登校中の子猫
藤杜錬
登校中の子猫
「にゃあ」
朝の登校途中、いつもの歩く道で私は可愛い鳴き声を聞いた。
声のした方を見た私の視界に、小さな段ボールにちょこんと座る三毛の子猫の姿が飛び込んできた。
「君……昨日は居なかったよね……?」
私はこの子の前にしゃがむと子猫に向かって話しかけた。
「にゃあ……」
私は何故か子猫にねだられている気がして、その子の頭を撫でてあげる。
子猫は私の手が伸びると、嬉しそうに喉をぐるぐると鳴らす。
私はポケットからスマートフォンを取り出すと時間を確認する。
「あ……ごめん。私もう行かないと……」
後ろ髪を引かれる思いで私は立ち上がると、子猫に背を向けて歩き出した。
私の背後からは、寂しげになく子猫の声が私には行かないでと言っているように感じられた。
しばらく私は学校に向けて歩いていたが、先ほどの子猫のことが頭から離れずにもやもやしていた。
「ああっ、もうだめだ」
私はそう叫ぶと来た道を走って戻る。
そして子猫の所まで戻ってくるとスマートフォンで子猫の写真を撮ると家にいる母親の元へと写真とメールを送った。
『登校中に子猫を見つけたの。このままじゃどうなるか判らないから、取りあえず家に連れて帰っても良いですか?』
私は送信ボタンを押すと、子猫のことを安心させようと、子猫のことを撫でてあげる。
子猫の体を私の手が動く度、子猫の喉からは嬉しそうにぐるぐると音が響いた。
しばらくして私のスマートフォンから着信音が鳴った、それは母親からのメールが届いた音だった。
そして恐る恐る開いたメールにはたった一言『良いよ』とだけ書かれていたのだった。
私はそのメールを見た瞬間、子猫のことを段ボールから抱きかかえると、急いで家の方向に向かって走り出したのだった。
了
登校中の子猫 藤杜錬 @fujimoriren
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