Paradice Fair 下
「ねえ、アリス、魔法の
庭のハーブ園でパセリとマジョラムを摘みながら白髪紫眼の少女が聞く。
「そう言って売られている
立ちながら、ローズマリーと
「違う違う、そんな野蛮な物じゃないよ、私達薬師の探している万能薬。切断された肢とかをイモリのように生やして治す4つの
極東洋の島国がかつて遥か昔に開発したというその薬は今はもう見つからない。
「なら、
さらりと言ってのけたアリスベルテにアイリスは驚いて目を丸くした。
「らくえん…?……あの伝説の……?」
「伝説って…。アイリス君も亜人だろう?なのに知らないの?…兄さんは何も言わなかったの…?
淀みなく続けて言う人狼の少女にアイリスは眉を顰めた。適当なこと言っていないだろうか、この人は。
「本当だよ。」
疑いの眼差しに気が付いたのかアリスベルテは微笑んで続ける。
「…本当だと9割以上確信してる。実際に見に行ったことはないから絶対にあるなんて言えないけれど。」
その予防線を張るかのような言葉に脱力しそうになりながら、少女は嘆息した。
「なんでそんなにまで言えるの?確証は?」
「
質問に質問で返された。そのことに少し頬を膨らませつつも少女は首を横に振る。聞いた事はある気がする。何時の事だかは知らない。イズリアルに出会うそれより前かもしれないが。
「かつて原初の人類二人が、
話半分に聞きながら、アイリスは手を動かしていく、割と広い庭だから摘み取り終わるのに時間はかかる。
五千年以上昔、この世界に
そんな話をしたところで言葉を切り、人狼少女は空を仰いだ。
「その罪がどうしたの…?」
「ううん、今から言うのは原罪についての伝説じゃない。その
問うてくる吸血鬼に“今話したのは、この伝説の大前提のことだよ”と彼女は言葉を続けた。
磔にされる為の十字架を背負って
その言葉のせいで罵った人間の方は、
大体要約するとこんな感じだ。
ふぅ、と吐息をついて
「……全然長くなんなかったけどこんなもんかな。…でさっきの話――何でこんな事話したかっていうと、その罵ったっていう奴、僕が知ってる人だから。
“まさしく楽園の名に相応しかったよ”そう彼女は続けた。
「どんな写真だったの?」
「見たい?」
アイリスが頷くと彼女は口の中だけで何事かを呟き手を振った。
すると宙に一枚の映像が浮かんだ、魔法と言われる
「これ…が。」
林立する数多の灰色の
「凄い……」
触ろうとしたら、一気に色素が薄れ、映像は霧散した。
「過去には魔法とは違う方法でこういう風に色付きの映像をこんな力よりも長い間、残す技術もあったみたいだしね。」
「アリスは
黒紫髪の少女は頷いた。
「そうだよ、ずっと。」
「それって…どういう…?」
彼女の来た方向とは、伝説に謳われる
「
もしも楽園がこの
自分が言った、その
だから少女は首を縦に振った。
「ええ、いいわよ。」
自分の口から出た言の葉をけれど少女は高揚する気分のどこか遠くで聞いていた。
―――
◆◇◆
あとがき→ https://kakuyomu.jp/users/aliceberte/news/1177354054889165933
楽園市場─ParadiseFair ─ 蒼弐彩 @aliceberte
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