魔女の瞳

小川貴央

第1話 眼下に広がる大絶景


「魔女の瞳」


浄土平~吾妻連邦の一切経山の麓に雄大に広がる

標高1600m付近の火山荒原と針葉樹林帯に

囲まれた平坦な湿原地帯である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ザッザッザッ、ガシャ、ザクッザクッザクッ・・・

急峻なガレ場を登りだす~

辺りは火山ガスの噴煙が昇る、有毒な亜硫酸ガスの

周辺は植物さえ生えない危険地帯である。


ゴオオォォォォ~~~~、ビュウウゥゥゥゥ~~~、


時折に猛烈な強風に見舞われ、吹き飛ばされそうに

なり、堪えながらの過酷な山登りである。

尾根伝いに山伏たちがホラ貝を吹きながら山岳修行の

隊を成していた。


ゴロゴロ~ッガンゴン! ブンッ!ビンーー~~ン!

強風に煽られた石ころが弾丸のように飛んで来る!

当たったら最期だ!ビンーー~~ン!!


いつの間に、一切経山と向かいの吾妻小富士の噴火口を

見降ろせるぐらい登って来た。


心臓破りの急登を終えると少しばかり平たい丘陵地帯に

なり、なだらかな斜面を更に進むと一本の木柱が立って

おり、頂上1948mと書いてあった。


だが頂上付近は平たい丘陵で下界が全く見えなかった。

「なんだ、せっかく難儀をして登り切ったのに360度の

大パノラマを期待してガッカリしたぜ」

と、呟きながら山頂の裏側を少し下って行った。すると、


「わあ!おおおぉぉぉーーー~~~!!!」


何と足元の断崖の急斜面の眼下には目が映えるような

コバルトブルーの火山湖がひっそりと広がっていた!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

余りの大絶景に息を呑み、言葉が出ない・・・



し~~~~ん、辺りは静まり返って風の音だけが

聴こえている~


ビュウウゥゥゥ~~~~~~~~~


満面の水を湛えた神秘的な火山湖は波一つ立てずに

静かに大きな口を開けているかのようだった。


感無量の絶景を目の前に、一時間は佇んでいたで

あろうか、ようやく我に返り辺りを見渡すと、遥か

遠くに、残雪が真っ白に銀嶺の蔵王連峰が霞んでいた。


「綺麗だぁ~~~~」

夢中でシャッターを何十枚も連写していた。


こんな素晴らしい大パノラマがあるとは全く知らずに

登って来ただけに、その感動は言葉に言い表せない!


帰路に着いて一切経山の火山湖のことについて調べた。

その火山湖に付いていた名前を見て、思わず感動の

情景が再び鮮やかに甦った!


その名前こそ~~「魔女の瞳」~~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

 魔女の瞳 小川貴央 @nmikky

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る