エピローグ
「くふふ…ふふ」
「何笑ってんのよ?」
店を出てから、最寄の駅に降りても私はまだ笑っていた。
「別に~、だって祥子さんがいつまでも一緒にって言われたからじゃないですよ」
「あのね、あれはあくまで詩、しかもいつまでも一緒にじゃない!いつかまたここででしょうが!」
「はいはいそうですね、いつかまたここで、でしたね」
「ったく、だいたい詩って言うのは気持ちを百%込めるもんじゃなくて、比喩とか色々言いまわして新しい言葉をって聞いてないし」
「いいえ?聞いてますよ…そうだ、お家に帰ったら何か作りますね、確かこの間の買い物の残りがまだあったはずだから」
「…うーん、それじゃオムレツ、椎茸は無しね」
「え~、それじゃ椎茸が腐っちゃいますよ、せっかく買ってきたのに」
「やっぱり買ってきたのね、どうりで何か泥の塊みたいなのが見えたのよ」
「いい加減、好き嫌いはやめませんか?」
「やだ、っていうか美咲が食べればいいじゃない」
「え~、わざわざ椎茸無しと有りで作り分けるんですか?面倒くさいんですけど」
「それじゃ椎茸、買ってこなければいいじゃない」
「駄目です、食べれるようになりなさい」
「あんたはお母さんか!」
「はいはい、見たいなものでしょう?本当に手が掛かるんだから、でもそれが嬉しいんでしょう?怒られる喜びでしたっけ」
「む~、もう、あんたをイベントには呼ばないわ」
「いいですよ~だ。イベントの予定は行雄さんに教えてもらいますから」
そういってポケットからメモを取り出してヒラヒラと見せる。
「…行雄って誰よ、ああー!もしかして」
「帰るときにこっそり連絡先渡されちゃって」
「あのナンパ男!油断も空きも無い!」
「それじゃどうしますか?祥子さんが教えてくれないなら行雄さんに連絡して教えてもらおうかな~」
「わかったわよ、だからそれはポイしなさい」
あっさりと降参して私の手から連絡先の書いたメモを奪い取ろうとするけれど、それを私は避ける。
「はいはい、考えておきますよ」
私はそのまま走り出した。 遅れて祥子さんも私を追いかける。
「ちょっと聞いてんの!美咲!」
時刻はまだギリギリ土曜日。 空にはポッカリとお月様に僅かな雲。
私達は走り出す。 いつものあの場所。 二人が住むマンションへ。
祥子さん、私も同じですよ。 私も探していた久しく遠い存在。
だから傷ついても喧嘩しても一緒にいましょうね。
そして何度でも出会いましょう。 たとえ一時離れても いつかまたここ、この場所で。
久遠の貴方といつまでも。
久遠の「あなた」 中田祐三 @syousetugaki123456
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