第44話 可愛ければコミュ障でも好きになってくれますか?
昼休みが終わり、教室に戻ってくる。
そこには、いつもと変わらない退屈な日々が広がっていた。
授業前だから当然だろう。俺以外のクラスメイトは全員座っている。濃野の後ろ姿が目に入った。濃野は魔王の存在について知っているのだろうか。その正体は知らなくても、存在くらいは知っているはずだ。女神憑きで知らないのは恐らく俺だけ。
なぜなら、女神である七罪が俺に危険を及ぼすまいとわざと知らせなかったからだ。
かわいい妹の思いを
窓際の一番後ろの自分の席へと座る。隣を見ると、ノアが机に伏せて眠っていた。
ノアが急にこっちの教室に来たのに、隣にノアがいることがそこまで不自然には感じない。むしろ、これが必然のような、そんな気もしてくる。
俺は無心で次の授業の用意をしようと引き出しに手を突っ込んだ。
…………ん?
すると、何かが手に引っかかったので、それを引っ張り出す。
そこには一通の手紙が。
なぜだろう。すごいデジャブを感じる。
千輝先輩からもらったラブレターまがいのあれのことを忘れようと頭をふる。
どうせまたいたずらだろう、と思いながらも俺は内心どきどきしながら、その封を開いた。
そこには異様なほど達筆な字でこう書かれていた。
『放課後、屋上にきてください。告白したいことがあります』
こ、これはあああああああ!!!!
マジか!? モノホンか!? マジなやつか!? モテ期か!? モテ期なのか!? 最近の俺来てるのか!? 告白って書いてあるしこれがラブレターじゃないわけがないだろ!! いやぁ、参ったなぁ!! 困ったなぁ!!
………なんて、ウブな諸君らなら思ってしまうことだろう。チッチッチッ。甘いな。俺は一度経験済みだぜ? これがラブレターじゃないことはお見通しだ。またくだらない何かに付き合わされてるだけだろう。
あれ? 下の方に小さくなんか書いてあるぞ………。
『
お前かよおおおおおおおおおおお!!!
隣を見て叫びたくなったけど、授業始まりそうだし、さすがに出来なかった。
ちなみに
………まぁ、要するに厨二病ネームのことだ。
なおさらラブレターという可能性はなくなった。ノアが俺の事を好きなわけがない。略してノア俺。ちょっと何言ってんだ俺。テンパって頭の中おかしな事なってるな。とりあえず落ち着け。そうそう。これはラブレターなんかじゃない。そうじゃないに決まってる。
ちらっ、と横を見る。
「…………っ」
「……………」
ノアと目がばっちり合ってしまいました。そして一瞬でノアが目を逸らしました。
あれぇ? これはぁ? どういうことだぁ?
………もしかして、そういう事だったのか……?
ノアは俺のことが………好き、だったのか………?
もう一度、ノアの方を見る。またしても目を逸らすノア。
………いや、ないな。これはいつもの反応だ。告白したいことってのも「ベルフェゴール聞いてくれ!! また新しい異能力を考えついたぞ!! お前にだけは教えてやる!!」みたいなことだろう。
ノアが俺のことを好きなんて。ハハッ。そんなの、……あるわけない。
◇◇◇
よく考えてみたら、放課後が始まる瞬間もノアは隣の席だから近くにいるわけで。そうなると一緒に屋上に行くまでが気まずいわけで。
帰りのホームルームが終わった直後、ちらりと隣を見るとノアがこちらを見ていた。今度は目を逸らさない。なるほど……。これは屋上まで着いてこいやぁ、みたいな感じだろうか。
ラブレターを出した相手と一緒に歩いて呼び出した場所まで行くなんて聞いたことも見たこともない。いやいや、ラブレターではないんだけどさ。たぶん。
俺は無言で立ち上がり、荷物を持ってノアの隣に立った。ノアは少しだけうなずいて、歩き出した。その背中を追って俺も歩き出す。
これがコミュ障コミュニケーションだ。
ノアの後ろを歩きながらも、俺は七罪に『少しだけ遅れるから、部室で待っててくれ』と簡潔にメッセージを送った。
すると、周りに誰もいなくなったあたりでノアが口を開いた。
「せ、先週増刊号だったから今週ジャンプないんだよな〜」
いやそこで喋んのかよ!! 屋上に呼び出す理由なんだよ!! しかも雑談にもほどがあるし!!
「そ、そうだな。ジャンプのない週はToL〇VEるダークネスのないジャンプスクエアみたいなもんだしな」
何言ってんの、俺。
「とらぶる………ダークネス……?」
ノアはきょとんとした顔をした。前に少しだけ教えてもらったことがあるがノアの買う漫画はノアの兄によって検閲されているので、健全な漫画の存在をノアは知らないのだ。
ちなみにジャンプも読むところを定められている。ノアの兄貴はとんだシスコン野郎だ。まったくけしからん。
「いや、なんでもない」
俺はかぶりを振って、今の状況を思い返した。
今俺は手紙で呼び出された相手と一緒に呼び出した場所へと向かっている。うん、おかしいな。なんか、違うな。普通じゃねぇな。まぁ、いいか。ノアはなんか楽しそうだし。
二人して無言で階段を上り、屋上へと刻々と近づいていく。
そして、ついにその扉が開かれた。
ザァァァァァアァァァァァァァァァァァ─────
「「…………………」」
そうだったあああああ!!!!
浮かれてて(?)忘れてたけど完全に雨降ってたああああ!!! アホじゃん!! 二人してただのアホじゃん!!
「じゃあ、行こうか……」
「いやいやいや待て待て待てなに雨ん中行こうとしてんだ!!」
「離せぇ!! 私が馬鹿みたいだろォ!?」
いや、どう考えても馬鹿です。
「今、馬鹿だと思っただろ!!」
「エスパー!?」
「違うわ!! 顔が語ってるの!!」
ノアは顔が真っ赤だ。
「いやでもさすがにこの雨で屋上にはいけねえだろ!!」
「いやだぁ!! 私は屋上に行くんだ!! 篠突く雨の中にしとど濡れる私が立ちすくむんだぁ!! そしてボンゴレファミリーの雨の守護者になるんだァ!!」
「一回落ち着け!?」
ノアのテンパりが最高潮に達していた。ぜぇはぁ、と二人して息を激しく吐いては吸ってを繰り返す。
「……大丈夫か?」
「…………うん」
ノアが小さく言って、小さくうなずいた。
「ここなら、誰もいないからさ。なんか俺に用があるんだろ?」
「そうだった………」
「本題を忘れてたのか!?」
「ぶっちゃけ屋上に呼び出すこと自体が目的だったから、特に……伝えることもないし」
「ないのかよ!!」
ノアはもじもじしながら言った。
ほっ、と息を吐いた。安心したような、あのドキドキを返して欲しいような複雑な気分である。
「じゃあ風邪引く前に戻るぞ。部室で七罪が待ってるから」
俺がノアに背を向けてその場から立ち去ろうとしたその時だった。
「待って」
ふと、右手に温もりを感じた。
ノアが俺の手を握っている。俺を制止させるために咄嗟に握ったのだろう。ノアはぱっと手を離して、俺の胸あたりに視線を動かして、口を開いた。
「嘘。
ノアは俺とじっ、と目を合わせる。
俺は思わず目を逸らしてしまった。
俺だって…………。俺だって、人の目を見て話すのは苦手だ。ノアも俺も究極の人見知り。でも、ノアはしっかりと俺の目を見ている。息を呑む。
これは、────もしかして、もしかするかもしれない。
本当に、………告白なのかもしれない。
こんな真剣な顔をしているノアの姿なんて、見たことがない。
ノアがゆっくりと口を開いて、その先の言葉を紡ごうとする。
「ベルフェゴール───。私は……………私は─────っ!!!」
俺はその思いを受け止めるように、しっかりとノアの目を見た。
そして、ノアがついに──その言葉を口にする。
「異世界に来てしまったようなんだ!!!」
「へ?」
俺の間抜けな声が、雨の降りしきる屋上へと消え去った。
妹のいないシスコンを救い出すことはできますか? 代瀬 @shirose
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