君もわたしも星の子だった

胸がふくらむ、ということは、女の子が大人になる道中で訪れます。本作の主人公「みのり」は、そんな胸のふくらみが病的(と形容するのが正しいかはわかりませんが)になってしまった女の子です。

冒頭の、昭和から平成に移りたて、80年代末期の雰囲気の美しさ。
そしてみのりを襲った病的なからだの変化から生じる、登場人物全員……クラスメイトの男子に至るまで……の、心の揺れ動きの描写が丁寧で、丁寧で、読み手の心を揺さぶってきます。

彼女に対する想いと相関するように胸がふくらんでいく過程。圧巻です。
孤独を抱えた二人にとって、互いという存在が誰よりも大切に思えたのでしょう。お互いが大切で仕方がなくて、愛してやまないからこそ、この形以外に着地点はありえなかった。存在したのはシンプルかつ圧倒的な愛、だけだったのかもしれません。

普通なら考えられない選択。そこまでの道のりに圧倒的な説得力を持たせる筆者の力量に殴られた思いです。

忘れられない作品になりました。

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