最終話 君と俺の恋物語はエンドレス。

「知ってる、ゴンちゃん?」

「あ?」


 不機嫌なゴンちゃん。制服はあの日以来、また女子仕様に戻ったけど、ショートカットはそのまま。前髪をハートモチーフのヘアピンで留めておでこを出すという、禁じ手キュート炸裂中なんだけど、眉間に深いしわがよってるんだ。


 俺たちは、いま、教室で二人きり。

 愛を深めるには、ちょうどいい。


「深めねぇから。いい加減にしろよ。お前のせいで居残りさせられてんだろ」


 そう、俺たちは仲良く放課後に居残り中。

 ちょっとだけテストの点数が悪かったんだよね。


「悪かったんだよね、っていうか、全部お前のせいだからな。お前がうるさいから、俺の日常が狂って成績が落ちたんだろうがよ」


 そ、そんなに愛してくれなくてもいいよ。

 どうやらゴンちゃん。俺のことばかり考えていたせいで、成績が落ちて、


「バカなの。いや、もうバカなのは知ってるけど。もう……、どうでもいいから、さっさとプリントやって帰るぞ」


 ゴンちゃん……

 一緒に帰ってくれるんだね♡


「ち、ちがっ! お、お前がいつもついて来るから……っていうか、都合がいいんだよ。ほ、ほらっ。俺、モテるからな。変な男とか付きまとってくるし。お前がボディガードしてくれると便利だっていう、単純に、それだけだ。深い意味はない」


 うんうん。守るよ、ゴンちゃん。

 あ、そうだ。知ってる?


「あ? なんだよ。しゃべってねーで手を動かせっての」


 うん、そうなんだけど。

 俺たち、皆になんて呼ばれてるか、知ってる?


「は? 知るかよ。美しすぎる王子と底辺ゴリラじゃねーの」


 いや、姫とゴリラだよね。

 って、そうじゃなくて。


「違うのかよ。だったら、なんだよ。早く言えって」


 あのね。俺って、ゴリって呼ばれてるじゃん。


「で、なんだよ」


 それで、ゴンちゃんはゴンちゃんじゃん。


「それ、お前しか言ってねーけどな」


 ポッ。


「おい、顔を赤らめるな。キモいだろうがっ。自分だけの特別な呼び名だね的なこと思ったんなら、違うからな!」


 違わないでしょぉ。もうぅ、照れ屋さんなんだから。


「がーっ、うるさいっての。それより、話の続きしろよな」


 うんうん。

 あのね。俺たち、ゴリ&ゴンちゃんで「ゴリゴン」って呼ばれてるんだって。


「は? ゴリゴン??」


 うふっ。


「うふっ、じゃねーわ。なんだよ、その怪獣みてぇなネーミングは」


 気に入らないの?


「いらないっ。ゴリゴンとかくそだな」


 ゴンちゃん、どうやら問題を解き終えたようで、さっさと筆記用具を片付づけ始めちゃった。待って、待って。俺はまだ、ここが解らないんだよ。


「はぁ、そんなサービス問題を……」


 ゴンちゃん、ちょいちょいちょいと俺のシャーペンを使って、丁寧に解説してくれた。ほほう、ありがと、ゴンちゃん!


「いいってことよ。……て、俺はなにをやってるんだ!」


 ガーンとショックを受けているゴンちゃん。

 どうしたのかな。ほら、俺も終わったから、帰れるよ。


「洋服でも見に行く? 夏服、欲しいんだよね」


 ぷいっとそっぽを向く、ゴンちゃん。

 でも、聞こえたよ。


 つよたん、選んでくれる?


 ……って。


「いやっ、脳内変換しすぎだわっ、ゴリラ!」

「またまたぁ」


 ほっぺをツンツン。

 ゴンちゃん、大好きだよ。


「やめろっ。俺は女子が好きだっ!」

「はいはい」


 可愛いものが好きなんだよね。

 そうだな。明日から俺も女装、しちゃおうかな♡



END……?

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暴走男子は女装男子に恋をする。 竹神チエ @chokorabonbon

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