第4話
「それでは改めて……ハル様、おはようございます」
お腹に手を当て腰をおり深々とお辞儀をする
流れるように行われた一連の動作は美しいを通り越して優雅だった
顔を上げた後、見惚れている人に向けてゴミを見る視線さえなければだが……
「あ……えーと、おはよう……ございます」
「では、今日の予定から確認いたします」
そう言うと、胸ポケットからライトノベル位の手帳を取り出し予定を読み上げようとした所で手が止まった
「……もう一度確認のためお聞きしますが、ハル様はこちらの事を何一つ知らないのですよね?」
「あ、うん」
「わかりました。ちなみにですが、領土戦争も知らないという事ですね?」
「さっき話は聞いたけど、それが何かは知らない……です」
「敬語は使わなくてよろしいですよ。そうですね…………それでは実際に見ましょう」
「え、何を……」
「もちろん、領土戦争をです」
「……は?」
騒々しい音を立てながら吹き付ける風は少しばかり冷たく、上空から下を覗けば股下がスッと寒くなるが、寒さや恐怖をそっちのけで移動を楽しんでいた
「おおおおおおおおー!」
「はしゃがないで下さい、見っともないです」
グリフォンと呼ばれる頭が鷲で体がライオンに近い獣は上空100メートルを優雅に人を乗せ飛んでいる。意外にも人懐っこい獣で、頭を撫でると目を細めて甘えてくる
そんな姿とは裏腹に飛行速度は速く、まるでジェットコースターに乗っている気分だった
「はやえええええええーーーー!」
「耳元で叫ばないで下さい、私の耳が汚れます」
「いや、汚れるか!」
「とにかく、そのはしゃぎ様はやめて下さい。はしゃぐなら、一人の時か誰もいない時にして下さい」
「はーい」
リルの説教は耳の右から左へと流れていった俺は初めてのグリフォンでの移動を鼻歌交じりに楽しんでいた
移動して少し経った頃昨夜あまり眠れていなかったのか眠気が急激に襲って来た、ふと欠伸をすると、何だか更に眠気が増した様に感じて冷たい風とグリフォンの体温がやけに心地よく、いつのまにか眠ってしまった
「……様、ハル様起きて下さい」
誰かに肩を揺すられて、朦朧とした意識の中から徐々に冴えてくると、眼前端正な顔立ちのメイドがいた
「ふぁーー、あれ、ここは?」
「着きました、皇都ですよ」
欠伸をしながら、辺りを見回す
あれ、狼が立って歩いてる
あの人羽生えてる
あぁ、まだ夢か……いや、んな訳あるか!
「えっ!リル、あれ!」
「何ですか?」
「いや、狼が立って歩いてる!」
「あぁ、初めて見るんでしたね。あれはセリオンですよ」
「セリオン?」
「いわゆる、亜人。……人間とは似て非なる者達です」
「へぇー。そんな人達もいるのか……」
「では、早く降りて下さい。この子を預けるので」
「え、あぁ!ごめんごめん」
グリフォンから降りるとこちらを見ながら、まるで小動物の様な可愛い声で鳴いた
何この生き物可愛い!!!
思わずキュンとして頭を優しく撫でると気持ちよさそうに目を細めて、顔を近ずけて頬ずりしてくる、柔らかな羽毛が心地いい
せっかくだから名前でもつけようと考える
……よし!こいつ今日からポチって呼ぼう
うん、そうしよう!
「ありがとうな」
俺の言葉に反応したのか、小さく鳴いて返事をしてくれた
リルはすぐ近くにある小屋にグリフォン又の名をポチを預けて、すぐさま戻って来た
「では、行きましょうか」
「……おう」
向かう先は知らないが何が起きているかはわかっていた……つもりだった
異世界の領主も楽じゃない @kessyou
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