第8話 魔女探偵襲撃事件 ~この素晴らしい世界に探偵を!~

 『探偵』はこの世の中に飽和していた。

 魔女探偵が溢れんばかりの探偵達に疑問を抱いた時には、既に『探偵』は粗製乱造され遍く世界中に散らばっていた。

 彼らは殺人犯の悪事を暴き、怪盗の犯行を未然に防ぐ。正義と義憤に突き動かされ、使命によって立ち上がる者。

 それを既存の言葉に当てはめるなら、ヒーローという存在が相応しい。

 『探偵』の地位は今や道楽や雑業の域を超え、国民的なアイドルとしての側面を獲得していたのだ。

 

 インドでは、周囲の人間のステータスを底上げする主人公カリスマ能力によって探偵役に適した人材を見つける探偵、『慧眼探偵』太田おおたきんぐの報道が常に行われている。

 オーストラリアでは、時間遡行を行う死に戻りループ能力によって怪盗の戦略を先読みし完璧な罠を貼る探偵、『完璧探偵』ルティスカ・ルーベンスが怪盗ダン・オウルを破っていた。

 イギリスでは、他者のステータスを覗き見る暴露ライブラの邪視によって変装をことごとく見破る探偵、『神眼探偵』流々るるしゅうがシャーロック・ホームズに勝るとも劣らない人気を博しているという。

 そして日本の北海道では、怪盗が使った手口をラーニングする事で対策を知り尽くす怪盗殺しの探偵、『簒奪さんだつ探偵』青馬あおば導子どうこがダークホースとして勢力を伸ばしつつある。

 ビッグネームを取り沙汰したところで限りは無く、有象無象の探偵に焦点を当てればさらに枚挙に暇がない。

 世に探偵の種は尽きまじ。今やこの地上は、大探偵時代と化していた。




異世界転生せいぞんせんりゃく、してマすね」


「はあ」


 太陽の光を遮るように、分厚いカーテンが周囲を取り囲む薄暗い部屋の中。

 かつてはマフィアのアジトとして使われていた僻地のオフィスで、魔女探偵ナヴィーニャとその弟子マユクニトはひそやかに囁き合う。

 マフィアの構成員たちが全て惨殺された痛ましい事件の後、現場であるこのオフィスは立ち入り禁止となっている。魔女はそんな公然の密室を雰囲気作りのためのアジトとして利用しているのだった。


「結論から申し上げればコトは簡単でした。かの『探偵』トいう肩書きは、異世界より訪れた住民全員が所有しているタグだったノです」


「え? ああ、はい。ええと、つまり『異世界人』とか『宇宙人』みたいな文脈で『探偵』っていう言葉が使われてるワケですか?」


「左様です。まさか単語の意味が丸ごと置き換えらレていたとは。なまじ我々もまた『探偵』扱いされてしまっていたセいで気付くのが遅れましたね」


「左様って……」


 羅漢らかん探偵という輩の暴行を受けて心身に多大な傷を負ったナヴィーニャは(本人が多大な傷を負ったと自己申告した)、心の魔女探偵ネットを用いて全国探偵リストの調査を行った。

 結果、藍鼠猫あいねずのねこ出現前と比較して実に17倍もの探偵の存在が証明された。その尋常ではない増加数に、ナヴィーニャは星猫撃破による世界リセット時に何者かによる干渉があったと推測。早速二百五十六色の魔女こまづかいを用いて探偵達の調査を行った。

 すると間も無く探偵に対する認識が世界レベルで改変されていることが判明する。偶然重大な事件に出くわし犯人を突き止めるというフィクションの探偵像はこの世界には存在しない。冴えない自営業として地域のために奔走する現実の探偵像もこの世界には存在しない。

 あるのは、圧倒的な異能によって善を尊び悪を滅ぼす、スーパーヒーローとして語られる『探偵』そのものの存在だった。

 彼らは『探偵』同士で切磋琢磨を行い、ある時は直接の潰し合いまで行って、己のささやかな自己顕示欲と正義感をひけらかしていく。

 それは明らかに異常の存在でありながら、世界にあっさりと受け入れられている。己の居場所に固執し続ける彼らは、豪胆で強かで、けれども繊細さを持ち合わせている面倒くさい存在──

 即ち、異世界転生者であると魔女探偵は結論付けた。


「探偵法とかねーよクソワロって煽っていた頃はまサかこんな事になるとは思いもしませンでしたねえ」


「どっちもどっちだと思いますけどね」


 マユクニトに背を向けてカーテンを眺めているナヴィーニャは、複雑な立場に置かれている己に酔っているように見えた。被害者意識かもしれないし、あるいは唯一世界の真相を知る賢者の気分かもしれない。いずれにせよ独りよがりであることに変わりはなかった。

 マユクニトはそんなナヴィーニャをせんせーと慕う一番弟子だが、決してナヴィーニャを妄信している訳ではなく、むしろ日常生活においては非常に厄介に思っている。

 雰囲気作りと称して渡された書類を適当にばら撒いて、マユクニトは話を進めるべくナヴィーニャへ問いかける。多分今のナヴィーニャは誰かに相槌を打ってもらわないと何もしゃべり出そうとしないモードだ。面倒なことこの上ない。


「異世界転生はまあ分かりましたけど。それがどうして何万人も来てるんです? ああいうのって一人で無双するのが普通なんじゃないですか」


「どうにもワタシ達の住まうコの世界が転生先としてポピュラーになっている様子です。まあ言語や生活水準が同等のとこに転生出来るのは実際楽でしょうとは思いますけど。あちらこちらの世界線からあれやこれやの異能を纏って、有象無象の所業を起こしては千差万別の末路を迎えていル『探偵』《いせかいてんせいしゃ》──いやまったく迷惑他なりませんね」


「まあ迷惑ですけど……せんせーって案外愛界心あったんですね」


「この世はでっかい宝島ですから、それを荒ラされて面白い気分ではありませんよ」


「荒らす側ですよねせんせーも」


「ワタシは地球の守護神ですけど???」


 どの口が語るんだろう、という懐疑の意味を込めてナヴィーニャを見下ろすマユクニト。

 魔女は皆一様に同じ姿をしているが、媒介魔術の材料として己の肉体を使うマユクニトには代謝と成長の機能が備わっている。故に彼女の体格は時々によって他の魔女とは異なる様相を見せているのだ。


「いや、そんナやたらと疑われても。言っておきますが、今回はガチでワタシ関与してませんからネ? 見てくださいこの清く澄んだ瞳、これが嘘をツく瞳に見えますか」


「見えますが」


 振り向いたナヴィーニャの白く濁った瞳孔は形を変え『嘘』の文字を象っていた。

 マユクニトの答えを聞いて満足した様子のナヴィーニャは、元のまん丸い瞳へと眼を矯正しなていく。


「よくできました。それはそれとシて、今回はガチで関与してないですリピート。ワタシはワタシ以外の探偵とかぶっちゃけ引き立て役で構わないんデすけど、そいつらが目立ち始めたら本末七転八倒じゃないですか」


「その傲慢傾向治さないとどっかで痛い目見ますよせんせー。でも確かにそれはそうですね。いくらせんせーが常日頃から意味不明とは言っても、一時的にでも自分が不利益を被るような脚本なんて作りませんよね。いつも大体ババ引くのワタシ達ですし」


「まるで人を暗黒大将軍みたいに」


「地獄大元帥でしょ」


 だんだんナヴィーニャの事が分かってきたような気がする。そんな気分にマユクニトは浸っていた。

 ナヴィーニャの本懐を思えばそれは決して褒められた思考ではないだろう。しかし、目の前の魔女探偵はそれを気にする素振りを見せないままいじけ続けている。

 二百五十六色わたしたちの思考は全てナヴィーニャには筒抜けのはずだが、いったいどういうつもりなのだろうか。本人の中で、何かしらの心変わりでもあったのだろうか? それを直接問いただすのはやはり無粋にあたるだろうか?


 To be, or not to beするべきか、しないべきかを迷うマユクニトの耳に、突然の轟音が響く。

 カーテンを開きちらと外を見るナヴィーニャが目にしたのは、巨大な人型ロボットが周辺の街並に火炎を吹きかけている地獄絵図だった。


「またか」


「またですね」


「コレで何度目の襲撃でしたッけ?」


「8回目ですね」


「じゃあソろそろ対策される頃か。追加武装考えないとですねえ。まあいいや。ケルマンデク、出番でスよー出番出番」


「よっしゃああッ!!!」


 ナヴィーニャが手を叩くと、背後から現れたのは二人の魔女。

 鮮緑せんりょく眼の魔女ハイウァピスと紺碧こんぺき眼の魔女ケルマンデクは、何処かから現れたかと思うと再び異空間の中に飛び込み、『探偵』の侵略に備えて作られた魔女探偵秘密研究所へと到達する。

 場面転換中のどこかでパイロットスーツに着替えた二人は、どこか古臭い様相をした電子回路で敷き詰められた通路を走る。やがて終点であるパイプに飛び込むと、その先にあった戦闘機のコックピットへと華麗に着地した。


「エメラルドスピナー、発進スタンバイOK! 発進!」


「続けて! サファイアスピナー、発進スタンバイOK! 発進します!」


 二機の戦闘機が歪んだ異空間の内部を加速して飛び立つ。

 それに寄り添うように現れたのは、真紅のブルドーザーと輝黄の新幹線だった。


「超CPUコンタクト、OK! ルビースピナー、オパールスピナー、オート並走モード!」


「相手は『神器じんぎ探偵』だ! 最初からロギアバロンで行くぞ!」


「了解! ロギアシグナル、セーフティ解除! アストロウィンド密度、8.75! ロギア・プリズムチェイン、全段直結……コンタクト! レディー!」


「GO! ロギア・プリズム! レェェェェッツ!! シグナル・チェインッッ!!!」


 四機のスピナー・ロギアがアストラル界より発進し、地上へ現れる。アストラル風を纏ったロギアはそのまま亜空間プリズムフィールドを展開し、見事な変形合体で四体合身を行っていったが、残念ながらその全貌を記すための実力が筆者に備わっていないため苦渋の決断によって今回は省略する。

 そして世界を救う究極合体ロボがフィールドから飛び立ち、地上を蹂躙する悪鬼に対抗する正義の戦士として今降臨した!


とどろく詠唱この身に受けて、輝け宇宙のエーテル・ライド!! 魔導錬装まどうれんそうロギアバロン、マテリアに降りて悪を討つ!!」


「出たなロギアバロン! 今日がお前たちの命日だ! この『神器探偵・Ⅳ』碧野みどりの鶴城つるぎの手で地獄に送ってやる!」


「地獄に行くのはそっちの方だぜ! 一撃で決めてやる! ハイウァピス、頼む!」


「了解! 左腕さわんコスモスカノン形態へ移行! ヘルメス・イクスチャージャー、充填100%! いけるわ、ケルマンデク!」


「よぉしっ! 貫け! パラケルゥーーース……バスター!!」


 巨大な砲台と化した左腕から極彩色のビームが放たれ、神器探偵の乗る人型ロボを飲み込んでいく!

 しかし、やがてその内から現れたのは無傷の人型ロボであった!


「なにっ、パラケルス・バスターが効かない!?」


「無駄無駄無駄! そんなフィジカル攻撃、いつまでも通用するか! このマープルmkⅢには新兵器スカーペッタ・バリアが搭載されていてね……貴様らの魔法を全て弾くのさ!」


「くっ、ハイウァピス! サンジェルム・セイバーは使えるか!?」


「駄目、アストラル・ニコラがまだ不安定よ! ノヴァ・アレイスター使用までには220秒かかるわ!」


「くっ、まさか、ランポとかいうエドガワーメカとの闘いのダメージが癒えていない時を狙って……!」


 連戦に次ぐ連戦により、ロギアバロンは無視できぬダメージを受けてしまっていた。卑劣な『神器探偵』は戦力の逐次投入を行う事で休息の時間を与えない作戦に出た! このままではロギアバロンといえと危ない! どうする、ケルマンデク! どうなる、ハイウァピス!




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「それはそれとして」


 ナヴィーニャは既にオフィスを脱出し、手にした杖に箒のように跨り滑空していた。

 マユクニトはそんな彼女の背後に座り込み、いわゆる2ケツの構図で宙を舞っている。


「コレだけ様々な異能を持った異世界転生者。その全員が元から能力者だったとは考え難い事です。他所から内に来るまでの間で、何かシらの手段で能力スキルを会得しているはずです。それが果たして神様だか存在Xだか聖戦士だかはわかりませんが、転生補助を行っている総元締めが居ルはずです」


 『探偵』は現在も増え続けている。魔女が視界の端で参照している『探偵』カウントアプリは、2分に5つの間隔で均等にカウント数を増やし続けていた。

 『探偵』の存在を迷惑の一言で切って捨てた魔女探偵は、元の大人しい世界を取り戻すべく手掛かりを求めて奔走してる最中だった。肝心の手段はまったくのノープランだが。


「羅漢探偵とか神器探偵とかいうのもそーですけど、なんか『探偵』ってやたら血気盛んですよね。ゲーム感覚とかいうのも違う感じがするし……アレな人がよく選ばれてるんでしょうか?」


「まあ可能性は無きにしも非ず。一番わかりやすいのは、この世界の情勢を娯楽として楽しんデいる上位存在が、面白そうなキャラクターを手あたり次第放り込んでいるコトですかねえ。あ、この場合の娯楽とか上位存在というノはこの小説そのものや作者読者とはまた別ベクトルの話なのでご安心」


「虚空に向かって話しかけないでください」


 ナヴィーニャはカメラ目線で注意喚起を行った。この小説はフィクションであり、実在する人物、団体、企業、その他諸々とは一切関係がなく、劇中で扱っている事柄は決して何らかの風刺を意図しているものではありません。


「まあ、ワタシも所謂『探偵』にカテゴライズされちゃってるんで、自分以外の探偵をとっちめることで売名しようとする『探偵』に狙われてるってのはあると思いマすね」


蟲毒こどくみたいですね『探偵』って」


「なマじ魔女探偵とかいうキャッチーな名前なのが目立っちゃうのかもですねえ」


「いいかげん探偵廃業してただの魔女に戻りませんか?」


「いやどす」


「いやどすじゃなくて」


「マヒャデどす」


 『探偵』に対する相談が、他愛のない雑談へと変わりかけていたその時。

 彼女たちの背後から、甲高い男の声が響く。


「ハーーーーッハッハッハッハッハァ!!!!! 見つけたぞ魔女探偵及びその弟子!!!」


 魔女探偵ナヴィーニャとその弟子マユクニトが振り向くと、そこには全身スーツを纏った怪人……もとい、戦隊ヒーローのような恰好をした数人が、街並みの屋根の上を高速で追いかけてきていた。


「この『戦隊探偵』タンテイレッドが、貴様らの、悪事!!! 捏造!!! 魔法と言う名の騙くらかしを白日の下に晒し、そして頂点探偵へと至る…………わかったか!? あ!?」


「『探偵』って頭おかしい人しかいないんですかね?」


「は? それ遠回しにワタシが頭おかしイとか言ってます? いいでしょうワタシの正気をあの馬鹿にぶつけることで証明してみせマすよ」


「せんせーやっぱり割とわかりやすい性格してますよね?」


 その場で反転したナヴィーニャは、天井を突くように杖を上下させた。まさしく杖は魔女の上空を彩るように薄紅色に染め、やがて薄紅の天蓋からは無数の光球が舞い降りる。


 蛍光けいこうの精霊ノーキュテミィアよ、

 綺羅きらめくきらめき如く舞い、

 淡光たんこう泳がせて夜闇を照らせば、

 興理きょうりいとまを執り成したまえ。

 降霊:蛍光精霊の轡テクツバマー・ランカンフォス・ヴァリーアル!!


 魔女が呪文を唱え終えると光球は鋭い槍のように形を変え、『戦隊探偵』を貫かんとばかりに光速で突進する。その間も絶えず光球は薄紅の天板から舞い降り続け、一条のレーザーのように殺到していくのだ!


「は!? ハッ。ハハハハ、フ~~~ン。なるほど魔女の魔法しかと見たりだが……それで私を倒すことはできまいよ~~~~~~~~~」


 タンテイレッドを名乗る赤スーツの男が腕を掲げる。間も無く紅色の光を纏いながら、彼の手の中にタンテイブレイドが現れた!


「私の剣技に感服するがいい!!!」レッドは剣を振るい槍を打ち払う!「しろ!!!」迫る光槍は横向きの雨の如く無数だが「してね いやマジでお願い!!!」レッドは難なくそれをやり過ご「ギャーーーーーーーーッッ刺さった腕!!!! タンテイブルー!!!! 助けろブルー! おい聞こえてるかブルー助けてブルー!!!!!」


「ウッキャーッ!!」


 レッドより二回りほど体格の小さい青スーツは、猿のような雄叫びを上げながら両手に構えたタンテイスピアで光槍を捌いていく! その様はまるで西遊記に名高い孫悟空のような卓越した様であったが、それを黙ってみている魔女でもない!


「恨みとか抱く暇もありませんけど、せんせーの邪魔は駄目ですからね!」


 マユクニトである!

 マユクニトは唇の皮を剥き取ると、分子構造を変革して藍鼠あいねず色の薙刀を形成した。その刃は明藍シアン色に輝き、稲妻と化して戦隊探偵へ降り注ぐ!


「キキキキーッ!!」


「は!??!?!? ずるじゃん お前それはズル!!!! 見てろよこんなズルズル華麗に回避してやっからよ~~~~~~あっ足!!!!! 足挫いたし クソ もうやだ イエローーーーーーーーーーー助けにこい!!!」


「フッシャーッ!!」


 ブルーの半分ほど体格の小さい黄スーツは四つ足で宙を舞い、猫のような唸り声をあげながら口元に加えたタンテイケンダマで稲妻へ立ち向かう! その様はまるで……以前に猫概念を使い過ぎたせいで例えに使うべき猫発想が尽きてしまったが、ともあれ素晴らしい猫のような身体捌きであった!


「フン!! ブルーとイエローの人海戦術にかかれば、魔女ごときものの敵ではないということよ~~~~っ わかった!?」調子を取り戻したレッドは剣の刃を折り曲げる、すると「近代科学パワーを思い知るがいいよ!!!!」なんとタンテイブレイドはタンテイデリンジャーに変形! レッドはデリンジャーの引き金を引き魔女へ銃弾をBANG BANG BANG!

 しかしその銃弾は魔女の身体をすり抜ける! トンネル効果か? いや! レッドが撃ち抜いたのは魔女の幻影、そこには既に何もいないのだ!


「なに~~~~っ小賢しいマネを~~~~っ!! このレッドから逃げ隠れするとは……ビビったのか!? ビビったな! つまり私の勝ちということだよ!!! レ~~~~~ッドッドッドッドッドッドッド」しかし……「あ 待ってね その流れはよくないからね 待ってね 待ってv」「やだv」「クソv」


 おお、見よ! いつの間にかレッドの背後に立っていた魔女探偵ナヴィーニャが手にするのはタンテイブレイド……いや、それを更にパワーアップさせた強化版! タンテイスラッシャーである! なんということか! 戦隊探偵が手にするべき強化アイテムを、如何なる術によってか魔女は先に手にしているのだ! 関係者暴露リークか? 早期購入カタログバレか? 否、そのどちらでもない!


「なんだその武器はァ~~~~~~!?!?!? 知らないぞ!!!! インチキか?!」


「インチキもクソも。コレは貴方がたの武器を見て、たっタ今錬成したモノですよ。相手の手法を観察し、とりワけ良い技術は盗み出す。それが正しい探偵像というモノですよ、フフフフ」


「か 怪盗じゃん!! それ怪盗の手口じゃん!!!! 探偵じゃないじゃん!!!! あ!!! ウェイト 待てよ 待つんだ それで私を攻撃すると…… 一般市民を盾にするぞ!!!!! いいのかなァ~~~~~???? 一般市民!!!!」


「タンテイスラッシュ!!!!」


「ゲボハバ~~~~~ッックソがァ~~~~~~~~!!!!! ブルーとイエローは何やってやがんだ!!!! レッドの危機だぞ!! 助け……助けなさいよ!!!」


「キキキキーッ」


「ニャニャニャニャーッ」


 無論ブルーとイエローもただ手をこまねいていた訳ではない! しかしマユクニトの放つ電撃と自動で飛来する光槍の攻撃は苛烈! レッドまで手が回らないのだ!


「クソ~~~~~魔女!!! 何数にモノを言わせてやがるんだ~~~~~~ おのれ……正義が負けるはずねえんだよおお~~~~~~!!!!」


「ちょっとこの人キャラ濃すぎなイです? ワタシ芸人大会やりたいワケではないんでアレなんですけど……一般人相手にミステリアスおねーさんムーブしたいンですけど……」


「来てくれ……グリーーーーーーーーーーーーーン!!!!!」


 そしていよいよタンテイグリーンが……タンテイアックスを引きずりながら、街並みの中を駆けてきた! 背丈はレッドより高いが体格はほっそりとしており、何よりもその身のこなしは疲弊した中年のそれなのだ!


「はあ、はあ、はあ、ま、待たせました!」


「グリーーーーーーーンこいつらを殺せえぇぇぇぇーーーーーーーーーー!!!!! 殺さないと……娘がどうなるか分かっているのかーーーーー!!!!」「タンテイスラッシュ!」「ギャーーーーーーーグリギャーーーーーーーー!!!!」


「へえっ、へえっ、へえっ」


 グリーンはタンテイアックスを手に屋根の上を飛び回る魔女達を見上げ……見上げ……どうしろと言うのだろう!? 明らかな超人の戦い! 介入の余地がないのである! しかしそれでもグリーンは必死に壁面をよじ登り手近な民家の屋根へと到達しようとしていた!


「くっクソ~~~~~このままでは……死!!! やむを得ない……みんなーーーーっ!!! 探偵戦隊に力を分けてくれーーーーっ!!!」


 戦隊探偵……いや探偵戦隊? ともあれ戦隊としての矜持に固執するレッドは全国の子供達から力を頂こうとしていた! 忘れてはならない! 彼もまた異世界転生者であり、異能チートスキルを得た者の一人!

 彼が持つ異能、その名は正しく活力吸収おうえんパワー! 彼を慕う者から少しずつ活力を得る元気玉メソッドのスキル! 友が多いほど力を増す、王を志す者の必須スキルである!

 然して彼は人格的に到底善人とは言えずこの能力を持て余していた。そこで彼が思いついたのは、ヒーローに扮装することで子供達の支持を得る戦法。予め世に存在する『ヒーロー』の枠に自らを置く事で、特に自分のことを知らない子供達をも己を慕う対象とする発想の逆転である!

 然しその名の通り活力吸収おうえんパワーは相手の活力を奪うため……今、まさにこの時全国の子供達が謎の昏倒事件を起こしているのだった! 欺瞞!


「解説が長スラッシュ!!」「ギャバッギャース!!! おま、回復した隙から斬るんじゃ」「ッシュ!!!」「アバババーーーッ!!!! ち、ちから~~~~~……ちからをくれ~~~~~!!!!!! ちくしょう~~~~グリーン何やってやがるんだァァァァ~~~~~!!!!」


 グリーンは未だ壁を登ろうとして試行錯誤している段階であった!


「くっ、ま、待て魔女探偵!! 私が悪かった!! ここは、これからは共同戦線を貼ろうではないか!!」


「嫌ですケど」


「嫌ですけど!? 冷静になりまじょ!!! いいか? 私は正義の味方……つまり民衆の支持を得ているのだよ!!! つまり私と組めば探偵的に有名になれるし、テレビとかにもでれるよ!? でれるんだよ……すごいだろ……つまり一緒になるメリットがあるという事よ!! わかった? わかったね わかったらその腕をおろすべきだと思う おろしてください おろ…… おろせクソ!!!!! クソソ~ソソ~ソソ~~~~~」


「貴方だけで4000字も消費していルという事実に眩暈がしてきたので、さっくりトドメにします。いやほんと何やってるンでしょうね。ワタシが常識キャラみたいになってるのワケわかりませンのぷっぷくぷーですよ」


「へっ……へへへへ~~~~ いいですよ ならば私が今から逆転の手を思い付くだけだ~~~~!!!! まずそのタンテイスラッシュを交わす!! 後は強く当たって流れだ!! 完璧な作戦じゃん 才能が怖いわ ホホホホ~~~~~~ッさあかかってき」


「ウィッチ瓦割り!!」


「スラッシュじゃねえ~~~~~~~~~!???!??!!!?! グワーーーーーーッ死!!!!!!」


 タンテイレッドは爆発四散!! 後に残るものは何もなく、正義の探偵はついにその生を終えた。




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 沈む夕陽を眺めながら、四人の魔女は一堂に会していた。

 ロギアバロンはとっさの機転によって編み出した新技、トリスメギストス・インパクトによってマープルmkⅢを撃退し、平和な街を取り戻したらしい。

 タンテイレッドが倒れたのち、『戦隊探偵・青』と『戦隊探偵・黄』もまた流れで殲滅された。そしてとくに探偵でも何でもなかったグリーンはすごすごと家に帰っていった。

 長く苦しい戦いであったが、今宵も彼女達は一命を取り留めたのだ。


「いや急にそんないい感じの雰囲気出されても」


 マユクニトは唇に出来たかさぶたを撫でながら、憮然とした面持ちで一行を見つめていた。

 ともあれこんな戦いが続くのでは身体がいくつあっても足りない。色んな意味で。

 早くなんとかしなくては。そんな期待を込めて魔女探偵を見つめる。


「っべーですね。エルナ様でもファキラーシャでも分からないッてなるとマジにどうやって観測すればいいんでしょ。あの御二方が届かないならフォッククィノでも駄目だろうシ」


 状況は芳しくなさそうだ。

 魔女探偵は頭を150度ほど傾けて首を傾げている。エクソシスト顔負けの様相だったが、別段おかしい事は無い。魔女に取っては肉体など物理干渉を行うための外殻に過ぎない。破壊されたところで、いくらでも替えは効くのだから。

 一方でマユクニトは、己の肉体を媒介として魔術を発動するため、人間に極めて近い身体構造を保っていた。それは、人間への理解が徐々に浸透していくという事でもある。

 いまいち魔女達の常識に追随出来ないのは、己が人間の倫理思考に引っ張られているせいだろうか。そのことを考えると、マユクニトはなんだかとても寂しくなるのだ。

 人間でありながら、その精神性と能力を人間から逸脱させた『探偵』は、彼女にとっても極めて理解し難い存在だった。ならば、彼らの存在は、人間ではなく魔女に近いものなのだろう。

 それが彼らの故郷である異世界の常識なのか。それとも、上位存在による戯れの一環なのか。マユクニトは、堂々巡りの思考の中で、黄昏の時に浸っていた。


「よォ! オレはケルマンデクってんだ、ヨロシクな!」


「いや、聞いてないです。知ってます」


「ゴメンね、このコ元気すぎてワタシも困ってるの。ワタシはハイウァピスって言うの。よろしくね」


「だから、聞いてないですってば!」


 浸っていたいんだけどなあ。




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ナ「ナヴィーニャと!」

マ「マユクニトの!」

二人「★☆なぜなに☆★魔女探偵コーナー!」

ナ「本編でパッパッパパパパッパッパゥワ使い過ぎて既にヘトヘトなんですけど、いります? このコーナー」

マ「だめですせんせー。義務感で続けると何事も面白くなくなります。カラ元気でも元気です! 自慢の技、カラ元気です!」

ナ「カラミティソード!」

マ「ダメだせんせーが元気なさすぎてダジャレをいうマシーンになってる。くっかくなるうえは、私一人で……」

メ「フッ、オ前ヲ一人ニサセハシナイゼ……」

マ「あっ、貴女は……文字をいちいちカタカナに変換するのが面倒という、あの!」

メ「適当絡繰テキトウカラクリメカナヴィーニャ、定刻通リニタダイマ参上!」

マ「メカナヴィーニャ! 死んだはずじゃ!?」

メ「ドッコイ生キテル! フッ、細カイ事情ヲ問イタダスノハオヨシナサンナ」

マ「なんだコイツ……」

メ「マ、ワタシニカカレバコーナークライお茶ノ子サイサイヨ。全テ任セテオクンナセエ」

マ「なんだコイツ……

メ「ドウデモイイケド名前欄ガマメマメマメッテ並ブト豆岡高校校歌ミテーダナ」

マ「煮豆水豆」

メ「僕ラノ豆」

マ「豆岡高校」

メ「マッメェ!」

マ「いやマジで打つのもめんどいし可読性も悪いので帰ってください」

メ「カードマスターリムサリアノ封印?」

マ「思考パターンがモノホンと同じか!?」

メ「冗談だぜ。こんなこともあろうかと、既に流暢ボイスパターンを用意してあるぜ」

マ「うっわあ、読みやすいですけどメカ要素微塵もなくなりましたね」

メ「文章描写の欠点だぜ……それじゃあ、お便りにいくぜ」

マ「そのぜーぜー言うのは何なんです? 普通の魔法使いの真似?」

メ「ぜ。」

マ「ぜって……」

メ「東京都の『ディープ・ダーク・フィアもよろしく!』さんからのお便りだぜ」

マ「姑息な宣伝を…」

メ『今回、『探偵』という概念が出てきましたが、これってそれまで存在していた探偵とは別の存在なんですよね。これまでいた、魔女探偵世界における探偵はどうなったんでしょうか?』

マ「えっと、そうですね。地の文でもちょっとだけ触れましたが、元々いた探偵っていう存在は消滅しているみたいです」

メ「でも魔女探偵は生き残ってるぜ?」

マ「魔女探偵であるせんせーは、そもそも探偵という存在をほとんど逸脱しているので探偵にカウントされなかったそうです。けれども探偵は名乗っているので、結果として『探偵』の方にカテゴライズされちゃったみたいですね」

メ「自称と他称が混ざってややこしいぜー。しかし『』の有無で前探偵と新探偵を区別するのも面倒だぜ」

マ「まあ……今後、前探偵の方はほとんど出てこないと思いますのでどうか……」

メ「しかし、だとすると勿体ないぜー。怪盗の地位を零落させるために目撃者を皆殺しにする探偵の話とか、全部没になったのぜ?」

マ「それはちょっと惜しいと思っているので、もしかしたらなんかの形で出てくるかもしれませんね。というかそれも全然探偵っぽくないですね今思えば。一応魔女探偵世界は一般的な現代地球をベースにしているので……」

メ「藍鼠猫の時点で世界観ボロボロだぜ」

マ「まあカオスが売りですからね。4話あたりから完全にそういう方向に方針転換しましたので」

メ「まるでそれまではカオスを考慮してなかったかのようぜ……」

マ「適当に筆を走らせてたらこうなっちゃっただけなんで……」

メ「思考回路がショートすんぜんぜ?」

マ「回路が焼き切れているぜ……」

メ「勝負は始まったばかりだぜ!」

マ「まあ今回はそろそろ終わるんですけどね」

メ「ぜ!? 早すぎるぜ!」

マ「しょうもない魔女漫才を続けてたら文字数がいくらあっても足りないんですよ、分かりますか!?」

メ「まだスパロボTが面白いって話もしてないぜ!?」

マ「それやったら本当に個人サイトの雑記になっちゃうんでダメです!」

メ「上等だぜ!」

マ「帰れぇーっ!」

メ「ひーっ、もうおまけコーナーなんてこりごりだぜー!」

チャンチャン☆

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