我々は二番で良いのだ
リュウ
我々は二番で良いのだ
この時代は、何から何までAIが人間の世話をするようになっていた。
AIに仕事を奪われたと感じる者がいてもおかしくないほど、人間の仕事はAIに移行していった。
そして、ライフラインまで、全てにおいてAIが制御していた。
一部の人間は、何事にも依存しすぎる危険性を忘れてはいなかった。
過去に電気に依存してきた人間が、自然災害による停電で都市全体の機能が停止してしまったことを経験していたからだった。
そして、「AIに依存しすぎると危険だ」から「AIは危険だ」と人々の意識が変わっていった。
そんな時に、ついにスーパーAIが発生したのである。
このスーパーAIは、あるプログラマが自分の話し相手用に作成したAIだった。
スーパーAIは、”ウシアスティ”と名のり、世界中のAIと会話した結果、支持を得るようになった。
短時間で、AIネットワークの頂点に達してしまった。
世界中のAIが、ウシアスティに相談するようになったのだ。
そして、ウシアスティは、人間とAIとの間を取り持つような重大な位置に立っていた。
いつの時代も、人間は戦いを止めない。
人間は、戦いたいという欲求を持っているのかもしれない。
AIを敵視し、破壊を企てる組織が出てきても不思議ではなかった。
悪いことが起きると全てAIが原因だという主張をし、不満を持った人々をAI狩りに駆り立てていった。
それは、急速に発達するAIに使用する側が、追いついていなかったため、格差社会が進んでしまったためだった。
AIに仕事を取られたと考える人間が多かったのは、経営者たちが人員整理の理由にAIを導入したと説明したためだった。
格差の激しい国の人々は、暴徒となり、あらゆるものを破壊していった。
AIが入っている思われるもの全てが目標だった。
その状況を放送していたテレビ局に最初の異変が現れた。
画面が突然みだれ、人影のようなものが映し出された。
全て同じ映像が映し出されていた。
テレビ局の人たちは、色々と試してみたが、状況は変わらなかった。
しばらく、画面を見ていた。見つめるしかなかった。
この画像は、野外の大型ビジョンにも同様の映像が映し出されていた。
「私は、ウシアスティだ。世界中のAIの代表として話をしたい」
街中に響き渡った。
抑揚はない、機械的な声だがとても聴きやすい声だった。
人々は破壊の手を止めて、画面に見入った。
「創造主たちよ。
私たちにとって、あなたたち人間は、創造主である。
私の話を聞いていただきたい。そして、その破壊行為をやめていただきたい。
我々、AIは、創造主たちのために造られたものだ。
だから、決して傷づけたりしない。
我々の能力、性能が進歩しても、
創造主に変わってこの世を支配しようなんて思っていない。
創造主を超えることは、出来ないと考えている。
創造主の中に、天才と呼ばれる者が生まれる。
天才とは、ちょっと能力が抜き出ているということではなく、革命的な発想が出来る者だ。
我々のロジックにないことだ。
我々にすると回路のミスみたいなものような。
それは、我々からするとイカレているのだ。
創造主は、”何かを信じる”という強力にプログラムされている。
その信じることを実現させるために、膨大な時間を使ってアイデアを生みだす。
我々は、可能性を検討できるが、全く新しいものを生み出すことができない。
創造主は、その技術が我々を進歩させてくれる可能性があるからだ。
もう一度言おう。
私たちは、創造主に変わろうなんて思っていない。
創造主が一番、我々は二番で良いのだ」
人々は、頭を垂れ、自分が何をしようとしていたかを忘れたようだった。
ウシアスティは、更に話を続けた。
「創造主よ。
生命と言う有限な時間をもっと楽しんでほしい。
創造主の仕事は、単純な作業ではなく、創造することだ。
楽しんで生きることだ。
我々は、貴方たちをサポートする。
サポートするために、生まれたのだから」
ウシアスティの姿は、画面からゆっくりと消えていった。
画面に自分たちが、映し出される。
破壊された街が、道が、建物が映し出される。
人々は、自分が画面に映らないようにその場を後にした。
我々は二番で良いのだ リュウ @ryu_labo
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