こんっっっっなに魔法詠唱が格好良い小説ある?

当方RPG等のゲームでは術師ポジが大好きで、魔法系の技のエフェクトや呪文詠唱が好みの作品だと延々と戦闘を眺めていられる人種です。ずっと詠唱台詞というものは書き手側がいかに中二心をくすぐれるかの見せ所だと思ってきましたが、この小説の詠唱はよくあるただ『それっぽい』と感じるような、意味がどうとでもとれて雰囲気がカッコいいだけの単語を書き連ねている文章じゃないんですよね。しっかりとした魔法発動時のイメージを基に、各属性や威力に合わせた言葉選びをしているのがよくわかります。それが本当に『格好良い』んです。本文中に詠唱場面が出てくると、ついつい声に出して飽きずに何度も詠んでしまいます。はい、不審者ですね。

話のテンポが悪くなりやすいのか、ただでさえ呪文というのは省略されがちなのに、人気が高いバトル中心のファンタジーだと最近は利便性重視な無詠唱魔法が重宝される作品も多くなって、詠唱台詞の浪漫は大多数の人には感じられないものなのか…と寂しさや諦めを覚えていました。そんな中でこの小説を発見し、「そうそう、こういうのが読みたかったんだよ!!」と大興奮。理想の魔法詠唱ものにようやく出会えた感激はひとしおでした。創作を面倒に思う書き手も多いであろう詠唱文に、こんなにも真摯に向き合ってくれた人がいるとは…!考案した素晴らしい詠唱の数々を小説内で惜しげもなく披露してくれる作者さんには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

作中での新魔法開発の場面では、一つの言葉にも複数意味を持たせたり、全体の統一感を意識したりする詠唱文の作成過程が垣間見れます。攻撃魔法のとにかく火力を感じさせるような方向性の文章だけじゃない奥深さや、作者さんの詠唱文に対するこだわりが細部まで感じられてとても興味深かったです。

特に好きな詠唱は「討ち滅ぼせ、雷霆!」や「壊滅せよ!!」などの力強い命令形で〆るトンデモ火力な奴が多いかな。日常生活では全く表に出さない己のアレな部分を全開にできる感じが、詠んでいて非常に気持ちいいですね。同好の士はまず派手な戦闘がある第二部までは絶対に読んだ方が良いです。絶望的な戦力差のある敵に一歩も引かず、攻撃こそ最大の防御と言わんばかりに今詠める最強火力の魔法をバンバンキメていく主人公の最高にイカれた勇姿を拝めます。あ”ー自分もここぞという場面であんな決め台詞叫んでみたいわー。声に出すと己の活舌と肺活量に絶望しますが。いつかアニメでド迫力の魔法演出と共に声優さんが迫真の演技で詠んでくれたら、痺れる位格好良いだろうな~!と時折夢想して1人でニヤニヤしています。おまわりさん自分です。