まるで、色鮮やかな絵物語を紐解くよう

美しく冷酷で謎多き『魔女』と、行方知れずの父を探して敵国の王城に忍び込んだ『歌姫』の少女。二人の突然の出会いがきっかけとなって、時計の針が進むように、小刻みに、ゆっくりと、物語の謎解きが始まる──

読み終えて、ほおっとため息が零れ落ちた。まるで、童話の中に迷い込んだような、残酷さと優しさに満ちた物語だ。

人々の装いや街や砂漠の風景が、目の前にふわりと浮かび上がる。そんな、簡潔ながら美しい言葉が散りばめられた文体は、この作者さまの大きな特徴でもある。

手に汗握る展開もさることながら、芽生えたばかりの淡い想いの行方も気になるところ。

絵本のページをめくるように、言葉の韻律を楽しみ、目に見えぬものたちの姿に思いを馳せながら、斬新なのに、どこか懐かしい『剣と魔法』の世界に、そっと足を踏み入れてみよう。