鋼鉄女子マネージャーが侵略者!?

新巻へもん

第1話

 第一卓球部に転校生の木山椎子が入部を希望してきた。しかも、マネージャーを希望という。木山は前の高校ではレスリング部に所属し無敗を誇っていたらしい。ゆるふわな風貌に反して、アンクル・レースを極めると対戦相手は全く身動きができなくなる。ついたあだ名が鋼鉄の女。なぜ、そんな子が第一卓球部のマネージャーを志願したのか謎であった。


 実は卓球部はもう一つある。第二卓球部。別に2軍というわけではない。単にできた順番というだけだ。とある理由から同じクラブでは活動できないと袂を分かった人で作ったクラブだ。


「ねえ。木山さん。うちでいいの?」

 第一卓球部部の部長である竹内未来に訪ねられても木山はにっこり笑って、

「はい。この高校にはレスリング部がありませんし、新しい環境で新たなことにチャレンジしたくて」


「マネージャーでいいの?」

「私、そういうのにもちょっと憧れてたんです」

 まあ、確かに見た目はバリバリのアスリートという感じではない。まあ、本人がそういうならと受け入れて1週間が経った。


 卓球部では部費から一部を拠出して部活後の憩いのひと時用にお菓子を買ってある。花も恥じらう乙女とはいえ、部活をするとお腹が空く。お菓子を食べながらたわいもない話をするのが部員の楽しみだった。今までは下級生が輪番で管理をしていたのをマネージャーの仕事ですからと木山が引き受けて初めての日、事件は起こった。


「えっ。なにこれ?!」

 お菓子を入れてあるロッカーを開けた部員が悲鳴に近い声をあげる。

「どうしたの?」

「ぶ、部長。これを見てください」


 指さす先を見た竹内の目に忌まわしきものの姿が入る。それはチョコレート菓子だった。問題はその形状である。なんとキノコの形をしていた。

「どうして? ありえないわ。そんな……」


 第一卓球部の部員は全員タケノコ派であった。卓球部が二つに割れた原因、人として存在を許容することができないキノコ型チョコレート菓子がなぜかこの部室にある。

「誰の仕業なの? まさか第二の……」


「私がいたしましたの」

 おっとりとした声で木山が言う。

「可哀そうな皆様方が本物のチョコレート菓子をご存じないと伺いましたので。この味を理解できないなんて、人生の楽しみを半分捨てているようなものですわ。さあ、一緒に真の道を歩みましょう」

 木山の声が陶然としてくる。


「くっ。転校生だと油断した。まさかあなたがキノコ派だったとはね。侵入を許すとはうかつだったわ」

 竹内は叫んだ。

「うふふ。抵抗は無駄よ。鋼鉄の名は伊達ではないわ。力ずくでも認識を改めさせてあげる」


「見損なわないで、あなたが鋼鉄と呼ばれるなら私の二つ名は鉄壁よ。この戦い負けられない。行くわよっ!」

 人生を賭けた戦いの始まりだった。


 

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