五月末でも七月並みの暑さになる今日この頃。クーラーの効いた涼しい部屋で過ごしたいと思う人も多いのではないでしょうか。
だからこそ、家にいながら冒険の気分を味わえる本作がおすすめです。
渡船の交通手段がありながら、あえて自作の船で島を渡ろうとする高校生ワタル。準備万端、自信満々で挑んだ結果に何が待ち受けているのか。
……えっ? タイトルから既に怪しいって?
いやいや、明るいノリに聞こえるところがミソですよ。読み始めてからもニヤニヤが続くので安心してください。
ツッコミ満載のワタルの語りや、リフレインが心地良い。
単体だけでも楽しめますが、できれば続編を全て読まれることをおすすめします。
どの冒険も第一回に負けない面白さですよ!
中学時代、友人と川にゴムボートを浮かべて遊んだ経験がある。私のボート体験といえばそのくらいだ。
主人公の無鉄砲さと楽観主義と愚かしさと、そして素晴らしい強運に挑戦欲。私は荒木飛呂彦先生の『スティール・ボール・ラン(集英社)』での名台詞を思い出した。
「(死者も出るであろう過酷な北米横断レースの主催者に、全員リタイアで失敗の可能性を指摘した記者に対して)失敗? なんのことだ? いいか良く聞け。真の『失敗』とはッ! 開拓の心を忘れ! 困難に挑戦することに無縁のところにいる者たちのこというのだ! このレースに失敗なんか存在しないッ! 存在するのは冒険者だけだッ!」
本作はまさに痛快冒険譚だった。
なお、イタチザメは英語でタイガーシャークという。小柄だが貪欲で獰猛な人食い鮫である。また、三十年ほど前に九州の沖合いでヨットから垂らされたロープに捕まって泳いでいた少女が鮫に食い殺される事件が実際に起きている。やはり主人公は強運だ。