゃんこ食って稽古!ちゃんこ食って稽古!!!!

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