第9話 僕と黒剣
その日から槙田先生は欠勤していた。あの時の、レールガンの着弾で死んでしまったのかどうかは分からない。
黒剣がサイボーグだっていうのも信じられなかった。両腕が義手だってことは確実なんだけど、その他の部分まではどうなのか分からない。あの時、黒剣に押し倒されてキスされたんだけど、それはもう暖かくてやわらかくて、本当の人間以外に考えられなかった。
「よう」
ポンと肩を叩かれる。
黒剣だった。
どうやら両腕は新品が取り付けてあるようだ。
「おはよう」
挨拶した僕の腕を取り、耳元でささやく。
「絶対にバラすなよ。貴様の弱みは幾つも握っているからな」
「分かっているよ」
恫喝するのは黒剣の得意技だ。
しかし、僕としょっちゅうつるんでいる訳で、クラスの中では当然のように、僕との仲が怪しいと思われている。
今日の放課後も科学部の部室に集う僕と黒剣。
僕は黒剣に色々質問するのだけれど、肝心なところは何も教えてくれない。
分かったのは、殺人事件の犯人は槇田先生だった事。動機は用務員の佐倉さんが槙田先生の魔法実験を目撃したから。
石膏みたいになった警察の人は二人とも命を取り留めたこと。
黒剣は、自衛隊の何か特殊な仕事をしている事。
でも、どうして槙田先生が僕を狙っていたのか。僕が何故貴重品なのかは頑として教えてくれなかった。
「国家機密だから」
何時もこれではぐらかされる。
納得していない僕に向かって指さす黒剣。
「さあ機材の準備をしておけ。今夜の天気は快晴。絶好の天体観測日和だ」
どうせ、フォトンベルトがどうのこうの、訳の分からない屁理屈をこねるに決まっている。でも、僕の心は彼女に釘付けなのは今も変わらない。
今夜、いい雰囲気になれば告白しようと思っている。しかし、僕より何枚も上手な彼女が告白させてくれるのかどうかは未知数だ。
僕は、こんな二人の関係が物凄く気に入っている。
僕と黒剣 暗黒星雲 @darknebula
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