第45話 まともに準備できません

『職人技』……一定以上のクオリティーを維持し続ける者が所持しているスキル。これを持っているとベテランとかいぶし銀とか言われる。とにかくコツコツと経験を積み続けた者が持つスキルでもあるので、その姿勢が尊敬される。ただ同時にこだわりも強いので、他人に対し厳しすぎたりして効率が落ちることもある。現在の高速化社会では減りつつある貴重な存在。アニメーターの給料はもっと上げて欲しい。未来を考えて。



 目的地を定めたら大勢の魔物で取りかかる。


「魔王様、準備が整いました!」

「よし! では、始めるぞ!」


 早速、作業に取りかかる。

 一切、手を抜くことはできない。

 そのために1カ月も前から予定を組んでおるのだ。


「魔王様、この辺りはこれぐらいでよろしいでしょうか?」

「馬鹿者! もっと掘るんだ! これでは楽しくないだろうが!」


 もっと童のように遊び心を持つのだ。

 固い頭ではいい物はできない。


「魔王様、ここはどうしますか?」

「そうだな……こういうギミックはどうだ?」

「これは、どこに置きましょう?」

「そこにさり気なく置いておけ。きっと、驚くぞ」


 有らん限りのアイディアをひねり出す。

 エンターテイナーになるのだ。


「魔王様、もう完成でよろしいのでは?」

「まだだ! しっかり固めねば、崩れてくるであろうが! 塗装もせよ!」

「と、塗装もですか……」


 雰囲気が大事なのだ。

 相手の気持ちになって考えることが肝要だ。


「出来上がりましたな」

「うむ! 我も満足の出来だ!」


 納得の逸品ができた。

 これならきっと喜んでくれるに違いない!

 立派なダンジョンができた。


「ところで人間どもは、これを我らが作っているとは夢にも思わないでしょうな」

「思わんだろうなあ……」


 世界中にあるダンジョンの大半は、我ら魔族が作っているとは。

 あいつら宝箱の中身は勝手に復活すると思っているからな。

 ギミックだって、ちゃんと我らがメンテナンスしてるんだぞ。

 丁寧に扱え!




――――――――――――――――――――――――

魔王様への意見具申コーナー

Q ところで我々は何のためにダンジョンを作るのでしょうか? 一般魔族より


A もともとダンジョンは財宝目当ての欲深い人間を始末する場所であったが、近年は役割が変わってきたな。なんかこう、凝ったものが作りたくてな。ただのテーマパークみたいになってしまったな。

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