後編 魔法使いが残した7つの道具
使者の村は悲惨な状態でした。大地には揺れた後についた地割れの跡も残っています。
「私は何をしたらよいでしょうか」
ウーファイアが使者の一人に尋ねると、彼は言いました。
「人々が我々の話を聞いてくれないのだ。まずは話を聞いてもらえるようにしてくれ」
そう言いました。
しかし、人々は自分たちのことでいっぱいで、他人の話を聞ける状況ではありませんでした。その為、ウーファイアはまず、人々に励ましの言葉を伝えて回りました。
「大丈夫ですよ」
ウーファイアは足が痛いという者には、痛みのあるところに手を当ててやり、心が痛いという者には、話を聞いてあげました。
「きっと、よくなりますから」
傷があるものには、手当てをしてやり、泣いている子供は、優しく抱きしめてあげました。
たったそれだけのことなのに、ウーファイアが来てからというもの使者の村の人々は落ち着きを取り戻し、使者の話を聞くようになりました。
「次に何をしたらいいでしょう」
ウーファイアが尋ねましたが、使者は逆に問いました。
「我々は次に何をしたらいいだろうか」
ウーファイアは考えました。
「そうですね。では、この村にどれぐらい食料があるのか見てきてください。それを確認したら、働ける人を集めます。そして村の片付けと、畑を耕す者に分けます」
「分かった」
使者はウーファイアの指示に従って動きました。そしてウーファイアも、村の人々が元気になるように、毎日のように励ましました。
また大地の揺れで亡くなった人の供養をし、人々の心に安らかさを取り戻す手伝いをしました。それから新しい畑ができると、そこにお祈りをしました。良い作物が採れますように、と心を込めました。
ウーファイアが来てから、村はどんどん良くなっていきました。ですが、ウーファイアが素晴らしい魔女だと分かると、人々は彼女にこんなお願い事をするようになりました。
「薬が必要な者が沢山いるから作ってほしい」
「いつ種を植えたらいいのか、教えてほしい」
「好きな人が、誰を好きなのか知りたいのです」
「次に何をしたらいいのか教えてほしい」
なんでもかんでもウーファイアに聞こうとします。
彼女はこれが嫌でした。だから、他の村に行きたくなかったのです。自分の力におんぶにだっこになり、自分で考えたり行動しなくなったりする。ウーファイアはそれを一番恐れていたのです。
しかし、人々に悪気はありませんでした。皆、彼女の人柄に惹かれ、大切にしたかったのです。そしてそのことも彼女は重々承知していました。
「前の村に戻らず、ずっとここにいておくれ」
老婆にそう言われ、ウーファイアは考えました。自分のいるべき場所はこの村ではありません。しかし、村人に大切にされていることも分かります。ウーファイアは何度も何度も考え、この村を出るために、七つの道具を残しました。
一つ、愛をはかる薬。
二つ、権力のマント。
三つ、癒しの如雨露。
四つ、導きの白き本。
五つ、手当の包帯。
六つ、閃きの
七つ、嘘と真の光る石。
そして、ウーファイアはそれを村に残し、元の村へと戻りました。
それから、ウーファイアが道具を残した村は発展しました。
彼らはそれらの道具を使い、村を大きくし、近くの村も吸収していきました。そしてその村のまとまりを県とし、三つの県が出来上がりました。そしてその三つの県をまとめるように、一人の王が立ち王国ができたのです。
そして、その国の王は言いました。
「我々の国は、ある魔法使いが残してくれた魔法道具によって、このような素晴らしい国が出来た。そのため彼女を称えて、この国の名をウーファイア王国とすることを、ここに宣言する!」
こうして、ウーファイア王国が誕生したのです。
自分の名前の付いた王国ができたことを、ウーファイアがどのように思っているのかは分かりません。何故なら、ウーファイアは元の村に戻った後、二度とその村からは出ませんでしたし、噂も聞きませんでした。
しかし、彼女はきっと喜んでいることでしょう。ウーファイアは自分の力を頼ることが嫌で、魔法道具を残したのです。それを使ってこの国が出来たことは、彼女の望んだことだと思います。
最後に、ウーファイアが残した七つの道具は、王国が出来た後消え去ったと言われています。ですが、残っているという噂もあり、それを探している人たちもいるようです。
しかし、もし見つけたとしたらその使い方に注意してください。使い方を誤ると、「災いが起こる」と言われていますから――。
おしまい。
魔法使いウーファイアの伝説 彩霞 @Pleiades_Yuri
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