ひねくれの唄はまだまだ続く

第130話 日常エッセイを続ける秘訣


 2019年の初めから書き始めたこのエッセイ。今ではこんなに大勢の人に読んで頂いてとても嬉しいです。僕の痴態を晒し続けて来ただけなのですが、よくこんなに続けれたなー、と自分でも感心します。今日は今迄を振り返りながら、エッセイを書き続ける秘訣をお伝え出来ればと思います。


 まず大前提は表現欲があること。


 何かを見た時、何かを感じた時、その時の光景や感情や思考を伝えたいと思うこと。もし、この欲が無いのなら書くのを諦めた方が良いと思います。これはやる気云々の問題ではなく、自分でもどうしようもない部分です。「書きたい」という欲すら湧かないのならすぱっと割り切る。読み専になるのでも良いし、全く関与しなくてもいい。これが結果として自分を大切にすることになると考えています。



 さて、書きたいと思えるのなら、やるべきことは一つ。

「自然とネタが転がってくるのを待ち」ましょう。


 僕の感覚としてはネタは取りに行くものじゃないんですよね。ゴシップ記者じゃないんだから。探しに行って見つけれるのなら良いですよ。

「おっ、便意とゲーム理論のラブゲームの瞬間をついに捉えたぞ!!」みたいにね。


 でも、噂の裏を取る記者と皆さまは違うでしょう?


 日常エッセイってあるある(日常)の中で目に付いた意外性や自分の思いを表すことが多いですよね。「こんなん見つけた!!」と小学生が変な生き物(例:Askew)の首根っこを押さえて自慢しに行く感覚が近いと思うんです。特に書き溜めの無い連載はですね。

 エッセイを書き始めると周りの動きに敏感になって、自分の思考に良く目が行きます。これはネタを探しているのですが能動的じゃない。「ネタが転がってくる」のを探している、つまり受動的な動作だと思います。

 元々、そこにあるものを探しにいくんじゃない。生活の中で気づいたこと、輪郭を持って浮かび上がってきたこと、それをきっちり捉え直してはっきりと言葉にしてやる。


 これが連載を続ける上で大切なスタンスじゃないのかなぁ。

「探してみせる!!」となるとどうしても見つからない時に焦り、落胆しますから。のんびりで良いんですよ。果報は寝て待ったら、便意とゲーム理論が結びついたことを思い出したりするんですからね。


 アンテナを立てながら、のんびりやる。


 ネタなんて見つからないのが普通。本を読んだり、散歩をしたり、トイレで謎の神に苦しみを和らげるよう祈ったりして、はっと気付く瞬間を待ちましょう。



 そしてもう一つ。

「まだ書きたいと思った時に止める」こと。


 これは最近読んだ子供向けの哲学入門書に出てきて「なるほどなぁ」と感心しました。

 キリの良い所というのは満足感があるんです。ここまでは出来たぞっていう満足感が。すると次に腰を上げるのが大変になる。だからあえて「もう少しやりたいのに!!」という場所で止めておく、するとすぐ動きたくなる。創作論でもよく話題になるクリフハンガー(盛り上がった所で引く技法)を自分にかける訳ですね。

 エッセイで言えば、言いたいことが一斉に浮かんできたら一つの記事でごっちゃにしない。ちゃんと何を伝えたいのかを整理して、短くてもいいから一つずつ処理していくこと。「あれもこれも言いたいけど、今日はこれだけ!!」って状態にしておくんですね。すると、自然と読みやすくなりますし、書きたい欲が続きます。


 ここで忘れてはいけないのはメモをすること。

 ふと思いついたことなんて、「クリスマスの予定をバイト仲間に聞かれ、暇だけど『予定がある』と言い張る僕」くらい逃げ足が速いですからね。メモを取らなければ次の日にはアイデアは零れ落ち「あぁぁぁぁ!! なにか思いついたのに思い出せない!! あおぉん!!」って悶え苦しむことになりますから。


 良いですかー、秘訣は二つ。

 1.「無くてもそれでええんやでー」精神 (アンテナを高くして、のんびり待つ)

 2.「あとちょっとだけ……。あかん?」精神 (メモは取れ)


 これらを僕は大切にしています。


 少しでも皆さんのお役に立てれば、悶えたかいもあったというものです。


 


 さて、僕も皆さんに分かるようにこれらの効用をお見せしたいと思います。実践しない語り手ほど信用出来ないものはないですからね。せっかくの発見を能書きにする訳には行きません。自分を宙吊りにしてみます。


 ――ということで、このエッセイはこの回で完結です。





 ……へへへ。


 このオチを付けたいがために思いついた考えを、さも偉そうに講釈垂れてみました。ご理解の通りまだまだ「書きたい欲」は存分にあります。つまり、これはケリをつけるための完結でも、一休みのための完結でもありません。

 

 ――エッセイを書き続けるための完結なのです。


 これまで実質133話、17万字に及ぶエッセイを読んで頂きありがとうございました。頂いた温かいコメントや思わず吹き出す反応に支えられております。読んで頂いた方、コメント頂いた方、何度も応援して頂いた方のおかげでここまで書けたことは間違いありません。付随的な三つ目の要素ですね。これはコントロール出来ないので、あればラッキーくらいで考えましょう。でも、人にあげることは出来るので実践して見てもいいかもしれません。


 次のエッセイたちの構想はぼんやりとあるので、また生暖かい目で見守って頂ければ嬉しいです。


 それでは、また。

 

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とりとめのない思いの随に Askew(あすきゅー) @Askew

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