05

やぁ皆さんこんにちは。

今日も元気な花さんです。

竜がずっとウザイけど、ちょっとずつ自由が見えてきました!

って言うのも新しく覚えたスキルのおかげです。




【根操作】と【増殖】を使うことで少しずつ私の把握出来る地域が増えました。

【根操作】で少しずつ根を張り巡らせ、この森の地域の把握領域を広め、等間隔で【増殖】を使い花を咲かせ探知でくまなく周りを把握して物理的に探知領域を増やしていく。

こうして分かったことは、この森は凄く広くて魔物も多いということだ。うっそうと天に伸びて生える木々は時折太陽の光を遮断して昼でも暗い場所もあるし、洞窟はもちろん、川や湖もあった。



そうだ、第二の餌場をつくればいいのでは・・・?



増殖で増やした花は意識すればすぐ感覚を共有できるし・・・まぁなんせ私と根でつながってるから本体みたいなもんだし・・・。

だから新しい餌場をつくってそこを管理していれば動かずとも狩りはできそう!

池に引きずり込むっていうのは割といい線いってるから、池をつくりたいわね。

水源をうまい事利用すればいいけど、できればこの水を使いたい・・・



・・・植物だし、根や蔓で水を吸って運べないかしら・・・?


そう思っていると根っこがズズズズと水を少しずつ吸ってる感覚があった。

いつもの魔力を食べてる時とはちょっとちがう。

つまりこれで水を運べそうだ。

あとは、新しい狩場をかんがえよう。


私は根っこをどんどん伸ばし、色んな所に花を咲かせて場所を模索する。すると川の上流に滝があり、その付近の岩場に洞穴があるのが分かった。岩場は滝の近くだからか濡れていて、洞穴の奥からもちょろちょろと水が流れてきていた。

洞穴の奥まで根っこを進めて花を咲かせてみれば、そこまで深い穴ではなく、最奥には小さな泉があった。

透明度の高いきれいな水がポタポタと湧き出てあふれている。

私が溜めてる水をもってきて新しい池をつくると竜に怪しまれるし、この泉を利用するのもありだな・・・。



新しい我が家になりそうな洞穴を割とまじめに吟味して、ちょっと気になることといえば湧き水の為あふれてしまい今もこうしてちょろちょろと外に漏れ出ていることくらいだ。

まぁ、どうせ魔物を引きずり込んだときに体を構築していた魔素が溶け込んで魔水になったわけだし・・・魔石はお残しせずに全部食べるからね、ソレは問題ないね。



あとは・・・特に問題なくね?



あまり深くない洞穴はほぼ一本道で、魔物をおびき寄せて入り口を蔓や根で塞いでしまえば逃げ道をなくせる。

ダメなところといえばお日様が拝めないことと、魔物をおびき寄せるのが少し骨がおれそうだということくらいだ。

まぁそれは、外に花を咲かせておいて誘惑すればいいわけで。

お日様は・・・よくよく考えれば本体が外にいるんだから問題ないな。



・・・できればココに引っ越したいなぁ・・・。





いい加減竜がうざい私は相手が動かないなら自分が動いて居なくなりたいという考えがあった。

問題があるとしたら、私自身が移動できないということだけだが・・・。



・・・。



そもそも、




この間熊さんと戦ったとき、植物だからだとおもっていたが、痛覚がまるでなかった。

それは竜が刈り取ってみせた増殖で増やした他の花もそうだった。



痛くなかったのだ。



つまり、もしかするとあの池のそばに一輪咲いているコバルトブルーの花は本体ではないのではないだろうか?


そんじゃ本体はどれだ。


私は改めて自分自身に向き合った。

それは青い花ではなく、花の下の根っこの部分。

改めてソレをよく感じてみる。


花の下のたくさんの根が交差し編み込まれている奥深くに白に近い薄い水色の球根のようなものがあった。

そしてその中に私自身の青い魔石があることがわかった。


その魔石をみて改めてわかった。

私にもし本体があるとしたらそれはこの核である魔石で、根も花も葉も蔓もすべての集合体が個であるのだ。



そして自分の魔石というものを感じて初めて自分自身の情報がみえた。



────────────────

◆種族:アルルーン【植物族】

◆名前:なし

◆レベル:MAX

◆状態:異常なし(魔力過多)

【体力】C+

【魔力】C(B+)


◆進化不可【魔力不足】【条件未開放】

────────────────

◆使用中スキル

【魔力探知】

【感覚探知】

【斬撃耐性】

【念話】


◆使用可能スキル

【麻痺の粉】

【毒の粉】

【誘惑の粉】

【眠り粉】


◆特技

【蔓攻撃】

【麻痺の蔓】

【毒の蔓】

【根操作】

【増殖】

─────────────────


私、アルルーンっていう魔物だったのか、ずいぶん可愛らしい名前だな。

そして竜が【竜眼】でみていたのは恐らくこの情報だったんだろう。そもそもどこまで丸見えなのかもわからないから怖い・・・。


さて、動物のように移動することはできないけど植物としての移動はできる。今の状態のことだ。

そして思ったのはこの私の核でもある魔石を移動することができればこの竜から開放されるのではないかということだ。

【竜眼】があるからソレを使われれば万が一移動できたとしても直ぐにバレてしまうだろう。

バレるのは時間の問題だけど、竜が魔石をとりに出かけた瞬間が勝負だ。

あとは魔石を動かせるかどうかだけど・・・

そう思って魔石に意識を集中してみると、ぴくんと動くのがわかった。


おっと今じゃない。


よし、それじゃあとは新しい狩場・・・もとい我が家を整えようではないか!

私がるんるん気分でいると、ふいに上から声がかかった。


『おい、全然魔力が溜まっていないな。一体何をしている?隠れてコソコソなにかするのではなく、まずは進化するために魔力を貯めろ。』

『あ、はい。』


ばれてーら。



それでも私は少しずつ新しい我が家を整えた。

まずは洞穴全体に自分の根を張り巡らせ、洞穴を中心に花を咲かせ、入り口にも花を咲かせた。泉の中には蔓を仕込み、洞穴の天井にもスルスルと蔓を仕込んでおく。


そして泉の麓には新たな私自身で核である魔石を守るための器をゆっくる育てる。

竜にばれないように時間をかけてゆっくりと花を育て、1ヶ月ほどかかってようやく大きな美しい青い花をさかせた。


さぁ、あとは移動するだけだ!


『そろそろ時間だな、魔石をとってくるからいい子にして待ってるんだぞ。』


わくわくして待っているとき、ちょうど竜が起きて私に声をかけてきた。


『気をつけていってらっしゃい。』

『っ・・・あ、あぁ、いってくる。』


なにか驚いたようにぴくっと体を一瞬ふるわせたが、いつもどおりの偉そうな態度に戻ると竜は翼をはばたかせ大空に飛び立っていった。


おーいったいった。


当分帰ってこなくていいというかもう帰ってこなければいいと思うけど、慣れたもんで帰ってくるんだろうなっていうのがなんとなくわかる。


まぁそれはいいや、移動しよう。


竜のことをすぐに考えの隅に追いやればさっさと魔石の移動を開始する。

移動するということを考えてからか、魔石を守るように周りを固めていた根はうっすら解け、球根の肉少しずつおちていき、今では皮だけの状態になっている。


魔石はゆっくりと根の中にうまっていき、全て入ると思ったより早く根の中を移動した。

体をむず痒く気持ち悪い何かが駆け巡る。

うっすら寒気のするその感覚は魔石が移動を終えるまでおわらなかった。



新しく作った器の下にある根のゆりかご。そこには最初と同じように球根のようなものができていて、魔石は自然とその中に吸い込まれるように入っていった。


トクン・・・


私がここに移動したことがよくわかる。

さてあとは、竜に出来る限り気付かれない様にするだけ。

話しかけられたら答えられるように少しは意識しておかないと。


ざっと早くて2日は気付かれないだろうとそう思っていた。

うん、そう思っていた時期もありました。

竜は魔石を持って帰ってくるや否や、まず不機嫌全開オーラで開口一番、


『どこにいった?』


いつになくひくーい声で凄まれた。

これはもう最初っからばれたので、もう退散するしかない。

私は何も言わずにすーっと意識をそこから外そうとしたとき。


『逃がさない。』


竜からそう言葉が漏れた。

聞かなかったことにしよう。

私は早々に考えることを放棄した。



【竜眼】があるせいでばれることはわかっていた。

ただ、単純な憶測ではあるけど、【竜眼】は魔石を見ているわけで、魔石をもつ本体を直接見ない限り分からないと思う。

まぁ他にも聞いてない能力があったらもう詰んでるんだけど。

だから私は自分の根をいろんなところに張り、そしていろんなところに花を付けた。

私の分身をたくさんつくったのだ。まぁ分身といっても結局は私自身なわけだけど。

そもそも、私に執着しているのか、あの場所に執着しているのかは分からなかったが、念の為とおもって正解だった。まったく、私をそれこそまるまると太らせて食べる気なんじゃなかろうか・・・。

分身を【竜眼】で見ればもちろん探している私ではないことがわかるはず。

でももし私の予想通り、目でとらえたものしか見れないのであれば時間稼ぎにはなるはずだ。


そう思っていろんなところに咲かせた花から探知であたりを探ってみれば、元々いた所から近い場所の上空で白銀の竜がゆっくり飛びながら地面をじっくり見下ろしている姿が見えた。

気配でわかる。めっちゃ怒ってる。

しかし、私も譲れないのだ!


怒れる竜の気配に若干どころか割とビビリながら、誰に言うでもなく私は決意を固めた。

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