他人には知り得ない秘密、心の傷、家庭の事情…人は隠し通して生きている。

 子どもの頃に虐めを受けると、心の中に爆弾を抱える。子供心に爆弾は着火させない。何故なら、爆発してしまうと周囲に飛び散るのを知っている。
 親との確執がありながらも老々介護を強いられる世代。潜在的に社会的責任感を抱く。本当は逃避してしまいたい!と思う日もあるのだが。
 LGBTに象徴される性癖。何でもオープンに発信出来る世の中になった。しかし、黙秘しなければならない。本能的に大和魂はそうさせる。
 家庭内のさまざまな問題、離婚やDV、家庭内別居や不倫…。一瞬、何処かで歯車が狂う。けれど完全修復に努力はせず、未来ばかりを見詰める現代人。
 
 さまざまな現代社会の問題・課題を、主人公の子ども時代から独り身の職人になるまでの人生に重ねて構成する。上記の問題ひとつを取り上げただけでも1話で完結する現代風刺を、寺院や僧侶、伝統の石積み職人などを演示させ、見事に散りばめている。

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