「また会いに来たよ」

ちーよー

第1話 「また会いに来たよ」

 ……一番最初に言いますがこれは私の嘘偽りのない話である……



 ソファーに座り何気なくTVを付けている。音がないと落ち着かない。

 右手に握ってるスマホが意思を持ったかのように振動と点滅を開始した。



 22時10分 LINEを見ると未読が2件。既読にしたくない自分がいる。1件目に用事を簡潔に打ち、2件目はスタンプで隠すのが彼のやり方だ。



 未読無視したい気持ちと既読にして彼に会いたい気持ちとがぐちゃぐちゃに混ざる。器用じゃない自分が憎い。ここ最近はずっと自分が嫌になる。主導権を握れない恋愛なんて恋愛じゃないと私は思う。

 数秒なのか数分なのかLINEに映る彼のアイコンを見つめた末に親指をクリックし既読へと変えた。こんな簡単な肉体動作だけで既読に出来るのに、精神的疲労は私を蝕んでいく。



 最初からお誘いもあっちから。何処に行くのか決めるのもあっちから。何をするか決めるのもあっちから。

 身体目的の彼なのだから最初から大抵は決まっているけど。



 惚れた弱みなのか私は私を見せられない。偽りの私で接している。だって本当の私を見せたら彼とは会えなくなる事くらい分かってるから。



 彼はすぐに『運命』と言う言葉を口に出す。

 出逢ったのは運命。食の好みがあって血液型や星座の相性が良いのは運命。車のナンバーが君の何とかは運命、携帯番号が君と僕が出逢って何とかは運命……



 こじつけにも程がある位に運命と言う見えないけれど、あったら身を任せ流されたくなる言葉で私を縛る。



 遅かれ早かれ君とはこういう関係になるよ。

 彼に耳許で言われ半年前の初日に体の関係を持った。ここの相性が良いのも運命らしい。

 Hの後にIが来る。何て都合の良い事は私も期待はしてない。



 そこからは最初の話しに戻りループするだけ……



 ピンポン



 家のチャイムが鳴った。また私は偽りの自分に戻る。

 ドアを空けると精一杯、微笑んで招き入れた。


 私の頭を優しく撫でながら彼は軽薄な笑みを浮かべては、積み重ねた……罪、重ねた言葉を口にする。


「また会いに来たよ」



 私は今日も都合良く脳内変換した。



『恋っていうから愛に来た』



 …………

 …………




 ……って、言ってるようなメンヘラチックな女の子が私は好きです……

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「また会いに来たよ」 ちーよー @bianconero

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