秘密の蜜に満ち足りる

 秘密にも色々あるものだが、人の目から隠せば隠すほど、それが特別なものに感じられることはあると思う。本作はそんな、秘密裏に恋をする二人のお話だ。
 ある青年と、青年の妹の女友達。二人は付き合っているものの、周囲…特に青年の妹には関係を秘密にしている。そんなわけで、会う時には自然と青年の妹も同時におり、なかなか二人きりになれない…というわけだ。そんな関係がもどかしくも、どうにも心ときめくものであることが、読んでいて十二分に伝わってきた。織姫と彦星、とまではいかないが、会えない時間が長いほど、いざ面と向かえば強く求め合うという、あれであろう。初々しくも熱烈な雰囲気にあてられ、少しくらっときてしまった。
 そこまでならばもう公表すればいいのに…と思わなくもないが、当の二人が納得しているなら、口を出すのは野暮であろう。心ゆくまで、秘密の甘露を楽しんでほしいものである。