第15話 出発
並木道を少女が歩いている。
ヘッドセットを付け、スマートウォッチを腕にはめている様子は、いかにも今どきの少女だったが、異国風の雰囲気と、一見、少年のように見える顔立ちが、少女を特徴立たせていた。
「私ノオクッタ、ヘッドセットト、スマートウオッチ、結構、ニアッテルナ」
ヘッドセットから聞こえた合成音が言った。
「見えてるの? 隠しカメラでもつけた?」
独り言をしゃべっているかのように、少女が答えた。
「ソンナコトハシテイナイ。君ノ写真ニ、合成シテ確カメタダケダ」
「何それ、キモい。あなた、中年のおじさんでしょ? 私達、もう仲間なんだから、正体教えてよ」
「私ノ正体ハ秘密ダ。親シキ中ニモ秘密アリ。結婚ト同ジダ」
「やっぱり、おじさんじゃないの」
少女が明るく答えた。
「サラハ、最初ニ会ッタコロヨリ、明ルクナッタナ」
「友達が笑い方を教えてくれたからね」
「ソレハヨカッタ」
「うん」
少女は幸せそうだ。
自分は、今まで、ただ生き延びるために生きてきた。選択肢なんか無かった。
でも、今は選択肢がある。どう生きるか、何をするか、自分で決める。
家族がつないでくれた命。
生き延びるために犯した罪。
自ら望んで手にしたわけではない力。
友達が教えてくれた大切な心。
きっと、運命なんかないのだろう。それでも、いまある自分にできることをやろう。
「世間話ハコレグライニシヨウ」
「わかった。今度は何の事件?」
「コレカラ説明スル」
これが私の道だ。
沙羅は、自分が選んだ道を歩いていく。
- 終 -
サバイバー 明弓ヒロ(AKARI hiro) @hiro1969
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