蛇足

「……これで、良かったんですか?」

「あぁ」

ゆっくりとした足取りで現れた大男に向かって、グラディアは深いため息を吐き出した。男の名は、ヴェスカー。

「これだから嫌なのです、貴方のように嫉妬深い男は」

「構わん」

男のなんでも無いような口ぶりに、グラディアは苛立った視線を向けた。それすらも男は受け入れたので、彼女は諦めて背を向ける。

「約束通り、私も去らせてもらいます。それでは、お幸せに」

彼女は吐き捨てるようにそう口にすると、となりの部屋に置いてあった自らの荷物を背負った。荷物が、嫌に重く感じる。早く身体を休めようと、街の中心の方へと歩いて行った。残されたヴェスカーとシェリエットは、互いの目を見つめ合う。ふっと溢れた2人の軽やかな笑い声が、広くなった家屋に響き渡った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

解散 城崎 @kaito8

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ