この小説はいわゆる「社会派」の小説だと思ったのですが、とても多くの情報が矢継ぎ早に飛び出し、重厚感がありながらもすらすら読ませてしまうのはすごいと思いました。社会派小説はたとえ面白くても、往々にして堅苦しくなりやすいと思っていましたが、この小説では思い出したかのようにギャグを挟むので(ギミギミシェイクが頭から離れない)、その度に緊張が緩んで読みやすく感じました。この手の小説で笑いを取れるとは思ってませんでした。
あと、よくある社会派小説などでは、登場人物が男性ばかりでつまらないと感じることがありますが、この小説では主人公二人が女性で、個人的にはそれだけでも新しさを感じてしまいます。欲を言えば、もっと個人の内面を描く場面があってもいいのではと思いました。
読書メーターまで見に行ってしまったのですが、国際政治関係の本などがズラッと並んでいて驚きました。例えばですが、女性天皇の夫を「皇配」と呼ぶ知識などはどこで手に入れるんでしょうか? もし突然皇族がいなくなったら憲法上、内閣総理大臣も任命できないし衆議院も解散できないのでは、などと考えたことはありますが上手い物語を思いつきません。
この小説を知ってから何度か読み直していますが、その度に「この世知辛い現代にはギミギミシェイク天皇が必要」だという思いが高まります。しかしそれを現実にするのは、今を生きる我々にかかっているのでしょう。せめて皇居に「彩是」が作られることを願ってやみません。