死がふたりを別つから

作者 嘉川馨

105

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★★★ Excellent!!!

息の詰まるような、そんな閉塞感のあるミッション・スクールを舞台にした、繊細で敏感な少女たちの物語。そこにあるのは、むき出しの神経を風が撫でるような、そんな思春期の痛々しい思い。青春を甘酸っぱいだとか、ほろ苦いというのは勝手だが、当事者にとっては出口のない迷路をさまようような、孤独との戦いの連続だ。どんなにたくさんの人や、教えに囲まれていても孤絶の中にいる少女たち――そんな痛々しくも瑞々しく、そして息苦しい、そんな先の読めない物語が展開されています。読み進めていくたびに新しい発見のある作品です。

★★★ Excellent!!!

 初めてレビューを書きます。拙いとは思いますが、どうぞよろしくお願いします。
 言葉にならないくらい、素晴らしい作品です。思わず製本版も買ってしまいました。

 圧倒的な語彙、先の読めない展開、物語に組み込まれる知識の数々。その全てが素晴らしいです。読み終わった後の脱力感がこれほど心地の良いものだとは思いませんでした。皆様にも是非ご一読いただきたいです。そして一緒に考えてください。

 彼女が何故、死んでしまったのかを。

★★★ Excellent!!!

このお話の閉塞的で圧迫されながらも水を掻くように抗い押しのけながら進む、息苦しさと心地良い冷たさのあるこの空気感は、このお話に含まれる感情の虚ろと重さは、百合という枠組みに囚われず、好きな人は好きな空気だと思います。
事実私がそうなので。
それを綴る文章も、鼻の奥をすんと突く雨の匂いのような、感覚器の奥底を軽くひっかくような心地よい刺激を感じる美しく繊細で緻密なもので、内容としてやや難解で硬めなところはありますが、口に放り込んだ砂糖菓子のように、ほろほろと崩れてほどけて、ざらざらとした余韻を残していく、個人的にはとてもとても好ましい爪痕を残す文章だと思います。

2章の9まで読んだ所感として、きっと、心臓痕硝子という少女は、人の欠けを映す鏡面だと思うのです。
心臓痕硝子という少女は完璧へ至るための一欠けでありながら、完璧を損なう不純物だと思うのです。
生きていた時からそうであり、そしてその実体が喪われたが故に、誰もそれが鏡でしかないと正しく認識することができなくなってしまった。
それを虚ろな鏡像でしかないと指摘しながら、破片である呪いを集めて組み上げたその時に、契約を成し遂げるために、彼女は何をするのか。
それが待ち遠しくも恐ろしいです。

★★★ Excellent!!!

 心臓痕硝子は完成された美少女だった。繊細な作り物のように見るものの目を奪うミステリアスな少女はしかし、一年前に突然亡くなってしまう。学校の屋上から飛び降りたとされる彼女。その亡霊がいつしか学校にオカルティックな儀式と結び付いた。「降霊会」で彼女の霊を呼び出すあそび……彼女の「呪い」が学校を支配していく。

 心臓痕硝子という、強烈な個性を放つ存在が楔のように打たれた物語です。彼女は死んでいるはずなのに、「呪い」によって未だに畏怖され噂となり、生き続けている。硝子を視ることができるいたみとのやり取り、謎を掛け合わせることで深みが増していく関係性、そのどれもが魅惑的な世界観を見事に表現しています。どんな形であれ、心臓痕硝子という存在に心をとらわれていく。そんな人間たちが回していく物語から目が離せません。

★★★ Excellent!!!

息の詰まるような世界観、それを描写する美しい文章。緻密に練り上げられたプロット。繊細で、それでいてほんの少し残酷な少女たちの息遣い。好きな人は凄まじく好きな世界観のはず。ずらりと並んだタグの単語に心惹かれる方には是非読んで欲しい。続きが待ち遠しい。それだけに、なぜこんなに伸びないのか、不思議で仕方ない。