最終話「デウス・EXIT・マキナ」
いつからかデウスは、歳を重ねることさえ楽しむようになっていた。マキナとは
「マキナ、ここは……ふむ。僕もこの地域には始めて来るね」
人類がまるごと残した偉業の産物も、世界各地で風化が始まっていた。
そんな中、不意にマキナがデウスを連れ出したのだ。ここは確か、一世紀ほど前は工業地帯だったような気がする。
狩猟と農耕で己を養えなくなって、人類が始めた生産と経済……その中枢だ。
神であるデウスがそうであるように、太陽も天候も
よかれと思って打ち込む力は、人間にしかない
「まあ、だから……マキナと出会えたんだけどね。人間に感謝だ」
「デウス? なにか」
「いや、いいんだ。それより……なんの倉庫だい?」
整然と並ぶ倉庫街の中で、マキナは老人になったデウスの手を引く。
彼女はいつもデウスの歩調に合わせてくれたし、看護も介護も優しかった。
全く経年を感じさせない美しさは、以前と全く変わらない。
だが、長い時間をかけての小さな変化を、デウスは残さず覚えている。
思い出せなくなっても、決して忘れない。
「つきました。デウス、大事なお話があります」
自慢の怪力で、マキナがとある倉庫の扉を開く。
そして、デウスは絶句した。
「こ、これは……マキナ、どうしたんだい。これを僕に見せて、なにを」
そこには、マキナがいた。
沢山のマキナが、パッケージングされて並んでいたのである。
「
嫌だと本能的に思った。
だが、いつもと変わらぬ端正な真顔は、いつも以上に真剣だった。
「実は、私の
「そ、そんな……馬鹿な。だって、君は、ロボット……」
「人間の作ったものは、人間より早く壊れます。そうでなければ、新製品……例えば、私の後期型などが売れませんから」
なんという皮肉だと、デウスは目の前が真っ暗になった。
マキナに
現実は真逆、マキナの方が先に世界から去ってしまうというのだ。
「デウス、データを保存状態のよい個体に移して、使ってください」
「嫌だ! 使って、なんて言わないで」
「データの引き継ぎがなされれば、それが次の……私、です、から」
「……マキナ?」
始めてマキナは言い
そして、しばし黙考のあとに口を開く。
「私としては、不本意です。そのことだけ……覚えていて、くだされば」
「君がロボットなのか、それとも僕の彼女……恋人なのか。それは二人で決めることだよ。僕は、僕のために終われない君、機械だから終わらない君は、とても悲しい」
「言葉が、見つかりません。ですが、私という躯体自身への執着を感じます。……私の、今この私以外の躯体を……
デウスは黙って、マキナを抱き締めた。
彼女以外に、抱き返してほしくなかった。
「デウス、お願いがあります」
「いいよ、マキナ。そうしよう」
「まだ希望を述べていませんが。希望を……そう、希望を、持ちました」
「うん、だからいいよ……僕は
「では、お願いします。私のわがままで、一人になってしまう彼の……
涙が止まらなかった。
そして、マキナの希望を聞いてもデウスは
今、神は座に戻りて創世が始まる。
神自身の話が神話ならば、それは……地球に何度目かに生まれた人類の、繰り返す
デウス×マキナ ながやん @nagamono
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