第46話 まともに確認できません

『テレパス』……超常的な力全般を指し示すスキル。目には見えない精神的な力を示すことが多く、相手の考えが読めたり、相手の気持が共有できたりする。このスキルを持つ者のことをエスパーと呼ぶ。髪が逆立っていたり、カバンの中に入ったりする者もいるとか。こんな力を持っていたら、まともには生活できない気もする。



 魔王たるもの、常に部下の悩みは知っておかねばならない。

 弱肉強食の魔族世界においては、素直な気持ちは口にすることができないもの。

 そういうストレスを溜めている者がいないか、きちんとチェックするのだ。


「さて、始めるか」


 意識を集中すると、他人の気持ちが流れ込んでくる。

 いわゆるテレパスというもので、相手の考えや気持ちがわかるのだ。

 この状態で相手に悩みを聞けばいい。


「おい、お前。何か悩みはないか?」

「えっ? 悩みですか? そうですねえ。特にはありません」


(最近、魔王様寂しいのか、よく話しかけてくるよな。面倒くさいなあ)


 相手の気持ちが流れてくる。

 いや、寂しくて話しかけてるわけではない。

 まったく!

 まあ、いい。

 次の者に行こう。


「おい、お前はどうだ? 何でもいいぞ?」

「実は最近、寝不足でして……」

(まさか魔王様のポエムがうるさくて眠れないとは言えないしなあ)


 ぐっ!?

 あれ、聞こえてたのか!?

 誰にも聞こえないと思ってたのに……。


「スマン、以後気を付ける」

「はい?」


 さあ、次だ。

 おっ?

 あっちの方から、強力な悩みの周波が飛んでくるな。

 どれどれ……


「ああ、魔王様……グローシアはお慕い申しております……」


(魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き、魔王様好き)


 窓辺に佇む悩ましげなグローシアの姿があった。

 あれは解決不可能だ。

 そっとしておこう。




―――――――――――――――――――――

魔王様への意見具申コーナー

Q 魔王様好きです。魔王様は好きですか? あなたのグローシアより


A そっとしておこう。

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