フクロウが僕らへと運ぶもの

作者 成井露丸

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★★★ Excellent!!!

木彫りの彫刻に挑戦した経験のある方って多いのでしょうか? 私は一度もありません。小中学校の授業で使ったきりです。

なのに不思議です。この作品を読んだ後、「そう言えば我が子の彫刻刀が探さなくともすぐ出てくる。何か彫ってみたいな」、そう思う自分がいました。

まさに作品に感化された瞬間です。そして、こうも思った。「出来る事ならば行ってみたいな。山間の工房に、木彫り教室に」と。

***

ここで一人の男と一人の女性が出逢います。彼らはそれぞれ心に深い傷を負っている。この二人の傷は木彫りによって癒されるのか?

二人がそれぞれ何を抱え何を期待しこの山奥にやってきたのか、ぜひご自分の目で確かめて頂きたい。至極の一作です。

★★ Very Good!!

 かつて夏目漱石は『夢十夜』で運慶の仕事ぶりを『土の中から石を掘り出すようなものだ』と表現した。
 本作での主人公は、フクロウを通じてなにを掘り出したかったのだろう。かつての自分の想いなのか、次にくるかもしれない出会いか。はたまたけじめとしての過去か。同席する女性のさっぱりした様子や、一緒に飲んだ茶の湯気までもが精密に浮かんでくる。
 私の心の中にも、削りくずで床の埋まった工房が掘り出された。

★★★ Excellent!!!

いやー、なんというんでしょう。ただときめきを感じた……とかじゃなく、ちょっとした切なさとか、清涼感とか、微かな暖かさとか……そういったものが混ざり合った、心地良い読後感を得ることができました。

単純に男女が恋に落ちる……んじゃなくて、こう、終始仄めかしてる感じなのがいいですねぇ。「あとは皆さんのご想像にお任せします」的な〆方も、短編の特性にマッチして見事です。ショートムービーの脚本みたいじゃ……。

さらっと会話の中でポーランドの伝承とか飛び出してきて、「剣崎、教養高えな……」とも思いましたが、それが全然嫌味になってないから素敵。私が楓子ちゃんだったら、ほうじ茶持ってフォーリンラブしております。

この作品についた「純愛」タグは、剣崎くんの過去に対する物なのか、それとも、二人の未来も暗示しての物なのか……そんな所に想像を巡らすのも、また一興なのかもしれませぬ。ほほほ。