第2話「雑誌編集者の男」
〇〇社長。何者かに殺害。その裏には社員に対する不当な扱い?
社長の影に潜む黒い噂とは。
「なんですか。これは。」
「次の雑誌の一面に飾る言葉。お前も知っているだろ。あの社長さんが殺されたって話は。」
「あー。ニュースでも持ち切りですから。」
手渡された資料の山にはあのいじめっ子に関するものが殆どのようだ。目の下にクマを作った熊部長は僕にどうやらあのいじめっ子の記事を書けと言っているらしい。
もう僕、あのいじめっ子とは関わり合いたくないんだけどなぁ。
「噂じゃあの社長。相当恨みを買ってたみたいだぜ。警察も殺人の動機がありそうな人物から話を聞きまわっているらしい。」
「そうなんですね。」
「まぁ。当たり前っちゃ当たり前な捜査だよね。案外身近な者が犯人とか鉄板だよな。」
僕なんだけどなぁ。
さて、どうしたものかと頭の回路を巡らせる。しかし、僕がどんなに回路を回したところで出てくるのはラジオから出てくる音を選ぶぐらいしかできない。どれもこれも聞き慣れた音ばかり。まぁ生まれてからずっとついてきた音だから聞き慣れるのも当たり前かと背筋を伸ばす。
今週の聞いてみました話題の人!今話題の街のヒーロー、え…
「あ、もうこんな時間か。」
夜に流れてくるラジオ番組にチャンネルに無意識に切り替えていたらしい。
そろそろ帰ろうかと重い腰を上げる。荷物を片付けエレベーターへ向かう途中、喫煙室に熊部長はタバコを吸っていたのを目にする。
「今日もお疲れ様です。」
「おう。お前もな。」
扉越しに声を掛けつつ僕は軽く会釈をしてその場を離れる。
そして、エレベーターに乗るためボタンを押した時だった。
「さっき話してた事件だが、被害者の会社で働いていた社員の中に犯人がいる可能性が高いようだぜ」
「…………。」
思わずボタン強く押しそうになったがなんとか行動に出ずに終わった。そんなはずないだろ。だっていじめっ子を制裁したのは僕なんだぞ。
なんて言えるわけもなく僕はゆっくりと振り向いた。喫煙室から顔を出してる部長。またいつものコネというやつだろうか。
部長は何かと怖いバックと繋がっているという話が耐えない。本人はさぁなと誤魔化しているが。
しかし、部長はいじめっ子ではない。だから僕はどんなに部長のバッグに怖い人物がいるとしても手を出すつもりはない。今は。
「そういえば、お前知ってるか?」
「何をですか。」
「あの社長さんを殺した奴の名前。」
「知りませんよ。というか警察もいまそれを捜査してて、」
「確か、名前は」
「聞いてます?」
「皐月刃。」
じっと視線が注がれる。
涼しい顔をしているつもり。何も動揺していないつもり。だが、部長にはどう映っているのだろうか。
僕はせり上がる気持ちを抑え、部長に向かって話し続ける。
「なんのことでしょうか。僕はただの編集者ですよ。」
「知ってるよ。」
「冗談も程々にしてくださいよ。」
「わりぃな。」
詫びとでもいうのか、暖かいココアを投げつけてきた。気をつけて帰れよと言葉を聞くと同時に僕はエレベーターの中に乗り込んだ。
何事もなかったかのように僕は会社を出る。
会社を出たと同時にスマホにメールが届く着信が鳴った。先程別れた部長からだった。
随分と警察も犯人探しに躍起になっているようだからインタビューするとき気をつけろよと書かれたメールに僕はそっとスマホをしまった。
あの部長は何を知っているのか、いや、どこまで知っているのか。なんて僕は知らない。関係ない。僕にとって重要なのは、いじめっ子を
「成敗するだけだよ。」
バッグを抱え直して僕は今日もいじめっ子の元へと向かった。
少女Sと殺人鬼S 叶望 @kanon52514
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