一癖も二癖もある旅の医者ラディアスが目を覚ますと、枕元には空色をしたタマゴが置いてあった。残されたのは他に「愛してください」の置き手紙。ラディアスはタマゴの持ち主を探そうとするが、獣人の暗殺者グラッドの襲撃を受ける。
その後ひと悶着あって同道する二人ですが、魔法を扱う青年は食えないし、殺気だってる暗殺者は意外と面倒見がいいしでそのギャップが気持ちいいです。二人で行動なんてできるのかと思いつつもうまくはまっている。そんな関係が好きです。ラディアスはあといくつ腹に抱えているんだ、と思いながら読んでいましたが、そんな彼にべったりするでもなく、見捨てるでもなく、グラッドなりの距離を取りつつ接していくのも好感が持てました。
開幕後すぐに表れる謎。追手。逃避。追撃。
息つく間もなく展開されていく話の中で、随所に散りばめられた専門用語。それらをどこかで説明されたわけでもないのに、物語を追って行くと自然に世界観と設定が頭の中に入ってくる物語の仕組みは、まさにファンタジーのお手本と言っても過言ではありません。
また、ストーリーに動かされるキャラクターではなく、キャラクターが独自に動き、その場所に背景としてストーリーが現れるように感じました。
キャラクターがそれだけ作り込まれているということです。しかも、癖の強いキャラクターが多いから、必然ストーリーも面白いものになります。キャラクター小説とはこういうものを言うのか、と個人的な結論を出すに至りました。
普通、個性的なキャラクターが多くいる世界では、主人公は無個性であったり、凡庸な人間であったりするものですが、この作品は主人公までもが個性的。いや、実を言うと個人的にはこの作品の中で一番のクワセモノかなと。
「こんな戦い方ありかよ……!」
と驚嘆しました。
いったいどういう訳なのか気になった方は、是非読んでみてください。
きっと私と共感してくださる方もいらっしゃるのでは、と思います。