何、この夢……

九十九 千尋

2019年 3月 7日に見た夢



 ※ これは、僕、九十九 千尋が実際に見た夢の話である……



  夢なので、色々おかしいけど、許して、ね☆



  あ、多少のホラー表現に気を付けてね。


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 男が映像を見ている。

 正しくは、男が映像を見ている状態のその映像を、僕は見ていた。


 映像の中の男が見ている映像の中で……ともかく、ビデオカメラで撮られたであろうその映像では、一つの部屋を映し出していた。


「I……Y……O……N……E……」


 部屋に響く、一文字一文字読まれるアルファベットは、その映像の中の音声である。そして、悲鳴と共に途切れたその映像は、冒頭から再生された。



 映像の中の部屋は、小さい寝室だ。

 部屋の照明が壊れており、明かりがつかないことを映像の中の人物が確認する。


 映像を見ている者にまで伝わる、確かな恐怖の……生理的に恐怖を感じさせる部屋である。この部屋で過去に何があったのか、それは映像の中で語られはしなかった。

 ただ、足の踏み場もないほどに、大きなぬいぐるみや薄汚れた毛布、書籍が床に散らばり、映像では不穏な想像を深めるばかりであった。


 映像の撮影者の荒い息使いが、映像に収められている。撮影者の恐怖が伝わてくるが、撮影者はそのまま部屋の奥へ……ベッドの傍まで来る。




 その時。




 どこからともなく声がする。

 機械のような音声で、アルファベットを一文字一文字、読み上げていく。

 その読み上げに合わせて、ベッドの上で何かが――映像の中の映像では何なのか確認できない。白い……あれは、花だろうか?――そう、白い何かが、一つ……また一つ……とアルファベットの読み上げに合わせて現れていく。

 撮影者の息がさらに荒くなり、撮影者は振り返った。


 そこには、黒い髪を胸まで伸ばした女が居た。

 目は髪で隠れ、手足はとても白い……部屋に入って来た時には居なかったはずだ。


 そして……

 ビデオカメラが床に落ちる。その衝撃で、映像の中の映像は止まった。






 その映像を、更に撮影してまで僕に見せていた男が映像に入ってくる。


「以上が、俺が入手した映像だ。この部屋に俺は行かなきゃならない」


 男は身振り手振りを交えながら熱弁する。


「あの部屋に現れるのはきっと幽霊だ。そして、読み上げられているアルファベットは、きっと犠牲者の名前とかだ。

 ……この映像で読み上げられていたアルファベット、あれはきっと……俺の恋人の名前だ。次は彼女が襲われるかもしれない。そうなる前に、なんとかしなきゃならない。呪いなら、呪いを、解かなくちゃならない」


 そう言って、男はいくつかの除霊グッズを取り出した。

 だが、どれも陳腐でありきたりで能力の無さそうなものばかり。


 お札は値札付き。

 小石はパワースポットで拾ってきたというが要するにただの小石。

 塩はスーパーで買ってきたのか、曰く高級な焼き塩。高級でもただの塩。

 赤子をあやすためのおもちゃ。他に身近な鈴がなかったのだとか。



「奴が何て言ってるのか、メモをとって、そして……呪いを……」



 そんな装備で男は件の寝室へと入っていった。





 映像で見たような、薄暗く不気味な部屋が、男が撮影しているビデオカメラの映像として映し出される。

 汚れた毛布にぬいぐるみが床にばらまかれ、そこら中に書籍が乱雑に置かれている。そして、奥にはベッドが一つ……

 先の映像の中の映像の撮影者と同じように、息は荒い。

 あらゆる除霊アイテムを使うが、一切効果はない。


 そして、ベッドに近づき、塩をベッドに撒いた……その直後、あのアルファベットを読み上げる声がする。


「Y……A……K……」


 男はメモを取り始める。


「I……S……H……I……」


 ベッドには、白い花が一つずつ咲いていく。


「O……O……I……S……H……I……」

 

 男が持つメモが、映像に映し出され、出来上がった単語が、映像を見ている僕の目にも映る。


「I……Y……O……N……E……」



「……YAKISHIOOISHIIYONE……? ……YAKISHIO焼き塩 OISHII美味しい YONEよね……??」



 男はベッドの上にハンドカメラを投げ出した。


「はあ!? ちょ、待てこら! 居たぞ、あの女!! 待て!!」

「ひぃっ!」


 突如、映像の中に黒髪の女性が組み伏せられる形で、ベッドの上の塩に押し付けられている。

 というか、ベッドのうえに出てきてたのも塩らしい。


「逃げんなよ、お前は今から俺と焼き塩を作るんだよ。……ほら、俺の持ってきた塩を舐めろよ」

「しょ、しょっぱいです……」

「おう、美味いだろ!?」

「焼き塩美味しい!」

「焼き塩美味しい!!」

 

 二人がそうして、その部屋で焼き塩を賛美する声と共に映像は、夢は終わった……



「焼き塩最高!!」



 最後に、二人が幸せそうにスーパーで売られている焼き塩の袋を持っている一枚絵で映像というか夢は締めくくられた。


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 今更だが、これは僕が見た夢である。


 いやいやいや、塩? 焼き塩? この夢ホラーじゃなかった?

 というか、幽霊じゃなかったの? ベッドの上に塩を生成するってすごい局所的な霊だな、おい!

 と言いますか、男は恋人居る言ってたのに幽霊さんを組み伏せてなんか若干暴力エロスを感じさせるのなんか嫌だしやめろぉ!! 


 ……失礼。正直、ちょっと取り乱しました。



 この夢を見て、僕が何を思ったか……では、タイトルを今一度読んでみて欲しい。



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何、この夢…… 九十九 千尋 @tsukuhi

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