第47話 まともに解読できません

『魔力感知』……魔力を感じ取れる力のこと。これがあれば魔法罠の対処法を考えたり、魔法を解除することに気がついたりできる。使い方を変えれば、人を探したりもできる。エルフなどの魔力が高い者は、生まれつきこの力に長けているとも言われている。この能力があまりに高すぎると、常に反応してしまうため眠れない夜が続くかもしれない。



「主よ、手紙だぞ」

「お、おう」


 使い魔のボーガニックが手紙を持ってきた。

 相変わらず幼い容姿のままなので、ちょっと焦った。

 ひょっとして、ずっとそのままなのか?


「うん? 差出人は諜報部か」


 諜報部は人間の動向を探ったり、組織の中に裏切り者がいないか調べたりする部署である。身内を疑うというのはあまり気持ちの良いことではないが、とても大切な役割でもある。


「しかし、中身が白紙のようだが……」


 秘匿のためか、中が白紙だ。

 諜報部は重要な時、よくこの手の手紙を出してくる。

 きっと、大切な用件か報告があるに違いない。

 試しに『魔力感知』をしてみると、手紙から反応がある。

 やはりか。

 私を試すつもりか?


「どれ……」


 いくつか顕現の魔法を使ってみる。

 こっちか?

 それとも、これか?

 いくつか試すと手紙に字面が浮き上がってくる。


「よし! どれどれ内容は――」


『魔王様、ご機嫌いかがです? 今、私達は常夏の島に来ています。見渡す限り青い海で心が洗われたというか、気が和んだというか、とにかく仕事の気分じゃありません。人間も気が緩みっぱなしで、こちらのテンションも爆上げです。お土産買って帰りますので、期待して待っててください。 諜報部一同』


 私は静かに手紙を揉みつぶすと屑かごの中に捨てた。


「ボーガニック」

「何だ? 主よ」

「この手紙出した奴見つけて、殴って来い!」


 魔王そっちのけで何楽しんでんだ!

 そんなに天国に行きたいなら送ってくれるわ!



―――――――――――――――――――

魔王様への意見具申コーナー

Q 魔王様も少しバカンスされてはいかがですかな? 爺より


A いや、うむ。休みたいんだが、うかつに魔王城を空けると変な奴がイラン気起こして下剋上とかやりかねんのでな。今しばしは無理だ。我もテンション上げたいぞ……。

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チート能力をもらいすぎて、まともに冒険できません。 熱物鍋敷 @yanbow

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