夢と希望の転生ライフ 廃棄転生者人別帳

第1話 美容師 佐藤一斗

勇者　佐藤一斗

ステイタス

　鬱80

　妄想90

　散漫70

　記憶20

　狂20

戦績　転生後、敵の斥候をひとり殺し良心の呵責で心が折れて力を失った。

戦ったことなんてなかったんです。転生する前の世界は、日本でした。日本ってわかります？　ああ、知ってるんですね。よく日本人も来るんですね。みんな、よくふつうに戦えると思います。

転生した直後は陰気な顔の住人に祝福されて、ごちそう食べさせてもらって、女の子に囲まれて楽しく暮らしていました。

1週間くらいしたら、敵の斥候が見つかったっていうんで、すぐに連れて行かれて戦うことになったんです。剣を渡されたけど、そんなの使ったことないし、

そしたら相手が斬りかかってきて、すごく素早くて何度も切られちゃったんですけど、全然傷がつかないんです。この世界では勇者を傷つけることはできないって知ってましたけど驚きました。

相手は必死に斬りかかってくるんですけど、いくら切られてもいたくもかゆくもなかったんです。

そしたら周りのみんなが、「殺せ！」「やっつけろ！」って騒ぐんで剣を振り上げて振ったら、スパンって相手の身体が真っ二つになったんですよね。それを見て、速攻で吐きました。だって死体ですよ。内臓どっちゃり出てるし、思い出すとまた吐きそうになる。

その場にうずくまってしばらくじっとしてました。落ち着いてくると、今度は人を殺したことが怖くなってきて震えが止まりませんでした。

「勇者ではなくなってしまいましたね」

気がつくと周りには誰もいなくて、変なじいさんがひとりだけ横にいて話しかけてきたんです。言われて気がついたんですけど、確かに自分の「夢と希望」が30を下回ってました。そのうち元に戻ると思ったけど、あれは元に戻らないものなんですね。

「短いおつきあいでしたけど、これでお別れです」

そう言われて、ここに連れて来られました。