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記憶にある最後の景色の続きを、今でも僕は夢に見ている。眠り、目醒めるたびに繰り返される反芻は、画板に無闇と鮮やかな色を塗りつける。
「でも、わたしはあたまの中にある風景を探しに来たわけじゃないんです。窓はあくまで窓であって、壁に掛けられた額縁じゃないの」
だけどあなたは違ったみたい。そう言って少女は小さく笑う。
あなたが見ようと欲していたのは、額縁の中のわたしだった。絵に閉じ込められ、固定されて、朽ち果てることもない肖像。実のところあなたは、わたしそのものには、毛ほどの興味も持たなかったんだわ。
嵌め殺しになったガラス窓のむこうに、僕らは全く違ったものを見ていた。願望と偏見が作り出した、僕にだけ微笑んでくれる人形と、御しやすく頭の軽い忠実なしもべ。
お互いを知ることのないままに伝えられた情報は、しかし立派に役目を果たした。決別のまぎわ、未明の川べりで、僕らは初めてわかり合うことができたんじゃないかと、今でもときどきそう思っている。
閉じ窓 空舟千帆 @hogehoho
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