すべるバー

 俺は滑り込む。

俺には身体を液状化させる能力があって、その腕を買われてスパイをやってる。

なんでも滑り込めるぜ、鍵穴だって小さな溝、お前の身体の中だってな。

某ポッシブル的な派手な事はしていない、ただ地味に書類盗んだり、お偉いさんの身体の中入って俺より凄いスパイの手助けしたりするくらい。

月給はそんなに高くない、50万くらい。

おかしくないか?何故液状化出来る俺がそんな安月給で働かせてるんだ?

よく言うじゃないか、異能力バトルって。あんな感じだ、あんな感じ。

身体を透明化出来る能力を持ってる奴等とか、千里眼持ってる奴とか、俺よりめっちゃ凄い能力持ってる奴等腐るほどいる。

身体を液状化するといっても、実態はある訳だし、俺はそんな凄い能力じゃない。

異能力のある人間が何故いるのかなんて話は誰も興味無いだろうから話さないぜ。

え?なんでだって?だって作者が書いた事ないし、そもそもこの小説シリーズの雰囲気じゃな(割愛)


 そんなこんなで適当に仕事をして、適当に給料もらって生きてる日陰仕事な俺なんだが、つい先日異常な程重要な仕事が舞い込んできた。

俺の知らない中東辺りの国の独裁国家が、危険なロケットを作っているらしい。

久しぶりの出張という事で張り切って黒のモッズスーツなんて着て来ちゃったぜ。

え?なんでモッズスーツなんだって?それは作者の好(割愛)

という訳で中東に着いた。

う~んローブ姿の人がいっぱい、やっぱり中東、俺は何を言ってるんだ。

多分ロケットとか作ってないだろうというレベルで周りの人の顔は凄いのほほんとしてるし、本当に作ってるのか?これ。

そんな時、一台のトラックが現れた。

いかにも独裁者の部下みたいな奴が、いかにも独裁者の手下みたいな奴を従えて、庶民の奴等をボコボコにしてる。

うわぁ~マッドマックス、凄くマッドなマックス。

そんな残酷SHOWをほほえましく見てると、その部下が俺に言ってきた。

「おいそこのお前!見世物じゃねぇぞ!散れ!」

「はいはい分かりましたよ」

北斗の拳に出てくる雑魚幹部キャラのような言葉を吐かれて、俺はすぐさま歩き出した。

あいつの中に滑り込んで侵入してやろうかと思ったがやめた、代わりにトラックのタイヤに滑り込んでみた。

死、いや、死。

異常な程視界がぐるぐる回されていく、吐き気がやばい。

ちくしょ~ミキサー状態だラチがあかねぇ、なんとか上の方の隙間に滑り込めないかと試みる。

その瞬間に目的地に着いたのか、トラックが停止した。

「ぶべらっ!」

情けない声と共に俺はトラックから落ちた。

液状化してる俺と、俺を見て呆然としてる兵士達。

「は、は~い?ヘッロ~オ~ゥ?」

叫び声を上げながら銃の引き金を引く兵士達。

慌てふためきながら逃げる俺。

意味不明な言語を喋りながらラクダに跨る中東の人。

鉄の塊に跨るベンジー。

空は青い。


 とまあなんやかんや滑り込んでなんとか本拠地に辿り着いた私です、お母さん俺生きてるよ。

となぜか目の前にあるミサイル、そして明らかにボスのような体格が良くて人相の悪い男が明らかに危なそうなボタンを押そうとしてる。

これは危ない!!なんとか止めなければ!!!そう思い僕は全速力で液状化した身体を走らせた。

後もうちょっとで届くはず、、、あと、、、もうちょい!!!

だが現実は非情で、ボタンは押された。

飛び出ていくミサイル、核の炎に包まれる地球、YOUはショック、北斗晶。


人類は滅んだ。

核ミサイルにより、支離滅裂な生物が生まれた。

そう、そしてこれがキューブリック監督作品、2001年宇宙の旅の冒頭に起こる、猿達のシーンの真相だったのである。


THE END

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オムニバス短篇集 透明少年 @kozikozideath

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