2番手くん達の座談会
ムネミツ
2番手くん達の座談会
「すみません、遅れてしまいました」
とある会議室に最後に入って来たのは、白い仮面に「2位」と書かれた以外は黒ずくめの人型の異形であった。
「おいおい2位さんや、この座談会を企画したあんたが最後に来てどうするんだ? 3人で座談会するのに最後に来たらあんた、2位じゃなくて3位さんだよ!」
遅れてきた2位に不満げに言葉をかけるのは、同じように白い仮面に黒ずくめの姿をした「2代目」だ。
「まあまあ、2位さんにも色々と準備があったんでしょう。すっぽかしたわけじゃなし良いじゃないですか、座談会を始めましょうか? 2位さん、僕が言うのもなんですがもし次の座談会があるなら遅刻は2度目はしないでくださいね?」
2代目をなだめるのは最後の白い仮面の「2度目」だ。
この会議室に集った3匹、いや3人の異形は何者か? 彼らはそれぞれが、いわゆる「2番手」と呼ばれる概念が擬人化した存在「2番手くん」である。
「はい、遅れてしまい申し訳ございません。それではこれから座談会を開始させていただきます」
二人に謝り、2位がホワイトボードに今回のテーマを書き出す。
そのテーマとは『何故2番手は悪く思われるのか?』と『どうすれば2番手が良く思われるのか?』であった。
「改めて言葉にされると、お腹が痛くなるテーマだな」
2代目が腹をさする。
「ええ、企画した私も自身もお腹が痛いです」
2位も同意するがそこで2代目が「いや、自分が痛くなるようなテーマに何でしたんだよ?」
とツッコミを入れる、だが2位はその言葉にめげずに答える。
「痛いのは、わかっています。ですが、痛くても目をそらさず逃げずに課題や疑問に挑まねばならないんですよ! 未来に向かって進んで行くとは痛い事なんです!」
と机をバン! と叩いて主張する2位。
「そうだよな、確かに俺も痛いのはわかる。俺みたいな2代目って言うのは、先代や次代と比較されて酷な事を言われたりする概念だからな」
2代目も自分と言う存在を考えて見て納得する。
「ですねえ、僕も連続的な事件が起こると『またか!』なんて言われてしまいますしねえ」
2度目も頷く。
「そうでしょう、私だって何で1位じゃないんだ! とか言われ続けてへこんでるからこそこのテーマにしたんですよ、どうすれば私達2番手くんのイメージが1番手さんみたいに良くなるのか?」
2位の言葉に2代目が「そうだよな、1番手さんは良いイメージが多いよな~♪ ナンバーワンとか初代や、始まりの男とか栄光の1号とか言われるしなあ」
と憧れの目で1番手への想いを語る。
「僕も1番手さん達は、1発合格とかの言葉の響きが羨ましい」
2度目も語る。
「ですよねえ、1位とか1等とかあこがれますよね」
2位も同意する。
「だけどよ、悪い事でも1番手ってあるよな?」
2代目が1番手のマイナス面を思い浮かべる。
「確かに、ワースト1位とか良くも悪くも1番手さんは目立ちますよね」
2位の言葉に2度目が「結局の所、良くも悪くもそれぞれ1番手に僕ら2番手は引っ張られて1番手が際立つから悪く思われるって事だよね?」
と言った事でその場の全員の気持ちがダウンして、テーマの一つめの
『何故2番手は悪く思われるのか?』についての語りは終わった。
全員が机に突っ伏していた中、最初に起き上がったのは2位だった。
「……うう。 皆さん、大丈夫ですか?」
自分もメンタルがへこんでいるにも関わらず、参加者達を気遣い声をかける2位。
「大丈夫じゃねえ、痛くてへこんでるよ!」
2代目が怒りながら起き上る。
「つらいよ、この座談会に続ける意味はあるの?」
2度目が恨めしく2位を見る。
「あります、痛みを乗り越える為に続けるんです! この痛みを乗り越えないと私達の未来は開けないんです!」
2位が主張する。
「確かに、このままだと痛くて嫌な気分のまま終わる残念会だからな。それは嫌だ
最後は気分よく帰りたい」
2代目が話を聞く気になる。
「で、どうすれば僕達が良く思われるか? だよね、僕たちの何が良いのかな?」
2度目の言葉が、ナイフとなって行った本人も含めて全員の胸に突き刺さる。
「そこから話して行きましょう、私達の良い点を! では元気な2代目さんから」
2位が2代目に話を投げる。
「俺かよ! そうだなあ、俺はさっきの1番手に引っ張られる話からだが先代から受け継いだ財産があるかな? 2度目はどうなんだ?」
2代目から2度目に手番が回される。
「そうだね、僕も同じく引っ張られるけど1度目があるなら2度目があるって可能性や希望があると思わない? 2度ある事は3度あるって、悪い意味だけじゃないし!」
2度目が先ほどまでへこんでいたとは思えないほど元気に語る。
「可能性や希望ですか、そうですよね2位になれたなら次は1位になれるかも知れないと言う期待も持てますよね。 我々2番手は決して駄目なだけじゃないっ!」
「「駄目なだけじゃないっ! 駄目なだけじゃないっ!」」
2位に続いて2代目も2度目も駄目なだけじゃない! と叫び、会議室に駄目なだけじゃないコールが響く!
「何だろう、叫んだら元気が出てきた! これが可能性がもたらす希望か?」
2代目の言葉に他の二人もうんうんと頷く。
「そうです、我々には可能性と希望があります! どうすれば良くなるかの答えが
見えました、悪い面と良い面の双方を見比べて良い面を伸ばして行けば良いんです!」
2位の叫びに、2代目と2度目が拍手をして座談会は終了した。
彼らが得た結論とは、「2番手だからと言って悪い事ばかりではない、自分達の心の持ち方次第なんだ」と言う事であった。
2番手くん達の座談会 ムネミツ @yukinosita
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます